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第20話

今にも鉢植えに頭を突っ込みそうなところで足音が近付いてくるのが聞こえた。 顔を上げれば両手にカップを持った佐伯さんが「お待たせ」と迎えに来てくれた。 「会議室空いてたから借りたんだ。 行こう」 その背中に続く。 壁を彩る促進ポスター。 見本誌のらしき本を抱えて擦れ違った社員。 ここで働く人たちは本をつくるために動いている。 今日は、なんとなく居心地が悪い。 「夏目くん、ごめんね。 約束してたのに待たせちゃったね」 「いえ。 今日は暇ですから」 「あれ? 今日は先生のところじゃ…。 まぁ、あの人も大人だし平気か」 目の前にコーヒーが置かれ、「これも食べて」とクッキーが1袋差し出された。 座るよう促されるが佐伯さんが座るまで立ったままでいると、律儀だねと笑われた。 机の上に置かれたスマホケースを行儀悪く見てしまうと、女性の方との仲睦まじいツーショット。 …佐伯さんも、そういう人いるよな… 編集なんて頭良いだろうしモテそう 「早速だけど、メールでも伝えた通り一冊書いてみてほしくて。 正直、まだどこの賞をとかの話ではないんだけど。 夏目くんはもう一冊書ききれるし、今をみたくて」 「…はい」 「プロットは後からで良いけど、なにか書きたいものはある? あたためてる話とか。 出来れば同人誌にはしてない、未発表が良いんだけど」 「…え、と」 頭を切り替えなきゃ。 これは最大のチャンス。 チャンス、なんだ。 スマホを取り出し、書きかけのもので使えそうなものを探す。 ふんわりしたものでも対話をしていくうちに広がるかもしれない。 なにかないか。 「先生と喧嘩したんだっけ。 まだ仲直りしてない感じそうだね」 「喧嘩なんかじゃ…」 「ふぅん?」 「……そんなの先生に対して烏滸がましいなって思います」 スワイプしていた指を止め、膝の上でぎゅっとスマホを握る。 忘れかけていた腹がまたキリ…っと痛む。 佐伯さんは頬杖をつくと、そうかなぁと溢した。 「あの人が嫌いなものを自分の近くに置くなんてありえないと思うけど」 「それは…」 「別に、夏目くんを励ましてるんじゃないよ。 事実を並べているだけ。 それでも安心出来ないなら、それはしかたがないよ。 そういう性格の人だっているから。 良い、悪いの話じゃないもんね」 「佐伯さんは、優しいです」 言葉の選び方、伝え方。 よく咀嚼してから出されている。 自分のためじゃない。 きっと、俺のための言葉だ。 確かに先生は嫌いなものを近くに置いたりはしない。 でも、ゴミは溜め込む。 だから不安になる。 「俺“は”、ね? 誰と比べてるんだろうね」 「……」 俺はこんな時まで……

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