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第28話
仕事の休憩中も、先生の部屋の掃除が終わった後も書いた。
部屋ならパソコンで。
外なら同期させたアプリを使ってスマホから。
文法が~、なんとか効果が~なんて頭の片隅にもない。
ただ、楽しいから書いた。
書きたいように書いた。
こんなにも睡眠時間が惜しいと思ったのはいつぶりか。
「夏目くん、キャラメルポップコーンだよ」
「ありがとうございます」
先生がお菓子を分けてくれることも増えた。
軽いポップコーンに濃厚なキャラメルが絡んでいて美味しい。
映画館でも塩かバターばかり選んでいたので本当に久しぶりに食べたが、甘さがたまらない。
「このピーナッツも夏目くんのだよ」
「…それ、先生が好きじゃないからですか…?」
「まさか」
……嘘くせぇ
「キャラメリゼされたものは好きだよ」
「……」
パクパクとポップコーンを口にして、また紙コップでコーヒーを飲む。
何十回も見てきたのは、この姿。
仕事中は真面目な人だけど、この姿の先生を見ていると安心する。
それがいい気分転換にもなっていた。
書くことを決めた時に先生にも読んでもらおうと思ったら、さらりと「先に読ませるべきは佐伯くんだよ」と言われてしまった。
そういうところの扱いがかわった。
今まで通り、練習作への添削はある。
けど、佐伯さんへの提出用には一切手を触れない。
それが大人扱いされてるようで少し緊張する。
ある程度纏まったもの。
書きたいシーンだけ。
会話文だけ。
なにも気にせず書き貯めては佐伯さんに送っている。
返信が来るより先にまた書く。
それを繰り返していた。
「さ、俺も書こうかな」
床を蹴って部屋へ戻る背中を見送りながら、「ありがとうございます」と伝えた。
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