30 / 39
第30話
そんな日々を過ごしながらも、今日もかわらず先生の部屋を訪れる。
部屋の掃除をしていると玄関から音が聞こえた。
そちらを覗けば佐伯さんが紙袋を持って、丁度玄関を潜るところだった。
挨拶をすれば穏やかに微笑みながら挨拶が返ってくる。
「あ、夏目くん。
丁度良かった。
メール見てくれた?
この前の良いと思うよ。
らしくなってきた。
摺合せしたいんだけど、時間はあるかな?」
「俺は大丈夫ですけど…」
先生を一瞥するとヒラヒラと手を振った。
一応、先生との契約時間中。
けれど、先生は気にも留めないようだ。
後から松福のクリーム大福を強請られそうだが、時間を金で買えると思えば安いものか。
「先生、夏目くん借りますね」
「夏目くんは物ではないだろう」
「ゴミ捨てとか自分でしてくださいね」
「…出来るが?」
仲の良い2人だ。
時々入り込めない空気感になる。
羨ましい、とも少し違う空気感だ。
これが相棒感ってものなのか?
「出来てないから聞いてるんでしょう。
ね、夏目くん」
「まぁ…」
「夏目くんは佐伯くんの味方なのかい?」
「え…、味方とかじゃないでしょう」
だって実際に散らかってるじゃないか、とまでは口に出来ず。
部屋は汚すがゴミ屋敷ではない。
散らかすゴミと捨てるゴミが先生の中では明確な違いがあるのは分かる。
だから先生の部屋は、生ゴミのにおいや腐ったにおいはしないわけだし。
けど、お菓子のゴミとかをそのまま食べた場所に置きっぱなしは絶対に良くない。
衛生的にも、精神的にも。
「これは差し入れです。
この前言ってたの、少しだけ期日早められますか?
急で申し訳ないですが他に頼みたい仕事があります。
俺は、先生なら出来ると信じてます」
「なら、出来るよ。
佐伯くんの見立ては外れない」
「恩に切ります」
ほら、こういうの。
入り込むとかそういうやつじゃない。
「あっち借りますね」
「駄目と言っても使うのに許可を得るのかい」
「社会人なので」
「先生、なにかあれば呼んでください」
「気にしなくていいよ。
今は自分の時間にして。
ね?」
先生は一度だけ振り向くとまた手のひらをヒラヒラと振った。
ともだちにシェアしよう!

