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第33話
佐伯さんに質問責めをしながらメモを書き込んでいると奥の部屋から声がかかる。
「佐伯くん、お茶」
「冷蔵庫ですよ」
「お茶」
「冷蔵庫」
今度は、キャスターが転がる音がし先生がドアの隙間から顔を出す。
渋い顔をしている。
「くれと言ってるんだよ」
「なんのためのキャスターですか」
「移動するためだろう」
「なら、移動してください」
「あぁ言えばこう言うね」
先生は表情豊かだと思うが佐伯さんの前だともっと分かりやすい。
楽しそうだ。
渋々冷蔵庫前までキャスターで移動すると座ったままお茶を取り出す。
こうして見ると本当に自堕落な生活をしている。
その分、書くことに振りきっているのか。
紙コップにとぷとぷと注ぐと、ごくごくと喉を鳴らして飲む。
なんだかすごく美味しそう。
あっという間に飲みきったのか、更におかわりを注いでいる。
そして、それを持ったままローテーブルの近くまでやって来た。
「夏目くん、楽しいかい?」
「はい。
すごく」
「そうか。
それはなによりだ」
目を伏せるその表情のやわらかさ。
先生のこんな顔、はじめて見た…
…睫毛長いんだな
「先生って、優しいんですね」
「…っぷ」
隣で肩を震わせる佐伯さん。
それを見て先生は小首を傾げた。
「おや、俺はいつもは優しくないのかい?」
「あれ…?
そういう意味じゃなくて…」
勝手に口を衝いた言葉にびっくりした。
先生はいつも優しい。
それは知っていたはずなのに。
なのに、どうしてそんなことを言ってしまったんだろう。
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