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第37話
葱のはみ出るエコバックを揺らして帰宅すると、玄関に革靴が増えていた。
見慣れたそれの持ち主は誰か分かる。
「戻りました」
「あ、夏目くん。
お邪魔してます」
「佐伯さん、こんにちは」
「夏目くん…。
佐伯くんがいじめるんだよ…」
キャスターチェアのヘッドを捕まれ、先生は動けないらしい。
更には、佐伯さんの足がキャスターを踏んでいる。
完全に背後をとられ、パソコン前に貼り付け状態だ。
歩けばいいのに…
「どうしたんですか?」
「三つも直近締め切りの仕事を持ってきたんだよ」
「だから…、申し訳ないと…何度も申し上げてるじゃないですか…。
本当に申し訳ないんです。
けど、コメントと帯コメントと小さなコラムです」
「手を抜けと?」
「……貴方の読書の速さは知っています。
それで帯コメントを持ってきました。
筆も速いです。
だから先生に頼んでるんです…」
これはどちらの味方も出来ない。
どちらにとっても大切な仕事だ。
そこにアマチュアの俺が首を突っ込むのは違う。
プロ同士の衝突なら尚更の問題だ。
「先生、ポークチャップつくるのでそれまで頑張ってください」
「ポークチャップ…?」
頷くと、先生は満更でもなさそうな表情にかわった。
「しかたないなぁ」
ちょっろ……
てか、本当にポークチャップ好きなんだ
晩ご飯まで、まだまだ時間はある。
それまで掃除もしたいし、リサイクル場に電池も持っていきたい。
なるべく時間をかけた方がよさそうなので風呂場の防カビ剤もしてしまうか。
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