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第39話
日付けがかわって少し。
漸く先生は仕事をニつ片付けた。
急ぎのものから優先し、残る一つは明日でもいいと。
本当に筆の早い人だ。
だから佐伯さんも頼りにしているんだ。
俺が編集でも、そう思う。
先生だから任せたいって。
普段とのギャップも相まって、なんだか先生が大人に見える。
「本当に助かりました…っ」
「気にしなくていいよ」
「冷蔵庫にお礼の品を冷やしておきました。
食べてください」
「分かったから早く会社に戻りなさい。
タクシー拾うのも面倒な時間だよ」
深々と頭を下げて佐伯さんは出版社へと戻っていく。
働く男の背中は格好いいが、少しだけ心配だ。
施錠していると背後で冷蔵庫の開く音がする。
椅子に座ったまま中を覗き込む姿は本当に子供のよう。
水まんじゅう。
錦玉羹。
葛きり。
餡蜜。
上生菓子は日持ちが今日までらしい。
お茶と食べさせてあげて、と頼まれた。
丁寧に消費期限の書かれた付箋が貼り付けられている。
付箋は先生用だろう。
「先生、生菓子食べますか?」
「そうだね。
美味しい内にいただこうか」
箱の中には季節を彩る花や生き物を象ったお菓子が綺麗に詰められている。
ひまわり、朝顔、鮎壺、枇杷、花火、青楓。
どれも風流で涼やかだ。
「律儀な子だね」
穏やかに見下ろし、その一つを選んだ。
摘まめる夏。
先生の指先に不思議とよく似合っている。
「夏目くんも食べたらいいよ。
佐伯くんのことだ。
数に入ってるはずだから」
「じゃあ、お言葉に甘えて。
お茶飲みますよね。
おかわり持っていきますね」
「ありがとう」
食べすぎか…?
さっきなんとなく胸の辺りがモヤッとした。
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