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第41話

先生の集中力は衰えない。 6時も明るかったが、空はすっかり朝の色になり、窓の外からは人々の生活の音が聞こえてくる。 今日は遅番だからまだ先生の仕事をみていられる。 もう少しだけ見ていたい。 そんな我が儘を本を読みたいです、と隠した。 部屋の隅で本を読むふりをしてその背中を見る。 画面を見ながら唇を数度撫でている。 真っ直ぐに画面を見る目も、真面目な大人の男という感じだ。 先生らしくない。 けど、先生の横顔だ。 すぐにキーボードへと手は伸びて、文字を打ちはじめる。 これが先生の仕事。 簡単に憧れる、なんて言ってしまうのは失礼だと思うくらい真剣だ。 暫くタイプ音が続き、ページを捲れないでいた。 ただ見ているだけだ。 それでも、今は本より興味がある。 紙コップの中がなくなったのか、飲みかけの2リットルペットボトルを掴むとそれを煽りだした。 こんな風に水分を摂るなんてはじめて見た。 先生のこと、なんにも知らなかったのかも… 先生は自分のために話を書いている。 そして同時に、それを手にとる多くの人たちに向けて話を書いている。 いつか聞かれた、“誰のため”。 その答えはいまだに分からない。 だって、読者のために書くのなら、それは生きる手段だ。 違うのか…? それとも俺の考え方が甘いだけか…? ぬるい考え方を捨てきれない。 両立出来たら、なんて。 足の指をぎゅっと丸める。 …子供みたいなのは俺の方だ 「夏目くん、そこにある資料取ってくれるかい。 ファイルの……、ファイルごと」 「はい」 「助かるよ」 佐伯さんが用意した物を手渡す際に見えた画面にはビッシリと文字が羅列していた。 これを今日までに書き上げる。 それが出来る人だから佐伯さんから信頼されている。 先生は本当はもっと遠くにいる人なのかもしれない。

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