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第46話
寝室から音がして振り返った。
漫画やラノベならペタペタと足音をさせながら可愛い女の子が出てきそうな展開だが、出てくるのはキャスターチェアを足代わりにするおじさんだ。
それでも美少女より、先生がいい。
例え開口一番が「カレーが食べたい」でもだ。
「いやぁ、夏目くんの作るカレーは美味しいねぇ」
「俺はすっげぇびっくりしたんですからね。
用事があってメッセージ送ったのにいつまで経っても既読にならないし、電話してもでないし。
来てみれば先生は動かないし」
「スマホは握っていたね」
「……」
確かに握っていた。
正確には、握りしめて強制シャットダウンさせて、だ。
カレーを大きな口で頬張る先生はケロっと言っているが、こんなのもう勘弁だ。
カレーの材料を買いに行っている間も、気が気じゃなかった。
どんな気持ちで買い物したと思っているのか。
「お疲れなのは分かりますけど…」
それでも心配した。
心配したことが悔しいから口に出すことはしない。
脈の測り方なんて知らない。
顔の前にティッシュを翳して、息をしているか確かめたくらいには心配した。
なのに起きたと思ったら「カレー………食べたい…」だ。
先生の素直さには慣れているが、今回みたいなのはこれっきりがいい。
流石に肝が冷える。
「しまいにはカレー食べたいって」
「夏目くんのカレーが食べたくてね」
「褒めてもおかわりしか出ませんよ」
「おや、おかわりをもらえるのかい。
それならもっと褒めないとだね」
屈託なく笑って皿を差し出してくるから、つい甘やかしてしまう。
先生も「こんなに食べられるかな」なんて笑っている。
随分ご機嫌らしい。
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