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事情
***
「先程は申し訳なかった。私の名はオリウスという」
あの後喜一が気を失って目を覚ますと、冒頭の場面になっていた。
先程の金髪の美少年は一瞬目を見張り、何か言いたげな目で喜一をじっと睨み付けた後結局無言のまま帰ってしまった。
その後オリウスに別室に案内され、茶を振る舞われている。
「つい先程訪ねてきたのはセレン。……私の後輩がすまない。今度会ったらよく言い聞かせておく」
モヤモヤした気持ちが顔にでも出ていたのか、喜一の心を汲んだように説明してくれる。
「いえ、あの……」
先程のは一体どういう事なのか問いかけると、オリウスがふっと微笑んだ。
「?」
「これを拾っただろう」
「あ!」
オリウスが見せてきた手の内にはあの鈴があった。
「……この鈴は私のものであり、村に伝わる重要な役目を持つものなんだ」
そんな大事なものだったのかと喜一が内心思っていると、オリウスが急に真剣な顔つきになった。
「名は何という」
「喜一、と言います」
「ではキイチ──お願いだ、どうか私の村を救ってほしい」
「え?!」
唐突な物言いに喜一が戸惑っていると、オリウスがテーブル越しに身を乗り出し悲痛な表情を滲ませて懇願してくる。
「これを拾ったということは、鈴がお前を選んだということ。ならばそれに賭けたい。何が何でも村を助ける。その為なら俺は何だってやる」
「ちょ、ちょっと待って」
オリウスの一人称が変わっている。
彼の目つきが段々据わってきて怖くなった喜一はそっとその肩を押し返した。
はっと我に帰ったオリウスは「つい、すまない……」と小さく謝罪して着席する。
「……わたし、いや俺には──我々この村には時間がないんだ」
「時間……?」
「ああ、それは──げほ、ごほっ」
「! 大丈夫ですかっ」
オリウスが屈んで吐血する。
喜一は咄嗟に向こうに回り、俯いた彼の背中をさすった。
「誰か、医者を……」
「っ、平気だ……いつもの持病でな。少し休めば良くなる」
人を呼ぼうと立ち上がりかけた喜一をオリウスが肩を掴んで押し止める。
オリウスは暫く目を閉じ苦しそうに胸を押さえて肩を上下させていたが、やがて落ち着いたようにぽつり、ぽつりと静かに語り始めた。
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