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第21話 兄弟と再会し、父の企みを知る

 部屋の扉の前で待機していたウーリンとヤーヘンが小さく頭を下げる。シャルルが「兄弟の所に行くよ」と声をかければ、彼らは声を揃えて返事をした。  シャルルは兄弟がいるだろう談話室を訪ねた。リリアーヌが「わたしが此処にお兄様たちを集めておくね」と言っていたからだ。 「ウーリンとヤーヘンは扉の前で待ってて」 「分かりました。シャルル様」 「何かありましたら声を上げてください」  シャルルの指示に二人は姿勢を正し、返答を返す。それから扉の両脇に立ったのを見て、シャルルはノックすることもせずに勝手知ったると扉を開けた。  シックな内装の談話室の一角で、アレックスとリリアーヌに挟まれる形で弟のミサエルがソファに座っていた。  少しばかり長いオレンジの髪を緩く一つに結った、幸薄げな母似の綺麗な顔立ちをしたミサエルに「久しぶりー」と軽く手を振る。そんな飄々とした兄の姿にミサエルは「お前なぁ」と眉を下げた。 「どれだけ心配したと思ってんの?」 「いやぁ。無駄死にはしたくなかったしぃ」 「暗殺の件だろ。ボクもアレックス兄さんも聞いてるよ」  ミサエルはシャルルが贄に出された後の出来事を教えてくれた。兄弟が贄に出されたと訳を聞きに父の元へと向かえば、「あいつは掟を破った」と言われたのだという。  そこでユリウス暗殺の任を聞かされた。シャルルと友人だったのだから、任務を断る気持ちも分からなくはないとミサエルもアレックスも思ったらしい。 「で、後からリリアーヌにわたしのせいでってもう一つの訳を聞いたんだよ。おっまえらしいけどさぁ」 「丁度、良かっただろ? 父の一族の掟から逃げることもできるし、リリアーヌの愛しい人も守れるんだからさ」  父に殺されるぐらいならば神様に喰われたほうが天国に行けそうだ。なんて、言えばそれはもう呆れたふうに兄弟たちに見つめられてしまった。  リリアーヌはそんな兄たちに、「でも、助かってるから」と、シャルルの無事を喜びましょうと声をかける。  確かに助かってはいるが、それは|豊穣《ほうじょう》龍に見初められたからだ。そうでなければ、今までの贄たちと同じ末路だっただろう。運が良かっただけだとアレックスは溜息を零す。 「運も実力の内って言うだろ?」 「お前のその性格が彼の神の心に響いたのだろうが……はぁ……」 「もうさぁ。生きているんだから、終わりでいいだよ。父上もなんだけど、あれ絶対に根に持ってるだろ」  何か知ってるよねと言いたげにシャルルがアレックスを見れば、あーっと言いにくそうにしてみせた。ミサエルもそれはと視線を逸らす。  その反応だけで分かることだ。シャルルが予想していた通り、父アームレットは掟や仕来りに固執しているのだということが。リリアーヌですら、察して顔を青ざめさせているのだから。 「シャルルお兄様がお父様に始末されてしまうかもしれないってこと! 嫌よっ、そんなの!」 「リリアーヌ、落ちつけ。まだそう決まってはいない。ただ、|豊穣《ほうじょう》龍様が俺たち一族の事を知った場合、どうなるか……」  アレックスの言葉にリリアーヌは黙った。暗殺者一族なのだ、自分たちは。人の命を命令一つで失わせる。罪なき者であっても。  神によっては命を弄ぶ存在として認識されてしまう可能性があった。  だから、もしエドゥアールヴァレットが拒絶を示せば、シャルルがどうなるか。いくつか想像できるが、どれも良い結末ではない。 「父はどうであれ、俺やミサエル、リリアーヌはお前に死んでほしいとは思っていない。だから、父には豊穣龍様の番になったのだからと言ってきたのだが……」 「父上様はボクら兄妹の仲の良さも気に入らないみたいでね。結構、酷い言われようだったよ」  あんな掟に従わない者など息子でもなんでもない。お前たちがあいつの事をかばうようならば、こちらにも考えがある。脅しだなとシャルルは父の性格の歪みを実感した。  掟だ仕来りだと言っているが、要は自分のプライドと気に入らないからという理由で、シャルルを処理したいのだ。  そのくだらない感情に自分の子供たちを巻き込んでいる、最低な親だった。 「俺がどう言われようと気にしないけど、アレックス兄さんやミサエル、リリアーヌを巻き込むのはクソ屑なんだが?」 「ボクも改めて思ったね、それ」  子供をなんだと思っているのだ。ミサエルの言葉にアレックスも同意するように頷く。リリアーヌは不安げに瞳を揺らしていた。  これはどうにかしないといけないな。シャルルは自分がどうこうされるのは構わないが、兄妹が巻き込まれるのは許しがたい。  だからといって、自分が暗殺者一族であるとエドゥアールヴァレットが知った時の状況によっては何もしてやれなくなってしまう。 (俺が神様の伴侶であるからできることはあっても、そうじゃなくなったら無力だ)  父は今、間違いなく動いている。シャルルは困ったなと腕を組んだ。まずは知ってしまった場合のエドゥアールヴァレットへの対応を考えなければならない。 「で、でも、シャルルお兄様は豊穣龍様とその、契りを交わしたのですよね? それを今更、無しにってできるの?」 「できるんじゃないか? その辺りは俺は聞いてないね」 「契りって具体的に何をしたんだ?」  ミサエルの問いにシャルルは口ごもる。性行為だよとはリリアーヌの前ではとてもじゃないが口には出せなかった。  だが、シャルルの反応でアレックスとミサエルは察したらしい。まさかと、アレックスがシャルルに詰め寄った。 「お前、ヤったのか!」 「言い方! リリアーヌが居る前で声に出さないでくれる!」 「大声が出るのは当たり前だろうが! 大事な可愛い弟だぞ!」 「だからって……」  壁に追いやられながらシャルルが言い返そうとして、ドンっと勢いよく扉が開いた。

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