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第27話血染めの首飾り・エピローグ
俺は今、自宅の前にいた。
城にいたときは夕暮れで、ここにたどり着くまでにすっかりと日も落ちてしまった。
早く家に入ればいい。でも、入りたくない。ソラスが既に家にいて、大層怒っているような気がするのだ。
彼から逃げ続け、ついぞこの時間になってしまった。地下牢での一件でも彼は大層怒っていた。正直今も恐怖である。
(いや待て。冷静に考えたらこの家の家主は俺で、彼は雇われだよな)
つまり、立場は俺の方が上である。俺がびくびくと怯えるのは筋が通らないではないか。
なので勇気を出してそっとドアを開ける。そーっと。
扉を10センチほど開いたところで、手首をガッと掴まれる。男性の手だ。
「ギャアアアアアアアアアア!!!!」
ホラーさながらのそのソラスの行動に、近所迷惑など考えずに全力で叫んだ。ソラスは装備を外しており、今は私服を着ている。月明かりに照らされた彼は神秘的でとても美しかった。
しかしその目は笑っていない。ただこちらを責めるように凝視している。
「ルナリオ!?ルナリオなのか!?」
奥からぴょんぴょんとスラリスがやってくる。きっと俺と離れ離れで寂しかったのだろう。ところで部屋の中が暗いのはどうしてだろう。なぜ明かりをともさないのか。
「頼むルナリオ!!早く騎士に謝ってくれ!!こいつ、帰って来るなり家中ひっくり返してお前を探して見つからないと判断してからはずっとドアの前に立ってたんだぞ!!!!」
ノンブレスのスラリスの説明に、俺はこの世界に来て最大のドン引きをする。厄災を引きつけるどころか、彼の存在が1番怖い。なにがあなたをそうさせるのか。
「き、騎士さん。何をそんな怒っているのか存じませんが本日は大変助かりました。ええ、本当にありがとうございました。」
「僕の名前を知っているはずなのに、どうして騎士と呼ぶんですか」
「ええソラス様!!あなたはソラス様です!!!」
雇用関係が反転していないだろうか。
スラリスは俺の顔をみて安心したのか、自室へ戻っていった。この場には俺たちだけ。
「神々しいお顔が曇ってますよ!!ね、怒らずに!!今日はもう寝ましょう!!!!」
「神々しい....??」
ソラスはポカンとした顔で俺を見る。初めて言われたような反応だ。まさかその容姿で今まで讃えられずにいたのだろうか。
少し考え込む姿をしてから「今日はもう寝ましょうか。話はまた明日です」と彼は切り上げる。表情が少し穏やかになった。
正直ソラスのことは解雇するつもりだったが、こんな中で解雇しようものなら殺されるかもしれない。それくらい今日のソラスには気迫があったが、ひとまず今は引いてくれるようで良かった。
ソラスは自分のドアに入る前に、ぴたっと止まる。
「今日は、あの後|シュトルム《彼》といたのですか?」
「え、ええ。家賃についての話をしてきました。駄目でした」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんだろうこの沈黙は。何か言葉を一生懸命選んでいるような気がする。
「君は、彼に告白をしましたか?」
「こ、告白ぅ!?!?」
えらく前置き無く突発的なワードが降ってきた。
「そんなことするわけないじゃないですか!なんで俺が!?」
「・・・・・・・いえ、|無《・》|か《・》|っ《・》|た《・》んですね。分かりました。ありがとうございました」
ソラスはそれだけ言うと、今度こそ自分の部屋に戻った。なんだったんだろう最後の質問は。俺とシュトルムがそんなふうに見られていたことに不満を感じる。
まあいい。俺も今日は弁護で本当に疲れた。早く寝よう。
ここ最近、本当にいろいろなことが起こった。ルナリオも自室に入りベッドに横たわった。そして寝る前に反芻する。
シュトルムが道端で襲われていて、この家にやってきて。
コンテストに出て、エシュテスに脅迫されて暗殺者が来て。
そして城に連れられ、弁護までしたのだ。
(にしても、今回の砂漠の国との騒動、やっぱり魔王が関係しているのかな)
砂漠の国に辺境が乗っ取られていれば、戦争が起こっていた。すると、一番得をするのは誰だったのか。この騒動には、魔王が関係している。
けれど、今は疲れた。ゆっくり寝られるのはいつ振りか。
(そういえば、最近所持金触ってなかった。盗られたりとかしてないだろうか)
そうして俺は寝る前に確認しておこうと財布を探る。エシュテスに脅迫されたときに持って行った財布は、そのまま地下牢で没収されたが、騎士が取り返してきてくれ、自室にしまってくれた。
(ふんふん、盗られて|は《・》いない)
しかし、何かがおかしい。記憶違いでなければ、エシュテスに脅迫されたあの日、俺は6万ゴールドを持っていたはずだ。しかし、何度数えても数が合わない。
|減《・》|っ《・》|て《・》|い《・》|る《・》|わ《・》|け《・》|で《・》|は《・》|な《・》|く《・》|、《・》|増《・》|え《・》|て《・》|い《・》|る《・》|の《・》|だ《・》。
誰かがまた足した?しかし、人の許可なく財布を開ける人物はこの家にはいない。
いや今回だけじゃない。前にも勝手に一万ゴールドが増えていた。
俺の脳裏に、ゲームの情報が浮かぶ。
『死んだとき、金銭は巻き戻らずそのままになることがあります』
まさか。まさかまさか。
「俺は|す《・》|で《・》|に《・》|何《・》|度《・》|も《・》|死《・》|ん《・》|で《・》|い《・》|る《・》・・・・・?」
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