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第41話畑はここに蘇る
翌日。
俺の元に王子がやってきた。自室をノックしても反応がなかったため、ソラスの元にいると思ったのだろう。俺達が昨晩同じベッドを使っていたことに大きく戸惑いをみせたが、しかし看病のためと説明すると一転して笑顔になった。
「聖霊種を10粒、収穫することが出来ます。温室までお越しください」
俺はトゥルニテを起こして、王子と三人で温室に向かっていった。ここ最近の王子は護衛を振り払うほど走り回っている為、ついに今日にいたっては護衛の影すら見当たらない。どうせいても口うるさいだけなので、今が好機とばかりに俺たちは動き回っていた。
もちろん俺たちに護衛は必要なので、トゥルニテの寝室に寄ってたたき起こす。眠くて目をゴシゴシしているトゥルニテの腕を引っ張り、俺たちは温室へと入っていった。
「10粒でしたら大体100人、中毒から助けることが出来ますね」
「ええ、ですが問題があります」
問題とは。一体だれを優先するか、とかだろうか。
「いえ、確かにそれもありますが、そもそもこれをどうやって飲ませるのかという問題です。一滴一滴を杯に分けるのは至難の業で、放置すれば蒸発する恐れもあります。たとえ大量生産が出来たとしても、時間は潤沢ではありませんから」
「飲ませる手段、ということですね」
水で薄めて飲ませるしかないだろう。しかし、王子曰く「水に溶かせるには問題があるくらいには粘度がある」とのことだった。例えば病人に水差しで飲ませるにしても、水では固まるため勝手が悪いのだ。また病人一人に一々水差しを洗っては中に詰め…と繰り返す。労力がかかる上に、粘度があれば詰まるし、そこまでの量の水差しもない。液体として接種させることはやめておいた方がいい。
「ならジャムにするとか」
それをのんびり聞いていたトゥルニテがぽろっとこぼす。全くもって甘党の発言だ。でも、
「確かに悪くないかも。ジャム…」
普通の病気とは違い、口に入れてもらえればそれでいいんだ。寝てる人もジャムだったら口に受け止めやすい。またスプーンだったら大量に用意が出来る。
俺と王子は目を合わせ、うなずき合う。
「トゥルニテ、ありがとう!!」
礼を言われたトゥルニテは驚きの表情をしたが、しかしフードを被ってそっぽを向いてしまった。これは相当照れているな。
俺はカバンを探り、持っている作物を並べていった。
「これがルナリオが作ったにんじん、いちご、りんご、ブルーベリーですか。果樹も育てていたのですね」
「はい、この四つの作物は色も違いますので、重症順に聖霊種の量を調整することもできます」
「熱を入れると効果が無くなる可能性もあるので、ジャムを作ってから混ぜましょうか」
俺たちはどうしたらもっとも効果的なものが目指せるか、時間もないので手を動かしながら協議していく。大司教を説得するには時間もないから少量でいいとは王子に言ったが、少量で少人数を助けられたとて「偶然」の一言で終わりかねないと王子から言われる。ここは大司教と面識がある王子のアドバイスに沿い、時間の許す限り量を作っていこう。
俺達は城の厨房へ移動し、許可をもらってジャムを作ることにした。厨房にいた人たちは王子が直々にやってきた事実に当初困惑していたものの、事情を知るや否や大きい鍋や瓶の入れ物を用意してくれるために動き始めてくれた。
俺達は机の上の四つの作物を眺め、どの作物に聖霊種をどれだけ混ぜていくか協議していく。
「やはり、軽症の人が一番多いですので、聖霊種の量を減らすのは一番収穫量のあるニンジンがいいんじゃないでしょうか」
かつてスラリスやみんなと作った努力の結晶が、今遠く離れたこの場所で活躍する。ふかふかの土で育てた綺麗な形で、栄養も期待できそうなこのニンジンを、シェフたちも触ってはうなる。この品質は辺境のコンテストで二位を取った作物だ。そんじょそこらのニンジンとは品質がちがう。けれどプロたちにも認めてもらえているこの事実が何よりうれしい。
俺達の小さな畑が、このプリエスティラを救うのだ。
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