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第51話慈悲深き女神の涙・エピローグ
先ほど王子から「嫁になってほしい」という衝撃の発言が聞こえたが、ソラスによって強引に連れ出され、俺は会場を出て廊下を歩いていた。
「どうしたのソラス、何か急ぎの用でもあるの?」
「いえ、部屋に戻ってお互い休むべきです。特に殿下からは距離を置きましょう。あれはよくない」
「子供の戯れなんだから…」
でもひょっとして嫉妬してくれたのかな?とも思いドキドキする。
・・・けれどこの思いは封印すべきだ。俺は元の世界で家族に言うべきことがある。故にどうしても帰らなくてはならない。この原動力を抜きに、甘い気持ちでこの世界は生き延びることは出来ない。
というか戦いの直後にはいつも俺はソラスに腕を強く引っ張られるな。雑な扱いでちょっと悲しい。
そうこうしている間に俺たちは城内の自室につく。今日はここを何往復もしているので本当に疲れた。隣の部屋のトゥルニテはもう会場から戻っており、ソラスが護衛に復活したため自分は王都を歩いてくるとのこと。通りにあるカフェのケーキがずっと気になっていたらしい。それだけ告げて行ってしまった。
ソラスは自室に戻り次第部屋に鍵をかけ、隣の部屋からこちらに入れる部屋のカギも閉める。いやな予感がするぞ。
そのまま俺にずかずかと近づき、俺を抱き上げベッドにおろした。これはまさか
「ちょちょちょ・・・!!!いや、呪いの時は俺のせいだから処理してあげたけど、そ、そういうのは専門の女性で発散することを、その、おすすめするというか!!!俺はあなたの発散の隣で目隠し耳栓して護衛だけはされますから!!!!」
今、俺は押し倒されている。やばい、完全にオナホ扱いというやつじゃないだろうかこれ。
焦っている俺と欲情しているソラス。呪いはなくなったというのにどうしてそんなお盛んなんだ。
今ここにベッドの上で静かな戦いが幕を開ける…と思いきや、思いもよらぬ出来事により戦いは中断する。
コンコンコン
「・・・無視しましょう」
「まあ、誰か分からないと怖いしね」
コンコンコン
『兄さん、開けてください。僕です』
「・・・『兄さん?』」
嘘だろ、義妹だけでなく実は俺には弟までいたのか。もうそういう設定はいいよ、と思っていたらソラスは厳しいまなざしでドアを見ている。
「ひょっとしてソラスの弟?確か優秀な弟がいるって前に言っていたよね」
「・・・・・・・・ええ。また後日実家には寄ることにします。今は無視しましょう」
「いや駄目だから!!!俺のせいで兄弟の再会が延期してるんでしょう!?会っておいでよ!」
ソラスはしぶしぶといった形で外に出ていった。俺はこの時間に風呂に入っておこう。
廊下にはただ二人の兄弟だけがいた。
「兄さん!!どうして家に帰ってこないんですか!?みんな心配してるんですよ!?」
「あの家にはお前がいるからいいだろう。僕のことは気にするな」
「だって、だって兄さんが次期公爵を継げばいいのに、どうして僕に押し付けて、そして家を避けて…」
「お前のほうが執政に向いている。僕は頭を使うのは得意じゃないんだ」
言い争いの声は響いてはいるものの、誰もいないおかげで二人だけの秘密のやり取りとなっていた。
弟はソラスと同じ銀髪ではあるが、大きく額を出し眼鏡をかけている。また体格には恵まれなかったようで、兄とは方向を変え勉学のほうへ時間を割いた。年はソラスと三歳違いで、兄を尊敬する優しい子だ。
実はあの継承式にソラスの実家の家族もみな出席していた。けれど挨拶どころではなくソラスは去っていったのだ。父も母も、挨拶なしに去っていく息子に気落ちしていたという。
「違う、兄さんは理由をつけて帰ってこないんだ。だって、兄さんがこれ以上戦う理由はないじゃないか!!だって」
「やめるんだ、それ以上は」
「|公《・》|表《・》|し《・》|て《・》|い《・》|な《・》|い《・》|だ《・》|け《・》|で《・》|魔《・》|王《・》|は《・》|既《・》|に《・》|倒《・》|し《・》|て《・》|い《・》|る《・》|よ《・》|う《・》|な《・》|も《・》|の《・》|な《・》|の《・》|に《・》!!!!!」
「・・・・・・・・・本当に、ルナリオを実家に連れ帰らなくてよかった。余計な話を耳に入れるところだった」
ソラスは今頃入浴しているだろうルナリオとは別方向の場所を見ていた。
それは、魔王が鎮座しているはずの方角だ。
兄のその顔は弟からは見えない。
けれどソラスは|嗤《・》|っ《・》|て《・》|い《・》|た《・》。ただただ嗤っていた。
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