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第55話光のソラス③
顔も声も隠した僕に、君は優しく接してくれました。
ところどころ疑問に思うところはあったようですが、けれどここまで僕に優しく微笑んでくれた周はありませんでした。怯えることもなく、逃げることもなく。彼の畑仕事を手伝いながら、幸せを享受していた。
けれどいつかはこの兜を外さなくてはならない。僕は君と恋仲になりたいのだから。
そのタイミングをいつにすべきかは相当悩みました。うかうかしていると君はほかの男と恋仲になる恐れがありましたから。
しばらくするとこの家に、シュトルムが住むようになりました。正直、心底嫌でした。
他の男性との唯一のアドバンテージが君と一緒にいられる時間だったから。そして、僕なんかと違って軽口をたたいてくるシュトルムは、君には気兼ねなく非常に親しくなれる存在ですから。
そうそう、君のために料理を作ったこともありましたね。実は別の周で君がこの国の唐辛子が口に合うという情報を拾えていたのです。おいしそうに食べてくれて、嬉しかった。前に閉じ込めた時はあまり笑ってくれませんでしたから。
けれどその直後にトゥルニテが襲来した。驚きました。僕は自室で料理に喜んでくれた君の笑顔を思い出してにやけが止まらなかった。そんな隙に彼がやってきたのです。トゥルニテがシュトルムを狙って投げたその武器は君の頸動脈を貫きました。そして時間が戻り、僕の扉を開いた音に気が付いた君はそれによって頭部の角度が変わり、頬をかすめる程度で済みました。君の傷つく姿なんて見たくなかったのに、また見てしまった。
僕はなんとかトゥルニテを追い返しました。弱点が光ということは知らなかった。そういえば前に戦ったときに僕の剣を忌々しそうにみていたのは明るさが原因だったのですね。
君の傷ついた姿を油断していた隙に見たこともあり、僕は気分が悪くなってこの家に来てから初めての長時間睡眠をとりました。それがよくなかった。目が覚めた時、君は忽然と姿を消していたからです。
シュトルムもいないことに気が付いた。おそらくは城内にいるんじゃないか、と今までの経験で見当をつけました。けれど僕がいない間に、君はまた殺された。僕は君の元へは間に合わなかった。城に突進してくる鎧姿の男がいたら、それは誰だって警戒するでしょう。足止めを食らってしまったのです。目前の詰みの場面にどれだけ焦ったか、君は知らないでしょう。そうやって妨害をされている間に、また時間が戻りました。これについては地下牢で何があったのかは知りません。ただ君が殺されたことしか。
そこで僕はふと思いました。そういえばこの街には情報通の女性がいることを。彼女の手を借り、最適な侵入経路を教えてもらいました。僕は地下牢を疾走しました。そして牢の前に誰かがいた。事情は知らずとも死の原因はその誰かにある。なら全員殺してしまえばいい。
君の声で何とか止まりましたが、止めがなければ妃もろとも殺していたでしょう。
そしてやがて審問会が始まった。ええ、審問会中にも君は一度亡くなっています。
毒妃を追い詰めることが出来た君は、しかし僕の証拠が届くのが遅かった。一分遅いだけで事は起こった。
毒妃は考えたのです。ここで一度騒動さえ起これば、審問会は中断する、と。
彼女はちゃんと民衆に自分の手のものを仕込んでいました。サクラとしても機能しますからね。伏兵は審問会の硬直を狙い、毒妃の合図とともに君に吹矢で毒針を打ち込みました。相手は誰でもよかったのでしょう。けれど舞台の主人公として主役の容疑者は周囲からの視線を一手に集めていた。背中を民衆に見せているうえで狙いやすいのがあくまで弁護人で注目する人も比較的少ない君だった。
僕は証拠の場所を学習しましたから、戻ってくる時間を短縮できた。僕の戻りと共に君は僕のいる観衆の方をじっと見ていましたから、伏兵は攻撃を諦めたようです。
次期領主をめぐってシュトルムは民衆に非難されていましたね。でも僕は思ったのです。「ああ、これは利用が出来る」と。
だって、僕が誰かのために顔をさらせば、君は僕のことを認めるしかなくなる。兜をとったときの君のあの、驚いた顔。そこに怯えはあった。けれど、それ以上に僕への信頼が滲んでいた。とても、とても嬉しかった!!
会が終わり次第、君はどこかに去ってしまいました。
なんとなく、居場所は分かった。けれど、家で待つべきだろうとも思った。直感でシュトルムは君のことを好きだともわかった。けれど彼から告白は出来ない。故にまだ僕にも望みはあるし、万が一結ばれた場合は方針転換して攫えばいい。
いえ、ひょっとしたら家に帰ったものの僕を恐れている可能性も考慮し家中探しましたが。あのスライムはびっくりしていましたけれど。
ああそういえば、あの時は本当に驚きました。君が僕の容姿を「神々しい」と褒めた時のことです。君は僕のことを容姿で褒めることはしなかったので。美しいと思ってくれていたのかと、驚いて思わず黙ってしまいました。
そして何よりうれしかったのは君とシュトルムは恋仲にならなかったこと。本当によかった。念のため出立の準備もしていたから、本当に良かった。
そしてまた平穏な日々が始まりました。ああでも、シュトルムの代わりにトゥルニテが家にやってきましたね。君には何度か「トゥルニテと二人きりは怖くないか」と伝えたものの、僕の意見は吞んでくれませんでした。君とどれだけ関係が深くとも、トゥルニテには過去に君を奪われたことがありましたから。正直気分はよくなかったです。
けれど、「僕が倒れた時はルナリオを守ってほしい」旨をトゥルニテに伝えると、嬉しそうに微笑んでくれました。このまま僕が上であることを刷り込んでいけば、彼は抑えることが出来るかもしれない。もう君を二度と取られたくなかった。
細かい護衛についての注意事項と共に、立場の上下を刷り込んでいきました。信頼という言葉を用いれば簡単に懐いてくれた。
そしてその後は王都ですね。君と王都に来たのは初めてです。今までと全然違う流れに、驚きつつも僕は希望を感じていました。
馬車が倒木によって崩れた時は想定しておらず、唖然としました。けれどその後、王都まで君と密着して馬に乗れたのは本当に楽しかった。まだ僕らの間に壁は感じましたが、それでも僕のことを知ろうとしてくれているその気持ちがとても嬉しかった。
ここまで関係を深めるのに僕はすさまじい苦労を重ねた。だというのに王子が簡単に距離を詰めてきたこと。もう、君を取られまいと必死でした。同室もかなり強引ではあったと思います。けれどそういう意味で君に早く意識はしてもらいたかった。ただやはり僕に対してそういった意識はないのか、堂々とベッドの真ん中で睡眠をとり始めた時はちょっと悲しかったです。せっかくここまで信頼を勝ち取ることが出来たんだ。絶対手は出さないと僕は固く誓っていました。けれど、君はもう睡眠に入っていた。久々にその体温を感じたくて、思わず抱きしめてしまったのです。
翌日、王都の街並みを君と歩いたのは楽しかった思い出です。正直、流行りにも興味はない故、人が何に騒いでいようが僕は興味が無かった。けれど隣に誰がいるかで景色がこんなに違うのかと感動しました。僕の心はもう君で占められていた。
その後にあったのは、ああ。君の義妹との遭遇でしたね。あまりの君との似なさに誰だろうと思いました。・・・そういえば前日にも会った気がしますね。その程度の興味でした。でも、その女は君に偉そうな態度をとり、あろうことか平手打ちをした。避けると思っていた僕は本当に驚きました。
|こ《・》|の《・》|女《・》|は《・》|邪《・》|魔《・》|だ《・》|。《・》
そう思った僕は首をへし折ろうと思い、女に近づきました。邪魔だったから今のうちに排除しようと思っただけです。まあ、君が止めたんですけれど。
僕は君に甘いですからしぶしぶ止めました。
そしていろいろあって僕たちは王の部屋に向かいました。正直、僕はあの王が好きではありません。辺境にいるときに何度も召集をしてきました。僕は君を守るのに忙しいのに、邪魔をしてくるんですから。本当に、鬱陶しい。
王の寝室では、魔王幹部のシュンネペイアがいました。
奴は遭遇するなり余計なことを言いかけていたのであの時は焦りました。ええ、彼の言う通り僕はとんでもないことを魔王軍側にしているのです。
|魔《・》|王《・》|を《・》|殆《・》|ど《・》|倒《・》|し《・》|て《・》|い《・》|る《・》|こ《・》|と《・》|。《・》
魔王の核は僕では破壊できないので、虫の息の状態でぎりぎり生かしている状態ではありますが。さらに神層の鎖で縛り、僕以外に解けないようにしておきました。自分の上司が半殺しの状態でいるのですから、魔王幹部は相当焦っていたのでしょう。
|シュンネペイア《あの魔物》の攻撃手段は既に知っています。知っていなくとも僕は聖騎士、呪い攻撃など効きはしない。けれどここで僕は思い出しました。
「そういえばトゥルニテはこれを受けることで君と恋仲になっていたな」と。
僕は直撃することを決めました。想定外だったのは、意外とダメージが重かったこと。
そう、僕は忘れていたのです。前の周で装備が継続されるなら、僕の行いだって蓄積するということ。周を積み重ねるどこかで聖騎士の立場が危うくなる罪があったのでしょう。身に覚えはありませんが。
故に30分は本当に苦しかったです。まあ、あの程度すぐに治りましたが。
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