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友愛デイドリーム(前編)02
卒業旅行の行き先は、大したところではない。雄大な自然と温泉街が売りののどかな地方の観光地だ。
穏やかな時間が流れるといえば聞こえはいいが、ゆったりと寛げるぐらいに何の娯楽もない場所というのが実際のところだ。
噂によると、教授の親族が経営している宿であるらしく、毎年やってくるお得意様の団体客として格安でのプランを組んでもらっているらしい。
そんな魅力のあまり感じられない目的地のせいで、卒業旅行の参加希望者は少なかった。自分と引率の教授を含めても七名ほどだ。そしてその中には予想通り、こういったイベントに欠かさず参加している笹木の姿があった。
部屋割りは教授と男子と女子の三部屋だった。自然と俺と笹木は同じ大部屋になったが、彼の周囲には常に他の友人がいて、俺は近づくことすらできなかった。
「真田の奴、なんで来たんだろうな」
「いっつも顰めっ面で何考えてるかわかんねぇし気味悪い奴……」
笹木のいないタイミングで他の奴らがこれみよがしに俺に聞こえるようにヒソヒソと噂をする。
あいつには友人も多いが、その中にはこういうクズもいるのか。周囲に興味を持ってこなかった俺は、卒業直前であるこのタイミングでその事実を知る。だが、彼の気持ちを考えずに行動し、微妙な関係になっている自分が言えたことでもないと思う。
だがもし、俺以外の笹木の友人がこいつらのような奴らばかりなら、あんな風に突き放したのは絶対に間違いだった。少なくともこの場にいる彼らには笹木は任せられない。
そう思う自分と、そもそも彼は自分一人のものではないという事実がぶつかり、苦々しい思いで胸の奥が鈍く痛む。
折角仲直りのチャンスを求めて、来たくもない旅行に参加したというのに、結局俺は、笹木と一緒に町を回ることも、食事中に談笑することもできないまま、夜を迎えた。
笹木が俺に接触してきたのは、全員が寝静まった深夜のことだった。
「真田。真田、起きろって」
肩を揺さぶられ、押し殺した声で呼びかけられる。それが笹木の声だということはわかったが、彼が親しげに話しかけてくるだなんて久しくなかったせいで、ただの夢かと思ってしまった。
迷惑そうに小さく呻き声をあげて、俺は寝返りを打つ。すると笹木は俺の耳元に口を寄せると、戯けた声を作って吐息まじりに色っぽく囁いた。
「起きないとぉ……王子様がお目覚めのキスしちゃうぞっ♡」
「はぁっ……!?」
耳を疑う発言に一気に意識が覚醒し、俺は布団を押し除けて跳ね起きる。薄闇の中、笹木はちょっと驚いた顔をした後、照れくさそうにはにかんだ。
「笹木……?」
「えーと、何ていうかその……」
寝ぼけ眼で彼が次に何を言うのかを待ち続ける。笹木は何度も視線を泳がせ、言い淀んだ後、意を決して話を切り出した。
「なぁ、真田! ……こんなつまんない旅行、俺と一緒に抜け出さね?」
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