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友愛デイドリーム(前編)06
「見つけないで、か」
「え?」
ぽつりとそれを読み上げると、死体を凝視していた笹木がこちらに振り向いた。俺が無言で足元を指さすと、笹木もその遺書の存在に気付いたようだった。
「これ……遺書だよね」
「ああ」
「自殺したのかな……」
「どうだろうな」
死因を探るために死体を漁る勇気はなかった。俺たちは互いに腰が抜けそうになるのを支え合って、死体からゆっくりと距離を取り、階段近くの防火扉の近くまで離れたところで足をもつれさせて倒れ込んだ。
「う、わぁっ!?」
「わわっ!?」
互いに抱きしめ合うような姿勢で後ずさっていたせいで、倒れ込んだ姿勢も笹木が俺を仰向けに押し倒すような形になっていた。
「あっ……」
笹木が俺を見下ろし、気まずそうな顔で硬直する。そのまま黙り込んだ彼に俺は尋ねた。
「どうかしたのか?」
「い、いや、結構きわどい姿勢になったなって思って、はは……」
「きわどいも何も、さっきまでビビって抱き合いながら歩いてただろう」
「それはそうだけど! ……まあ、それもそうか、そうだよな……」
自分で勝手に結論を出したのか、笹木は体を起こして俺の上から退いた。俺も体を起こし、倒れた時に地面にぶつけた肘をさする。笹木もまた何かを誤魔化すように自分の体を確認した後、気を取り直して肢体に視線を向けた。
「真田」
「ああ」
「……どうする?」
「どうするって……あの死体のことだよな?」
「うん……」
遺書を残して死んでいる男の死体。荷物を漁られた様子も衣服の乱れもなく、素直に受け取れば人目のないところでひっそりと自殺した人間なのだろうと推測できる。
「警察に通報するか?」
「で、でも通報したのがバレたら、俺たち警察に不法侵入で捕まるんだぞ! 俺は普通の企業への就職だからいくらでも取り返しがつくけど、お前は専門分野なんだから――」
「それでもこのまま放置ってわけにはいかないだろう。……いや、遺書の言葉を尊重するのなら、見なかったことにして立ち去るのがいいのかもしれないが……」
「うん……」
不安そうに死体を見る笹木の顔を、ちらりと窺う。隣で青ざめている彼は日常と全く同じ見た目をしているのに、自分たちが置かれている状況はあまりにも日常とはかけ離れていて、頭がどうにかなってしまいそうだった。
どうしてこんなことになったんだろう。ただ俺たちはちょっと危ない秘密を共有して、その思い出の中で互いに抱いているしがらみを解消したいだけだったのに。
正体不明の死体を見つけて、見て見ぬふりをして立ち去るという選択肢が第一候補になるだなんて。そんな大きな秘密を抱えたまま、俺たちに生きていけっていうのか。
誰かを恨みたくてもひたすらに自分たちのせいでしかない現状に八つ当たりの対象すら見つけられず、ただただ俺たちは黙りこくる。
痛いほどの沈黙と、天窓から差し込んでくる星の光。何分が過ぎたのか、何時間が過ぎたのかも分からない引き延ばされた静寂の末、笹木は緊張で引きつった表情で俺に提案した。
「あのさ、真田。……あの死体、俺たちで埋めないか?」
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