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友愛デイドリーム(後編)02
「真田ー! 今日も俺が来たぞー!」
「ああそう、飽きないな」
真田という人間は、最初予想していたよりも優しい奴だった。甘い、と言ったほうが正確かもしれない。
俺は、学生生活が始まってから、ストーカーと呼ばれても仕方がないほど彼へとつきまとった。
「そんでな、俺な!」
「はいはい」
強引に距離を詰めようと話しかけ続ける俺を、真田は強く拒絶することはなかった。塩対応ながらも話を聞いて、最低限の相づちを打ってくれる。
後々になって思い返すと、普通の人間ならとっくの昔にブチ切れているアプローチだ。だけど真田は変なところで優しくて、俺を徐々に許容してくれた。俺の執念の理由に言及してくれないのはもどかしかったが、ひとまず唯一無二の学友の立ち位置を確保するに至った俺は、安堵した。
この関係性になるまで問題が無かったわけじゃない。彼と距離を詰めるにあたって一番の障害になったのは、俺の『友人』たちだった。
「笹木ってなんで真田なんかに構ってんの?」
『友人』たちから幾度となくかけられる質問に、俺はその度に顔が引きつるのを耐えなければならなかった。
どうやら俺の周りに集まってくる『友人』という奴らは、真田のことをうっすらと嫌っているようだった。
確かに真田には愛想はない。皮肉屋だし、ノリは悪いし、集団行動に積極的に参加したりもしない。彼に学校で声をかけるのは俺ぐらいなもので、学内で他の生徒と会話しているところをろくに見たこともない。
だけど本当の真田は、態度は冷たいしスカしてはいるけど、近付いていく俺のことをなんだかんだ受け入れてくれるし、たまに笑ってくれるし、ごくまれにノリが良いところも見せてくれる。
俺相手にだけ見せている顔なのではと考えれば優越感も抱けたが、そのせいで俺の周囲の奴らに彼が反感を抱かれているというのは大きな問題だった。
本当の彼を知っているのは自分だけでいい。だけど上手く立ち回らないと、俺も彼も『友人』たちからのヘイトの対象になって、幼稚な悪意を向けられないとも限らない。
自分がいじめられたり疎外されたりするのはいいが、それで真田に迷惑がかかることだけは絶対に避けたい。
考えた末に俺が出した結論は、『友人』たちとの関係は良好に保ちつつ、真田に対してのスタンスを濁し続けるという方針だった。
「なんで構うか、かぁ~。俺も分かんないけどさ、ああいう変な奴とも関わった方が人生楽しいかなって!」
「ふーん、笹木も結構変な奴だな!」
「なんだよそれー、ははっ」
本気で好意的に接しているわけではないと匂わせ、真田に向けられる嫉妬の視線を弱める。自分という存在が、何もしなくても集団の中心に立ってしまう人間であることが、心から憎らしかった。
「真田は俺のオアシスだよー」
「なんだ、藪から棒に」
「もうお前なしの人生は考えられないってこと!」
「はあ? また調子の良いことを……」
呆れた顔でこちらを見る真田に、俺はしみじみと考える。
真田。本当の本当の本気で、俺はそう思ってるんだよ。俺の苦労なんてお前に知られたくないけどさ、お前のおかげで俺は日々、あいつらに愛想笑いすることができてるんだ。いつもありがとな。
一年、二年と過ぎるうちに、俺たちの仲はどんどん親密になっていった。
ここまで仲良くなれば、恋愛感情を告白しても受け入れてもらえるかもしれない。だけどもし拒絶されたら。唯一無二の親友で、一緒にバカをやれるぐらいになったのに、その立場を捨ててまで挑戦する必要があるのか。
いや、逆に考えるんだ。在学中に告白してOKをもらったとして、もし俺たちが恋人同士になったとバレたら、周囲の目は間違いなく厳しいものになる。もしそうなったら、俺は真田のことを守り切れるのか。
三年生になり、四年生になり、俺は1つの結論を出した。
卒業したら、彼に告白しよう。周囲のしがらみがなくなって、誰にも俺たちの間柄を邪魔されない状態になったら、この気持ちを伝えよう。
それが臆病な自分の言い訳だということは薄々分かっていた。だけど俺はそのことを認められずにズルズルと時間を過ごして――そして、あの事件が起きた。
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