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友愛デイドリーム(後編)04

「笹木さぁ、最近、真田と何かあったん?」  ぎこちない関係になった俺たちを見た『友人』たちは、揃って呑気な顔で俺にそう尋ねてきた。  俺はその度に激しい嫌悪感に駆られながらも、作り笑いでそれを乗り切った。 「別に? ちょっと口喧嘩しただけだよ」 「ふーん。ま、真田って結構空気読めないし、いつかは何かやらかすと思ってたけど! ははっ!」  ヘラヘラと笑いながら、知ったような口を利くそいつの首を絞めてやりたかった。  お前なんかに真田の何が分かる。これは、真田の不器用な気遣いを俺が受けとめきれなかったってだけの話なんだ。真田のことを何も知らないくせに、ふざけやがって。  だけど現実の自分は『友人』に掴みかかるどころか、曖昧な笑みで話を終わらせることしかできなかった。  俺はどうしようもない臆病者だ。こんなにコイツらのことを嫌っているのに、コイツらに嫌われるのが怖くて話を合わせてしまう。もしかしたら真田を守るだなんて行動理由も、ただの卑怯な言い訳に彼を使っていただけなのかもしれない。  いっそ死んでしまいたくなるほど惨めな日々を過ごし、学生生活も終盤にさしかかったある日、俺は一つの噂を聞いた。 「真田が卒業旅行に来るらしいぞ」 「えー何のために? 今更大学の思い出作りとか? 正直邪魔なんだけどー」 「分かる~」  ゲラゲラと笑い合う『友人』たちの中で、俺は密かに考え込んでいた。  もしかして真田は、俺との接点のために卒業旅行に行くことにしたのではないか。  思い上がりも甚だしいとは思ったが、それ以外に彼の行動を説明できる理由は思い浮かばなかった。  どちらにせよ、そのチャンスを逃すわけにはいかない。彼の思惑が何であっても、これを最後の機会だと思って行動を起こさないと。  たとえ全てがうまくいって彼と二人きりになれたとして、何を言えばいいかも分からないけれど。  俺は急いで卒業旅行への参加希望を出し、悶々と悩みながら日々を過ごし――ようやく、旅行当日がやってきた。  行き先に向かう交通手段はバスだった。人数もそれほどいないがバスをチャーターした方が結局安上がりだという理由らしい。  俺の周囲でワイワイとお喋りをする『友人』たちに対し、真田は少し離れた席で一人座って本を読んでいた。  今すぐこんな奴らと一緒の席から離れて、真田のところに行きたい。だが俺の心の臆病な部分がそれを邪魔して、どうしても集団の輪を乱せない。  バス移動中は読書する派だったんだ、とか、あまり酔いにくい体質なんだな、とか、彼に話したいことはいっぱいあった。  四年間も一緒にいたのに、俺は真田について、まだ知らないことが多すぎる。  これからもずっと友達でいたい。もっと真田のことを教えて欲しい。もしそれが叶うのなら、この恋心を諦めたっていいから。  年単位で拗らせている感情を投げ打っていいと思えるほど苦痛な時間を過ごし、バスは目的地へと到着した。  ホテルにチェックインして、いざ観光という流れになっても、俺は真田と二人きりになることができなかった。  周囲に合わせているうちにいつの間にか真田の姿は見えなくなり、その度にこっそりとため息をつく。その繰り返しだ。  部屋割りが男子と女子で分けられたのは幸いだった。当然、真田と俺は同じ部屋になり、他の邪魔者も多いものの、俺は希望を捨てず、ひたすらにチャンスを待ち続けた。  風呂に入り、食事を済ませ、布団の敷かれた大部屋でしばらく談笑し、消灯の流れになって数十分。  ようやく全員の寝息が聞こえてきたことを確認すると、俺は布団からそっと抜け出して、皆とは少し離れた位置に移動していた真田の布団へと向かった。 「真田。真田、起きろって」  小声で言いながら、彼の肩を揺さぶる。彼は小さく呻きながら寝返りを打った。  その小さな子どものような仕草を微笑ましく見下ろし、ふと俺は自分の中に気付いてはいけない邪念が芽生えていることに気付いた。  このまま、暗闇の中で真田を襲ってしまいたい。  彼に恋い焦がれ続けてから四年間、ずっと見て見ぬふりをしていた欲望が胸の奥からわき上がる。  今なら犯せる。話し合っても分かり合えないかもしれないなら、いっそ体だけでも。  嫌だ。そんなことを考えるべきじゃない。俺にとっての真田はそういうものじゃない。そんな欲は、そもそも抱くべきじゃないんだ。  自分を強く戒め、俺は、気の良いただの親友の声色で真田の耳元で囁く。 「起きないとぉ……王子様がお目覚めのキスしちゃうぞっ♡」 「はぁっ……!?」  真田は瞬時に跳ね起き、目の前の俺の存在に気がつく。そこまで嫌がられるというのもショックだったが、俺は本心を隠すように何とか笑顔を作った。 「笹木……?」 「えーと、何ていうかその……」  言うべきことは分かっているのに気まずさが邪魔をして、自然に言葉を発することができない。  俺は言い方にしばらく悩んだ後――あえてふざけた表情を作って、気取った感じに切り出した。 「なぁ、真田! ……こんなつまんない旅行、俺と一緒に抜け出さね?」

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