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友愛デイドリーム(後編)05
俺の誘いに、真田は特に理由を尋ねることもなく同意して、俺たちは夜の町に繰り出した。
目的地の目星は一応ある。この町の片隅にある放棄された廃墟。そこでなら、誰にも邪魔されずに二人で話せると思った。
だけど、本当に? 本当にそれだけが理由なのか?
廃墟の敷地へと足を踏み入れ、自然と身を寄せ合って歩きながら俺は自問自答する。
こんな人気の無いところに好きな相手を誘い込んで、『間違い』が起きればいいと思っているんじゃないか? そういう下心がないと俺は、俺に自信を持って言えるのか?
やましいことを考えているのがバレたのか、不意に真田は俺から一歩距離を取った。その意図が読めないのに、再び寄り添うことはできなくて、俺は素直に彼と一歩距離を取った位置を歩き始める。
真田は今、何を考えているんだろうか。何年も前に稼働を止めたエスカレーターを徒歩で登りながら、ぼんやりと考える。
きっとこいつにとっての俺は、ただの友人だ。親友にしては距離が近すぎるということに、きっと気付いていない。彼は今までの人生で俺ほど近しい友ができたことはないようだから。
思い上がるな。真田は俺と同じ感情を抱いているなんて、絶対にあり得ない。
だけど、本当にただの親友だと思ってくれているのなら、この後、俺が告げる本心を受け入れてくれる可能性はあるんだろうか。
正直、絶望的だ。俺は今日、失恋するために彼を呼び出した。そう思ってしまった方が楽になれるのに。もしかしたらという奇跡に縋りたい感情が抑えきれない。
不意に、真田が俺との距離を再び詰めてきた。
「えっ、真田……」
「何でもないよ。ほら、行くぞ」
その言葉には明確に俺への気遣いの意図が込められていて、俺はそんなに自分が酷い顔をしていたのかと、己が嫌になる。
だけどここで離れるのもおかしな話なので、俺は再び真田と寄り添って歩き始めた。
沈黙の中、天窓からやけに明るい星の光が降り注ぐ道のり。その先に俺たちが見つけたのは――座り込んだ姿勢で事切れている、見知らぬ男の死体だった。
「死んでるの……?」
「ああ、そうみたいだな」
真田は平静を装っていたが、俺同様にガタガタと震えていた。当然だ。人の死体なんて病院と葬式以外で目にしたことはない。しかも、こんな安らかとは思えない姿で無残に晒されている死体なんて。
「見つけないで、か」
「え?」
足元を見ていた真田がぽつりと言う。そちらを確認すると、死体の横には震えた筆跡で残された遺書らしきものがあった。
『私を、見つけないで』
すぐには意図の読み取れないその書き残しに、俺たちは小声で考察をしながらも、一歩一歩、死体から距離を取る。
しかし後ろを見ずに歩いていたせいで、俺たちは些細な段差につまずいて、一緒になって床に倒れ込んでしまった。
「あっ……」
意図せず真田を押し倒す姿勢となり、頭の中にカッと熱が集まる。股間が場違いにも反応しそうになったのは、ギリギリで我慢した。
「どうかしたのか?」
「い、いや、結構きわどい姿勢になったなって思って、はは……」
「きわどいも何も、さっきまでビビって抱き合いながら歩いてただろう」
「それはそうだけど! ……まあ、それもそうか、そうだよな……」
誤魔化すように笑ったが、真田は冷静に正論で返してきた。やっぱり自分は意識されていないのだと思い知り、諦めの気持ちが胸に満ちる。
「真田」
「ああ」
「……どうする?」
「どうするって……あの死体のことだよな?」
「うん……」
ぽつりぽつりと話し合うも、なかなか結論は出ない。俺は深刻な顔で会話しながら、内心では一つの計画を思い浮かべていた。
彼に気持ちを伝えることは諦めよう。どうせ断られるぐらいなら、これからも親友同士でいられる方法を模索しよう。
『友人』たちの邪魔が入っても、卒業して遠く離れても、彼が俺から心まで離れることはできない仕掛けをしよう。たとえばそう――他人には話せない二人きりの秘密だとか。
俺は、遠くに落ちている遺書を見る。
『私を、見つけないで』
ごめんなさい。今から俺はアナタの死を利用します。望み通り、見つからないようにするだけだから、どうか恨まないでください。
そんな弱気な心が生み出した幻への懺悔を終え、俺は真田に向き直った。
「あのさ、真田。……あの死体、俺たちで埋めないか?」
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