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吊られた男(後編)19  従順

「ん……あぁっ……」  己の口から出たとは思えない悩ましい声に、俺は当惑して義兄を見上げる。彼は椅子に座り、正面からこちらを観察していた。  その視線を全身で感じる度に、腹の奥底で切ない感覚が脈打つように主張し、そこに辿り着きたいと脳が手の動きを急かす。 「ぁ、あ……あ、はぁっ……ッ……」  あんなに大きく恐ろしいものに見えた張り型は、見る見るうちに己の中へと飲み込まれていき、内臓を押し上げるような圧迫感がじわりと肌に汗を滲ませる。 「はっ……はぁっ……」 「ほら、あと半分ですよ。頑張って」 「は、はいっ……がんばります……」  張り型によって無理矢理押し広げられた内側は、明確にその刺激に歓喜していた。腹の奥の物足りなさを感じていた部分がゴリゴリと潰され、俺は何かを求めるように舌を突き出して甘い声を発する。 「はへっ、へっ、アッ……あァ……っ」  ゴツンと張り型の先端が行き止まりにぶつかる。張り型の長さはまだ余っていたが、これ以上は無理だと俺は義兄を涙目で見上げた。 「に、義兄さん……ここが、いきどまりでっ……もうっ……」 「いいえ、もっと奥に入るはずですよ」 「え……」 「あなたならできますよ。それとも、俺の期待に応えてくれないのですか?」  ほんの少しの落胆を滲ませた声で言う彼に、激しい罪悪感を抱いて、俺は必死で返事となる言葉を発する。 「ごめんなさいっ……期待に応えてみせますから、どうか見捨てないでっ……!」 「見捨てませんよ。あなたがやれば出来る子だって、俺だけは知っていますからね。さあ、続きをしてください」  彼の言葉に安堵すると同時に、これ以上失望させてはいけないと自然と意識が手元に集中する。張り型の取っ手をゆっくりと動かすと、腹の奥底がぐちぐちと捏ねられる感触がした。 「あっ……は、ぁ…ア………」 「今あなたが何をして快楽を覚えているのか、ハッキリと口で言ってみせてください」 「は、はい……。俺は、張り型の先端でっ……ンっ……、行き止まりをぐちゃぐちゃにして、柔らかくしていますっ………」 「行き止まりをぐちゃぐちゃにすると、どんな感覚がするんです?」 「アッ、ぁ……く、苦しくてっ……もう入らないって思うのに、んっ……頭の奥がビリビリって痺れて、もっと褒められたいって、思っちゃってっ……」 「ええ、ちゃんと俺に伝えられて、良い子ですね」 「ぁ、あっ、へ、ァあ~~~ッ………!」  義兄の一言で全身が歓喜し、ろくに触ったこともないはずの胸の先端がぴんと張り詰める。 「あ……ッ、ん、ァ……ち、乳首もっ……乳首も触りたいっ……」 「ダメです。これは罰なのだから、言われたとおり、ナカだけでイキなさい」 「ひ、はへっ、ひゃいっ……アァ、っん、あっ……!」  張り型を動かすスピードは徐々に速く、その動きも激しくなっていき、繰り返し奥底を刺激する先端は、欲望のままに行き止まりを叩き続ける。 「あぁ、あっ……なん、か……入りそっ、う、あぁぁ、~~っ……!!」  力任せに抉り込んだ張り型の先端が、行き止まりのはずだったところを貫き、その向こう側へとずぶずぶと入っていく。  腹を食い破られているような苦痛をも快楽と認識し、俺は断続的に絶頂しながら、張り型を取っ手を残して全て腹の中に収めきった。 「っ……、はぁっ、ハッ……かはっ……、は、入り、ましたぁ……」 「ええ、しっかり見ていましたよ。偉いですね」 「え、へへ……、へへ……」  義兄に頭を撫でられるだけで多幸感が体を支配し、今すぐにでもこの人に殺されたいとすら願ってしまう。 「ほら、鏡で自分の姿を見てみなさい。到底、名家の男とは思えない痴態ですね」 「ぁ……」  納屋の隅に置かれていた古ぼけた姿見に、自分の全身が映し出される。  後ろの穴に長大なものを咥え込み、淫欲に濡れただらしない笑みで歓喜する己は、義兄の言う通り名家の一員には見えなかった。だけど、今の自分こそが本当の自分なのだと頭のどこかは主張していて、俺は自分の浅ましい姿を恍惚とした目で眺める。 「でも……想いを寄せたあなたがこんな淫売だと知ったら、死んだ俺の妻はさぞかし絶望するでしょうね」 「あ……ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ……あっ、ァア、ああっ……!」  一気に血の気が引き、反射的に締まった腹の内側のせいで、張り型がちょうど良いところに食い込んで喘ぎ声が漏れる。半ばパニックのようになった俺の髪を、義兄は優しく撫でた。 「こら。彼女に許しを請うなんてしちゃいけないって、もう忘れたんですか?」 「っ……!」 「でもいいですよ。今のは少し意地悪でしたね。場所を変えましょうか。ちゃんと罰を受けられたご褒美をあげますから」

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