60 / 61

到着予定時刻まで、あと(後編)05  錯乱と強行

 泥の中のような不快で湿っぽい混濁から意識が浮上した時、最初に感じたのは頭の痛みだった。  鈍く脈打つ痛みは後頭部を中心に広がっており、そこを殴られて昏倒したのだと朧気に理解する。  後ろから殴られた。誰に? 決まっている。あの場には僕と彼しかいなかった。僕の軽口で追い詰められた彼は、目的地に到着したのとほぼ同時に、隙を見せた僕を背後から殴り倒したのだ。 「う……」  口からうめき声が出る。誰かが僕の体を探っている。下半身が少し涼しい。服を脱がされているのかもしれない。  きっと、彼は僕のことも埋めるつもりなのだろう。服を脱がせて、車に積んであるノコギリで体を切って、肉片を山に撒くつもりなんだ。  ごめんなさい。無性にそう言いたかった。  自分の悪意ある軽口のせいでこんなことになった。彼に二人も人を殺させることになってしまった。僕がバカなことを言わなければ、彼が背負う罪はあの最低の女を殺したということだけで済んだのに。  ごめんなさい。喉を震わせてその一言を口にしようとする。不思議と命は惜しくなかった。自分が悪いのだということはハッキリ分かっていた。  でも、ただ謝罪はしたかった。死体を解体するという行為の共犯にしてしまったこと。もっと上手くあの女から助けられたはずなのに、力が及ばなかったこと。全部に謝りたかった。  それを彼が聞くことで、彼がどう思うのかはあまり考えたくない。もし勘違いで僕を殺したことに気付いたら、きっと彼は苦しむことになる。そう分かっていても、彼に許されたいと願うのをやめられない。 「うぅ……たけうち、さん……」  掠れた喉が彼の名前を呼ぶ。まだ開かない瞼の向こうで、誰かが身動きをするのを感じる。  彼は草を踏んで僕の足元へと向かっていった。そして数秒後、僕に与えられたのは――露出した性器を優しく包み込む刺激だった。 「う……ぁ……?」  ほんのりと温かい感触に性器が握られている。反射的に困惑の声が口から漏れ、正体不明の快楽から逃げようと僕は僅かに身をよじる。  彼は、そんな僕の動きを封じるように下半身に跨がると、弛緩している僕の陰茎をゆっくりと手でさすり始めた。 「うぁ……ぁっ……な、にぃ……?」  しばらく自慰もしていなかった性器はあっさりと芯を持ち、混乱の中、僕は薄く目を開く。 「たけうち、さ……? ああっ……!?」  顔を持ち上げて己の下腹部で何が行われているか把握しようとするも、その直後に陰茎全体を包み込んだ生ぬるく湿った感触に思わず腰が跳ねてしまう。  フェラをされている。武内さんに。どうして?  初めてとは思えない動きで彼は顔を上下させ、舌を絡めてくる。口から甘い声を自然と漏らしながら再び顔を持ち上げると、泣きそうな顔で上目遣いにこちらを伺ってくる彼と目が合った。  やりたくてやってるわけじゃないんだ。きっと誤解のせいだ。今すぐ止めさせないと。 「あっ、ッ……武内さんっ、こんなことっ、は……!」  腕を伸ばして彼を押し戻そうとして、その時初めて自分の腕が頭の上で束ねられて拘束されていることに気付く。 「はっ、アッ……ン、やめっ……!」  息も絶え絶えに鳴りながら、与えられる快楽にただ体を跳ねさせる。何度も言葉で止めさせようとしたが、押し寄せる快楽のせいで思考がうまくまとまらず、艶めかしい声だけが己の喉から発せられる。  じゅぽじゅぽと音を立てて僕のモノを刺激していた彼は、舌で大きく舐め上げながら、ようやく口の中から性器を吐き出した。  やっと終わってくれたのかという安堵と、決定的な絶頂を前に行為を止められてしまったことへの苦しさで、ぐったりと体を弛緩させる。 「武内、さんっ……話を聞いて……んぅっ……!?」  彼は、仰向けで拘束されて無防備に体を晒している僕の腰の上へと跨がり、後ろの穴の入口にぴたりと硬く持ち上がった先端を当てた。 「ち、違うんです、武内さんっ……話をっ……」 「大丈夫ですよ、俺、こういうの慣れてるので……」  諦めたような顔で青ざめてガタガタと震えながら、指でこじ開けた入口で僕のモノをゆっくりと飲み込んでいく。 「ぁ……は、ァ……♡」  興奮と苦しさで汗ばんだ体を反らせながら彼は腰を落としていき、硬くなった僕の性器は完全に彼の内側へと覆い隠された。 「入り、ました、ぁ……♡」

ともだちにシェアしよう!