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到着予定時刻まで、あと(後編)06  告白

 誰にも命令されていないのに虚空に向かって報告する彼を見て、泣きたいような怒りたいような気分になる。  慣れていると言っていた通り、恋人だったあの女の手によって武内の体は開発されつくしているのだろう。  何も事情を知らない頃は、あられもない姿を想像しながらオナニーに使っていた対象が自分の上に乗って恍惚とした表情をしている。  彼を抱く想像をしたことがないわけじゃない。もし彼の体を好きにできたら。あの女から救い出した彼が僕と結ばれたら。そんな都合の良い妄想が、最悪の形で目の前で実現している。 「動きます、ねっ……ァ、んっ♡ あ、はぁっ、ァあっ♡♡」 「っ……!」  彼は僕の胸に手を突き、打ち付けるように激しく腰を上下させる。僕は気持ちよさから声が出てしまいそうになるのを、必死で堪えていた。 「アッ、あぁつ♡ ん、アッ♡ いいっ♡ きもちいい、です、かぁ?♡♡」 「武内さんっ、やめてください……もう、こんなことしなくて、いいんですっ……! 武内さんっ……」 「大丈夫ですっ♡ 俺、今度は上手くやるからっ♡ 肉便器になりますっ♡ 性奴隷にしてくださいっ♡ でないと、俺、俺はっ……!♡」 「武内さん……!」 「あっ、あぁあっ♡ あぁ、ン、あ”っ♡ イク、イクイクッ♡ イキますっ……!♡♡♡」 「ッ、この、た……武内さん、動くのをやめろ!」  わざと声のトーンを低くして、怒りが込められているように聞こえる声色で彼を呼ぶ。すると彼はびくんと体を震わせると、腹の中にモノを入れたまま、腰を抜かしたように俺の上にへたりこんだ。 「あ……ご、ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさいっ! 肉便器なのに感じてごめんなさい! 気持ちよくなってごめんなさいっ!」 「武内さん」 「うぇ、ぐすっ……ごめんなさいっ……もういたいのやだ……全部我慢するから、ちゃんと淫乱になるからっ……!」 「武内さん、黙ってください」 「ひっ……!」  悲鳴を上げそうになった口を自分の手でぱしんと押さえ、武内は黙り込む。その視線は忙しなく揺れ、口を押さえている手は見ていて哀れなほどに震えている。  どこからどう見ても平常心を失っている彼に、まずは落ち着いてもらわなければと、僕は思考を巡らせながら言葉を選ぶ。 「まず、僕はあなたに酷いことをするつもりはありません。肉便器にするつもりも性奴隷にする気もありません」 「っ……」  彼は口を押さえたまま息を呑んで、顔色をさらに青ざめさせた。体と引き換えに安全を手に入れようとしているのに、その前提を崩されたのだから当然の反応だ。  絶望によって彼が再び錯乱状態に陥るよりも前に、僕は言葉を続ける。 「そもそも僕は、あなたを埋めるつもりはありません。僕があなたを助けたのは、単純にあなたを助けたいと思ったからなんです」 「え……」  小さく困惑の声を上げて、彼は不安そうな目でこちらを見下ろす。 「で、でも俺たち友達でもないのに……俺の事情もそれほど知らないあなたが、どうして俺のことを……?」 「事情は分かってるんです。彼女がどうやってあなたを支配したのかも、どんな人間なのかも、どんな奴らが取り巻きをしていて、どんな人間関係を築いているのかも、全部調べたから」 「全部って……え……?」  戸惑いは、別種の未知への恐怖へと変わり、彼は警戒の目を控えめに僕に向けた。  当然と言えば当然の反応に、こちらの方がくじけてしまいそうになる。  真実を告げたら彼は僕を軽蔑してくるかもしれない。ドン引きは絶対するだろうし、怖がられても仕方がない。  我がことながら、ただの隣人が善意でやるような規模のことではないとは思っている。しかも死体を解体して埋めると言い出すなんて意味不明だ。それに、こんな風に裏から手を回して人を動かすなんてやり方、恋人だった彼女がよく使っていた手だろう。彼女と同類だったのかと蔑まれるかもしれない。  だけど勘違いのせいで彼が自分を犠牲にしようとするのなら、己の気持ち悪い部分を共有した方がずっといい。そのせいで彼に嫌われても、自分はそれでいい。 「武内さん、僕は、」  一度息を吸って吐き、後ろめたい思いから目を背けずはっきりと言葉にする。 「僕は、あなたの恋人を罠にかけようとしたんです」

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