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到着予定時刻まで、あと(後編)08(終) 終わりまであと
突然降って湧いた都合の良すぎる展開に、僕の思考は完全にショートして、手を握りこまれた姿勢のまま石のように固まってしまう。そんな僕を、彼は不安そうに覗き込んできた。
「あの……お隣さん?」
ハッと正気に戻り、無意識のうちに止めていた呼吸を再開させる。だけど思考はまだ混乱していて、僕は疑いの視線を彼に向けてしまった。
「ほ、本気なんですか? 無理してるとか、僕を説得するための嘘なら、どうか思い直してほしいんですが……。僕はあなたの体を好きにしなくても、あなたを助けますし、本当に……自分を大切にしてほしいって心から思ってるんです」
嘘偽りの無い本音を伝える。すると彼は迷うように視線を泳がせた後、僕の手をぎゅっと握りながら顔を近づけて、ほとんどぶつかるように僕にキスをした。
不器用なその動きとは裏腹に、柔らかい感触が唇に触れて、すぐに離れていく。目を見開いて硬直する僕に、彼は照れくさそうに目を泳がせながら言う。
「し、死んだ恋人にもこうやって自分からキスなんてしたことないです。ハジメテを今捧げたので……これで信じてもらえませんか?」
こちらの手をしっかりと握り込みながら、羞恥で潤んだ目で彼は僕の様子を窺ってくる。ほんの十数分前の淫らな姿と同一人物とは思えなかったが、こちらの姿の方が普段の彼と地続きのように見えた。
本当はこんなことをしている場合じゃない。一刻も早く死体を埋めて、ここから立ち去らないといけない。だけど今、彼への返事を保留して、また彼が思い詰めてしまったら今度こそ取り返しがつかないことになるかもしれない。
仕方ないんだ。必要だから想いに応えるだけだ。彼のことを手に入れたいと思う自分が本当であるのは事実だけれど、これは彼のことを考えての行動でもあるんだ。
彼の両肩に手を添え、そっと地面へと押し倒す。
「ほ、本当にいいんですね?」
「うん♡ 来て♡ 早くっ♡♡」
「その……入りやすいよう、ほぐすのとかは……」
「要らないっ♡ あの女に開発されてもうガバガバだから♡ 俺のガバガバオスマンコ、ぐちゃぐちゃにして♡♡」
自分から足を開き、入れやすいよう腰を持ち上げる彼の着衣を剥ぎ取り、再び硬さを取り戻した己のモノを入口へと当てる。
「セックスしようっていうのに、他の奴の名前出さないでくださいよっ……!」
「あ、ご、ごめんなさい、ごめんなさ……あぁァーーーっ、アッ、アアー……♡♡♡」
衝動のままに腰を押し込むと、受け入れる準備がすっかり整っていた穴はズブズブと己のモノを飲み込んでいった。
いくら道具で開発していたといっても、内側の吸い付くようなこの感触と熱を堪能しているのは、自分がきっと初めてだ。そう思うと、彼を開発した女への苛立ちも多少は落ち着いた。
「あ……入ってるぅ……♡♡ すごい、しあわせ……♡ なんでぇ……?♡♡」
挿入されただけで甘くイッたのか、彼のナカは複雑にうねって、まるであらゆる角度から入れられているものの形を確かめているようだった。
上に乗って腰を振っていた時よりも、明らかに蕩けて幸せそうな顔をしている彼の顔に軽くキスを落とし、奥を捏ねるようにゆっくりと腰を動かす。
「あまり、嬉しすぎること言わないでくださいよっ……優しくしたいのに、自制がきかなくなりそうですっ……」
「アッ、アアッ♡ 我慢しなくていいっ♡♡ 激しくしてっ♡♡ 俺のこと滅茶苦茶に壊しちゃって♡♡♡」
「そう言われると、なおさら優しくしたくなります」
「ンッ、あぁ♡♡ そんなっ♡ いじわるっ♡♡」
「ははっ、だから煽らないでくださいって」
ぐちゅぐちゅと隙間から音を立てながら、焦れったいほどゆっくり彼の内側に押し入っては引くのを繰り返す。
「あ…ンッ♡ あっ……あ♡♡ そんな、ゆっくりぃ……♡ きもちいいの、ゆっくり来て……頭、変になるぅ……♡♡」
「変になっていいですよ。あの女の使った道具なんて忘れて、俺の形をしっかり覚えてください」
「わ、分かりましたぁ……あっ♡ おぼえるっ♡ お隣さんのちんちんだけ、おぼえるぅ……♡♡」
「あはは、その言い方だと人妻もののAVみたいですね」
「へ? あっあっ、あっ♡♡♡」
少しだけ動くスピードを速くして、またゆっくりに戻して、速くするのを繰り返す。不規則に訪れる刺激に翻弄されて、彼は身もだえをしながら喘ぎ続けた。
「あっ、アァッ、あっあっあっ♡♡ 急に動かなっ……♡♡ アーッ、あ、あー……っ♡♡」
「気持ちいいですか? 満足できそうです?」
握り合った彼の右手をそっと持ち上げ、腰を動かしながら手の甲にキスをする。たったそれだけで彼の肌にぞわぞわと快楽の震えが走り、内側もきゅんきゅんと脈動する。
「き、きもちいいっ♡ うれしいっ♡ だいすき、だいすきですっ♡♡ ずっとこうしていたいっ♡♡♡」
「ずっとは無理ですかね。でも……これからずっと一緒に生きて、何度でもセックスしましょうね」
「する♡♡ いっぱいする♡♡ お隣さん、すきすき♡♡ 愛してる♡ 大好き、大好きだからっ……アァ、あ~~~~っ…………♡♡♡♡♡」
ゆっくりと押し寄せる快楽が臨界点を突破したのか、激しく責められてもいないのに、全身をガクガクと震わせながら彼は絶頂する。
きつく内側を締め付けられ、我慢できずにこちらも先端から欲を吐き出してしまう。ナカに塗り込めるように、出した後もゆっくり腰を動かすと、彼は地面に力なく体を落としたまま、幸せそうな顔でぴくぴくと痙攣した。
「あ……あァ……きもちいい……だいすきぃ…………♡」
「……武内さん、聞こえてますか?」
「は、ぇ……?」
意味をなさない声を出しながら、彼は彷徨わせていた視線を僕へと向ける。僕はそんな彼を正面から見下ろした。
「今更ですが、自己紹介させてください。これからどんな関係になるとしても、あなたに名前を呼ばれるぐらい、一緒にいたいと思うから」
愛の告白をするような真剣さで、僕は彼に告げる。彼はふわふわとした表情のまま、こちらに腕を伸ばしてきた。
それに導かれるように、僕は彼の耳元へと唇を寄せる。
「僕の名前は、―――っていうんです」
どこにでもいそうな自分の名を彼に伝える。彼は口の中でそれを繰り返し、それから僕の首へと抱きついてきた。僕も目を閉じ、それに応えて彼を抱きしめ返す。
「……武内さん、あなたを絶対守ります」
破滅までの日々を彼と共有したい。互いに名前を知っている知人以上になって、共に生きていきたい。
いつか来る終着点の時が近付いてくるのを確かに感じながら、僕はただ彼の体温を感じていた。
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