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前向きダーリン×勘違いハニー(前編)01 完全なる人違い
ハニーを自称する男が、泣きながら女の死体を埋めている。俺は、縄と手錠でガチガチに縛られて、それを見せつけられていた。
「ぐすっ……ダーリンが悪いんだからねっ……! 俺というハニーがいながら、こんな女と付き合ったりして……自業自得なんだから……!」
涙ながらにブツブツと呟く彼は、映像やフィクションの中でしか見たことがないほどの美形だった。目鼻立ちはおおよそ人類として理想の位置に理想の形で配置されており、嫉妬と悲しみで歪んでいる表情を見るだけで、十人中十人が駆け寄って慰めてあげたいと思うであろう麗人だ。
そんな、凡庸な俺の人生と接点があるはずもない男は、俺の行動に怒って女を殺し、それを目の前で埋めている。
問題なのは、俺は責められているその内容に心当たりがないということだ。何なら、麗人と死んだ女のどちらとも面識は無い。完全な初対面だ。
多分、何かの誤解があるのだろうが、口にガムネープが貼られているのでそれを指摘することもできない。目が覚めた直後は唸ってそれを主張しようともしたが、話を聞いてくれる様子もなかったのでだんだん諦めがついてきた。
これから俺はどうなるのだろう。勘違いを解くことができないまま殺される? 仮に勘違いを解くことができたとしても、殺しと死体遺棄を目撃した自分に生き残る道はないのでは?
「ダーリンのハニーは俺だけなのにっ……! 俺だけなのにぃっ……!」
麗人は悔しそうに顔を歪めながら、穴の中の女に土をかけている。そこまで憎んでいる相手だというのに、死体損壊はしないあたり、変なところで常識的な人なのかもしれない。
というか、本当に美人だな。これから殺されるとしても最後に見るのが彼の顔になるのはラッキーなのかもしれない。どうせ死ぬなら、綺麗なものを見て、良い気分で死にたいし。うん。
持ち前のポジティブさで現実逃避をしながらも、俺は、汗を流して一心不乱に作業をする彼にぼんやり見蕩れ続ける。
そのぼーっとした視線に気付いたのか、麗人はこちらに振り向くとフラフラと歩み寄ってきた。
「……ダーリン、何か言いたいことでもあるの? あの女と最後のお別れがしたいならさせたげるけど。穴の中に降りて、素手で必死に掘り返せば、顔ぐらいは見られるかもよ?」
その後の態度次第では、お前ごと上から穴を埋めるけど。
暗い視線で暗にそう語りながら、麗人は俺の口のガムテープを剥がす。
俺は久々に満足のいく呼吸が出来ることに感謝しながら深呼吸をした後、彼を見上げて言った。
「あのー……、多分、人違いなんすけど」
「えっ」
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