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前向きダーリン×勘違いハニー(後編)01 匿名恋愛
惚れやすい性格である自覚はある。ろくな惚れ方をしない自覚もある。
俺は美形だ。幼い頃から整った見た目で大抵のことはなんとかしてきたし、周囲も仕方ないなあと笑ってそれを受け入れてきた。
多分そのせいで、俺の人との関わり方は歪んだ形で育まれた。にこりと微笑めば、周囲が何でも叶えてくれる。とても便利ではあったが、虚しさもあった。
足りない愛情を求めるように男にも女にも手を出した。最初は普通の恋人関係を築けたが、いつも徐々にそれは歪んでいった。
支配しようとしてくる人が一番多い。病んでしまい、逃げるように去っていく人が次に多い。とにかく俺が惚れた人間は皆、不幸になる。俺は、あげまんならぬさげまんというやつなのだ。
自分の整った見た目が原因でそうなっているのだと最初は思った。だから、匿名で顔も見えないVRSNSで出会いを求めた。
でもどうしてなのかSNSで出会った人間も、俺のせいで次々に不幸になった。違うのは、俺の側も幸せとは言いがたい恋愛をするようになったことだ。
「ダーリン、遅いなぁ……」
VR上で仮想の結婚をした『ダーリン』は、三日間、ログインしていなかった。彼にはゲーム内アイテムもリアルマネーも貢いでいた。その金額で愛を表していた。
通話での語らいやモーションでの交流でしか触れあえない彼に、愛を示すにはそれぐらいしか方法がなかった。
「……他のSNS、チェックしよ」
このVRSNS以外にある『ダーリン』のアカウントはいくつも把握していた。リアルマネーを貢いだ時の個人情報を頼りに、特定は済んでいた。
他のSNSで『ダーリン』は他の女によく絡んでいた。本当はそれを彼に対して指摘したかったが、そちらのアカウントは知らないということになっているので糾弾もできなかった。
「また他の女に言い寄ってる……!」
麗しい顔を醜く歪めて、彼の返信欄を睨み付ける。
愛してるのは俺だけだって言ったのに。それ以外に興味はないって言ったのに。ダーリンのハニーは俺だけのはずなのに。
嫉妬を込めてアカウントの投稿を見るも、その向こう側にいる男に通じるわけもない。
「はぁ……もういいや、ログアウトしよ」
諦めのため息をついて、VRからログアウトしようとする。しかしその時、『ダーリン』のアバターが目の前に現れた。
「ダーリン!」
ボイスチャットをオンにして、アバターで彼へと駆け寄っていく。だがそのアバターから聞こえてきたのは、聞き覚えのない女の声だった。
「うわっ、ダーリンとかキモ! しかも男じゃん!」
「え?」
「変なゲームでこそこそ遊んでると思ったら、アンタみたいなキモ男と恋人ごっこしてたってわけ? ホント最悪! ありえないんだけど!」
「え? えっと……」
何が起きているのか分からず、俺は困惑し続ける。するとアバターの向こう側にいる女は、勝ち誇った声で宣告してきた。
「残念でした! アンタのダーリンは私の彼氏なの! 結婚の約束もしてるし、今度同棲も始めるのよ! 悪いけどうちの彼氏がここにログインすることはもうないから。じゃあね~!」
言いたいことだけ言うと、彼女はさっさとVR上からログアウトしてしまった。俺はしばらく呆然とした後、ボロボロと涙をこぼし始める。
最悪だ。俺は浮気相手だったんだ。二番手のスペアの金づるだったんだ。
顔が知られた状態でこんな扱いを受けたことはなかった。顔のせいでうまく恋愛ができないと思って、VR上で恋人を作ったのに、顔さえ見せていればこんなことにはならなかったのではと思ってしまう。
「ダーリン……ダーリンっ……!」
俺はしばらく泣き暮らし、食事もろくに喉を通らないまま数日が過ぎて、一つの結論に至った。
一度、リアルで『ダーリン』に会ってみよう。そしたら『ダーリン』はあの女じゃなくて、俺を選んでくれるかもしれない。
結局、嫌悪している自分の美しさに頼ることになった現状は、いっそ笑えてくるほど滑稽だったが、もうなりふり構っては居られない。
俺は特定していた彼の個人情報を元にリア凸をして――その先で、『ダーリン』の彼女を殺してしまった。
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