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前向きダーリン×勘違いハニー(後編)04 望みを言って
「お兄さん、笑うと可愛いっすねー!」
「はあ?」
「ずっと笑ってた方がいいっすよ! 笑うといいことあるし!」
「……何それ。変な理屈言ってる暇があったら、穴埋めるのに集中してくれない?」
「はいっす!」
正面からの好意を伝えるだけ伝えると、男は言われた通りに穴を埋める作業に戻ってしまった。
「……何なのさ」
理解できない。意味不明だ。こんな極限状態にあるのに、にこにこ笑って穴を埋めて、100%の本心でこちらの笑顔を褒めてくる。こんな人間会ったことないし、下心なしに褒められるのだって初めてだ。
男も女も、俺に集まってくる奴は、俺という存在を欲しがった。手に入れようと独占欲を見せてくる奴もいたし、手に入らないと悟って勝手に追い詰められて死ぬ奴もいた。
でもこいつのようにただ俺の幸せを願う奴なんて一人もいなかった。どいつもこいつも最終的には自分が得をすることを望んでいた。だったら、なんでこいつは。
「ねぇ、お前」
「はい!」
「お前、死体を埋め終わったら俺をどうするつもり? 変なことばっかり言ってるけど、どうせお前にも下心はあるんでしょ?」
警戒も露わに彼を睨み付ける。そのはずだと思う心と、どうか否定してくれと思う心が両方あった。見返りを何も求めずに、ただこちらの幸せを願ってくる。そんな都合の良い存在がこの世にいるわけがない。そう、分かっているのに。
夢見がちな思考の息の根を止めてくれ。そんなものはありえないのだと、下世話な欲望を口に出して、俺を幻滅させてくれ。
そんな歪んだ願いを込めた視線で彼を睨み付けると、彼はへらりと何も考えていなさそうな笑みを浮かべた。
「お兄さんをどうするって言われても困るっす! どうこうするっていうなら、お兄さんが俺をどうこうするって側のはずっすよ!」
「うるさいなぁ、正論言わないでよ。こっちは君の本心を聞いてるの。君はどんなご褒美のために、こんなことに協力してるっていうのさ?」
「ご褒美? ご褒美もらえるんすか? やったー!」
「……あーもう、話が通じないな。それでいいよ。で? 君はどんなご褒美が欲しいの?」
「ええー、そうだなぁー……」
まるで遠足前日の子どものようなウキウキとした表情で彼は考え込み、たっぷり時間をかけてから返事をした。
「じ、じゃあ……すごく思い上がったご褒美でもいいっすか?」
「いいよ。言うだけならね」
「はい、言うだけ言うっす! この死体埋め終わったら、一緒に写真撮ってほしいっす!」
「……は?」
「お兄さんみたいな綺麗な人に合うなんて、この先の人生で二度とないかもしれないし、記念が欲しいなって思って! あ、でも写真が嫌いとかなら全然無理しなくていいんで!」
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