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骨の名残(後編)02 密やかなる侵蝕

「冬元さぁ、オナニーって知ってる?」 「えっ……!?」  耳を疑う話題を囁いてきた柳木に、僕は信じられない目を向ける。 「き、急にどうしたの? オナニーなんて……」 「あれ、その反応ってことはオナニーのこと知ってたのか? ちぇっ、やっぱり俺遅れてたんだなー」  拗ねたようにそう言う彼に、僕はどんな反応をすればいいのか分からず目を泳がせる。  僕がオナニーという単語を知っていたのは、インターネット経由の知識だった。何のために何をするのかは知っていたが、自分はまだ精通していないので別世界の話だと思っていた。  それなのに同い年の柳木からその単語が出てきて、僕は大いに狼狽した。 「え、えっと……オナニーがどうかしたの?」 「最近、初めてやったんだ! 気持ちよかったからお前にも教えてやろうと思ったんだけど……お前に先を越されてたとかショックだなー」 「えっ……僕は知ってるだけでやったことはないけど」 「そうなのか? じゃあ俺がやり方を教えてやろうか!?」 「へえっ……!?」  経験はなくとも、それは人と共有するのが恥ずかしい行為だという知識はあり、慌てて彼の提案を拒絶する。 「そ、それはちょっと……恥ずかしいから……」 「へー、お前は恥ずかしがり屋なんだな! まあいいや、教わりたくなったらいつでも言ってくれよ!」 「あ、あはは……」  無知ゆえの堂々とした宣言に、苦笑いで返すことができなかった。  どうして急にそんなことを言い出したのか。ここで追及していれば僕は、彼のことを守れたのかもしれない。だけど現実はそうはならず、この一件の真実が露見したのは、それからさらに一年が過ぎた頃だった。 「冬元さぁ、俺のちんちん変なのかな?」 「へっ!?」  彼の家で一緒にゲームをしていると、彼は突然そんなことを言い出した。この一年でさらに性的な知識を身につけた僕だったが、精通はしていなかったので彼と性的な話をすることは滅多にない。  そういう話をしても、僕は話についていくことができずに、すぐに話題が変わってしまっている。そんな状態で話を振られた僕は、いつも通り曖昧な返事をすることしかできなかった。 「変っていうのはちょっと分からないかな……。僕、まだ精通してないし……」 「そうなのか? 遅れてるなー。俺が精通できるように手伝ってやろうか?」  この一年で『精通』という単語を知った彼は、心配そうにそう提案してくる。僕は、彼の提案を脳内で思い浮かべ、その想像に酷く興奮した。  柳木の、無知なところがある手が僕の性器に触れて、初めての射精を促すために卑猥に動く。僕のために奉仕をする彼の姿は、彼への征服欲を理想的な形で実現できるものだった。  提案を受け入れたい。だけどもし自分がうまくできなかったら、恥ずかしい思いをするんじゃないのか。情けなく射精できない僕の性器を見て、彼が失笑でもしたらきっと立ち直れない。 「ううん、僕はいいかな……。でもどうして自分のが変かもって思ったの?」 「んー、実は義兄さんが俺のオナニーを手伝ってくれてるんだけどさー」 「……は?」

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