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骨の名残(後編)03 暴露

 何気ない口調で告白されたその言葉を、僕はすぐに理解することができなかった。理解したくなかった。  義兄がオナニーを手伝ってくれている? 性の知識が少ない彼が、僕にそういう話をごくまれに振ってくることに対しての違和感はあった。だけどまさかその裏側に義兄がいただなんて。大人の義兄が、弟である柳木を言いくるめて一緒にオナニーをしていた?  吐き気がするほどの嫌悪感を覚えた。無知な彼を騙して、性的な知識を教え込んでいる。周囲が何も言っていないということは、きっと口外しないように言い聞かせているのだろう。  卑劣で、下品で、人間とは思えないほどの鬼畜の所業だ。今すぐ彼を奴から助け出さないと。騙されているのだと指摘して、それで―― 「柳木くん、あのっ……!」  話を切り出そうとした僕の声は、喉の辺りで引っかかって止まってしまった。  今、これを指摘したら、柳木は傷つくんじゃないのか。彼には真実を告げずに、卑劣な義兄に野蛮な行為を止めさせた方がいいんじゃないのか。 「冬元、どうかしたのか?」 「……ううん、なんでもないよ」  引きつった笑顔で誤魔化す。とにかく義兄に接触しよう。二人きりで悪事を指摘して、バラされたくないのならもう彼に近付かないよう要求しないと。そうすれば彼を助け出すことができる。後からやってきて僕から彼を奪おうとしているあの男を、ようやく排除できるんだ。  僕は、彼の元に義兄が訪ねてくる日を待ち始めた。だけど何故か義兄がやってくるタイミングは、僕がいないときばかりで、僕はなかなか義兄を断罪できないまま悶々と日々を過ごしていった。  その間にも柳木の性知識は偏っていって、さりげなく話を聞き出そうとするたびに、彼が義兄と行っている淫らな行為の全容を知ることになる。 「くそっ……出せればいいのに、なんでっ……」  彼の痴態を想像しながら、僕は自宅で密かにオナニーに耽った。なのに僕の体はなかなか精通を迎えてくれなくて、虚しさだけが募る毎日が過ぎていく。  さらに一年以上が過ぎ、僕たちは高校生になった。同じ高校に進学した僕たちは、変わらず親友のままだったが、柳木と義兄の関係も変わらず、僕も精通を迎えられないままだった。  そんな折り、僕は塾の帰りに偶然義兄と出くわした。 「あれ、冬元くんじゃないか。習い事の帰りかな?」 「……お兄さん」  僕は明確な敵意を持って、彼の顔を睨み付けた。 「話したいことがあります。お兄さんがこっそり柳木くんにしていることについて」  こちらの言葉に、彼は意外そうに目を見開き、余裕たっぷりに答えた。 「分かったよ。場所を変えようか」 「……はい」  強く警戒をしながら、僕は彼の後ろについていった。義兄が向かったのは、近くにある大きな川の河川敷だった。  すっかり日の暮れた人通りのない道を二人で歩いていく。僕は目的地に着くまでずっと口を閉じていたが、彼は不意に立ち止まってこちらに振り向いてきた。 「それで? 君の望みは何かな?」 「えっ……」  柔らかく笑んだ顔で問いかけられ、僕は目を瞬かせて狼狽する。 「望みがあるから俺に話を持ちかけたんだろう? 俺とあの子の関係を口外しない代わりに、君は何を求めるんだい?」 「な、何って……」  自然と、体が震えていた。答えは分かりきっている。それをそのまま答えれば良いだけなのに、何故か心の奥底が動揺でぐらぐらと揺れている。 「ぼ、僕はただあなたが柳木くんに酷いことをするのを止めないとって、彼を守らないとって、話すつもりで……」 「ふーん、嘘つき」

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