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勇者が死んだ(後編)14  知られたくない在り方

 大好きな人の一部が己の中に挿入っている。内側でぎゅうぎゅうと締め付けるごとに、今にもはち切れそうな脈動が伝わってきて、それだけで軽く絶頂してしまいそうだ。 「あはぁ……♡ 動かし、ますねぇ……♡」 「ま、待て、ヒーラーっ……、ッ〜〜!」  制止の言葉などほとんど耳に入っていなかった。ただ欲望のままに腰を上下させ、接合部からは、ぱちゅぱちゅと淫猥な水音が鳴り続ける。 「ア、あぁ、アッ♡ アレク、さまぁ♡ いい、いいですぅ……っ♡」  自分の奥底に叩きつけるように強引に腰を振っても、アレクの陰茎はまだ少し余っていた。 「ぜんぶ、ぜんぶ入れてっ♡ いっぱい出してっ♡ ああぁっ♡」  ぐりぐりと腰を押し付け、己の一番奥のまだ入ったことがない場所をこじ開けようとする。  この奥に出されたら絶対に気持ちいい。この世の誰よりも幸せになれる。夜魔の本能が耳の奥でそう囁き、僕はじわりと滲む脂汗を無視して、腰を落とし続ける。 「やめろ、ヒーラーっ……!!」 「ぇ……」  ほとんど悲鳴のように呼びかけられ、僕は冷や水を被せられたかのように一気に正気を取り戻した。  目の前に組み敷いているアレクは羞恥と焦りで顔を歪めていて、己の中には彼の怒張が我慢をするようにぴくぴくと震えている。 「あれ……アレクさま、僕……僕、は……」  ほんの数分、正気を失っている間にしてしまったことをじわじわと自覚し、さっと顔から血の気が引く。独りよがりな行為で快楽を得ていたついさっきまでの自分を殺してしまいたかった。 「あ、あぁぁ……ちが、ちがうんです、アレクさまっ……これは――ア、なに、あぁぁっ!♡♡」  言い訳を並べようとする口とは裏腹に、体は欲望に正直に律動を再開する。  嫌だ。こんなはずじゃなかった。こんなはしたない姿、彼に見られたくなかった。  今まで散々慰み者にされてきて、僕からも何度も接触を持って、密やかに彼を求めて、だけど僕の本性がこんな淫奔な生き物だなんて知られたくなかった。  自分から誘っているわけではない、可哀想で歪んだ生き物だと思っていてほしかった。そうでなければきっと、アレクは僕を軽蔑し、嫌悪する。それだけは絶対に嫌なのに。 「ア、んあっ、あっ♡ ご、ごめんなさいっ♡ ごめんなさい、ごめんなさいっ♡ 違うんですっ♡」 「ヒーラーっ……」 「ちがうけど、ちがわなくてっ♡ うれしい♡ 中にいっぱいほしい♡ 出してっ、せーえきたくさん、はやくっ♡♡」  アレクとずっと繋がりたかった。こんな痴態を晒してさえいなければ、いっそ正気を取り戻していなければ、幸せな時間だったはずなのに。  だけど現実は、理性はハッキリと保たれているのに、体だけは本能のまま動いて、欲を貪っている。  恥ずかしい。消えてしまいたい。いっそ殺してくれ。  泣きじゃくりながらそんなことを断続的に喚き、だけど体は止まってくれない。アレクの肉棒がさらに膨れ上がり、絶頂の時を迎えようとしている。 「出してっ♡ たくさん出してっ♡ ほしいっ、いやだ、ちがうっ、ちがっ……アぁぁっ〜〜〜♡♡」  ごつんと最奥を先端が叩いた瞬間、己の中を食い荒らしていた欲望から勢いよく熱が吐き出される。随分と溜め込んでいたのか、長く深いその射精が続くごとに、精液が己の内側に染み込んで、魔力へと変換されるのを感じる。  この上ない幸福感と力に満たされ、僕はのけぞって宙を見ながら、ガクガクと痙攣した。 「あ、ァァ……あ………♡」  長い長い絶頂はやがて終わりを迎え、僕の体はぐったりとアレクの胸元へと倒れ込む。追いついてきた絶望が涙となって、ボロボロと目からこぼれた。 「う、ううっ……ごめんなさい、違うんですっ……こんなはずじゃっ……」

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