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🎼Lesson33《重なる体・後編》◆
頑なに異物を拒んでいた後孔も、仁の入念な準備で指を甘く食むほどにほぐれている。いつの間にか増えた指をぬかるんだ内壁が包み込み、何かを探る指を受け入れて半刻。
既に息絶え絶えな奏の様子を具に窺いながら仁の指が一点を掠めたその瞬間、びくん、と奏の腰が大きく跳ねた。
「んぅッ!?」
「お、ここか……」
「や、ぁっ……! なに、そこっ……やだ、ッや、ンぁッ!?」
「おいで、怖くないようにぎゅーってしような」
腹側の小さな丘を見つけた仁の指が、執拗にそこを撫でる。その度にビリビリと奏の全身に電流のような痺れが駆け巡った。
腹の底から溢れ出る未知の快感に、奏は喉を反らしシーツを蹴って耐えている。けれど、仁の方も必死だ。理性を総動員させて、甘やかすように奏を抱き締める。
「ひッ、あァッ! やだ、やだぁっ……またイく、っ、イッちゃうぅ……!」
「っ……はぁ……可愛い。やなの? 何回イッてもいいよ」
「ッや、だぁ……一緒、ひぅっ……仁と、ッぁ、ン! 一緒が、っ、いい……!」
達したくない、と奏は懸命に頭を横に振る。
仁は奏の汗ばむ額に唇を寄せながら蜜のような声音で促した。けれど、とろけた表情でひとつになりたいと強請る奏に、もはや理性も限界だ。
「っ…くそ! 優しくしてえんだから煽んなって……!」
「いたくてもっ……いい……! も、早く……ッ仁ので、イきたい……」
ぷっつりと仁の中で何かが焼き切れる。
突き上がるような衝動を、なけなしの自制心をもって受け流そうとするものの耐えられそうにない。
「ッあーもう……カッコつけさせてくれよ」
「ふふ……仁は、っ、ン……いつだって、ッはぁ……かっこいいよ」
「……敵わねえなあ」
ふにゃりと笑みを崩す奏に、仁は降参とばかり後孔から指を引き抜いた。
🎼Lesson33《重なる体・後編》◆
後ろからの方が楽だから、と仁は奏を気遣う。けれど、涙で濡れる瞳で「顔が見えないのは嫌だ」と拒む奏に負けて、ありったけのクッションを掻き集めた。
下方へ視線を向ければ既に仁自身は大変なことになっているというのに、自分の欲よりも奏の体を優先してくれる優しさに思わず奏は口元を緩めた。
「なぁに笑ってんの、キスすんぞ」
柔く空気を震わせる奏の笑みに気づいた仁は、照れ隠しにムスリと顔を顰める。
「別に……ただ、俺のこと、ほんとに好きなんだなあって思っただけ」
「はあ? 大好きですけど?」
奏の足の間に体を割り込ませた仁が、ゴムの包装を破いて装着する。
その様子を物珍しそうに眺める奏は、慣れない準備でへろへろだった。
それでも身を委ねてくれる健気さに、仁はキュンと胸を締め付けられながら皮肉混じりの言葉を返す。
「大好きだし大事だし……ていうか大事にしたいのに、悪い子の奏くんは遠慮なく煽ってきやがるんだもんなあ……よいしょっと」
奏の両足を抱えて腰を進め、ぴったりと先端を後孔へ押し当てる。
数度ぬめりを纏わせるように擦り付けると、ちゅう、と薄い膜越しに襞が吸い付く。
思わず仁の腰が震えた。
「っ……ふー……奏、ゆっくり息吸って……吐いて」
「ん、分かっ……ぁあ……ッ!?」
奏の呼吸に合わせてゆっくりと腰を押し進めていく。いくらか慣らしたといっても締めつけの強い縁に仁は奥歯を噛み締めた。
途中途中で腰を止めながら熱い隘路を穿っていく内に、やがて微かな膨らみを感じ取る。先ほど奏の腰が跳ねた場所だ。硬く張り出た先端でその場所を優しく撫で、更に奥へと進んでいく。
「っ、ひ、ンん! ぅ、うー……! おっき、いぃ……!」
「ッん、ぐ……イテェ、よな……っ! ごめん、っ、ごめんな……!」
眉を寄せながらじわりと汗を滲ませ、息を詰める仁が一度動きを止める。固く握られた奏の手に、自らの手を滑り込ませて握りしめた。
奏は仁が感じているものとは比べ物にならない痛苦に苛まれているのだろう。
一度抜くべきかとも考える。
「い、たくないっ…痛く、ないから……っ! お願っ……やめないでぇ……!」
苦しそうに呻きながらも懸命に受け入れようとする声に、せめて少しでも気を紛らわせようと体を屈めて深いキスを送った。
「ンッ……ふ……ぁ、んン……じ、んっ……仁……もっとぉ……っ」
初めての交合が痛みだけの記憶にならぬように、と重ねた唇の隙間から奏の甘えた声が漏れる。その音だけで、仁の頭の中はパチパチと炭酸が弾けるような快感を生んだ。
「ッぅ……悪い、っ、動くぞ……!」
切羽詰まった仁の声を合図に、部屋に肌がぶつかる音が響き始める。
抜いては押し込み、引いては突き入れ、仁の屹立から漏れる先走りが奏の体内をしとどに濡らし滑りを良くしている。
奏の啜り泣くような嬌声が、背中に立てられる爪が、仁自身を絡め取りうねるように甘えて吸い付く肉壁が──そのすべてが、仁の劣情にますます火をつけるのだ。
気を抜けば持っていかれそうな快感に、汗ばむ仁の眉間の皺が深くなる。
「っ、ふ、ッあー……やべ、気持ちいいっ……!」
「ぁ、ッあ、ひンんッ! 仁っ……仁も、きもちい……? 俺、ッふ、ぁあ! 仁のこと、ッきもちよく、できてる……っ?」
当たり前だろ、と冷静に答えられる筈だった言葉は、仁の頭の中で掻き消えた。
堪らない愛おしさ、全身を侵す快楽、速まるベッドの軋み。
ふたりの呼吸がシンクロしはじめる。
「仁っ……仁、すき、俺っ……俺ぇ、っ、好き、仁がっ……ぁ、ッあ、ぁああッ! も、イく、イくっ、イッ……!」
「っ、く……! 俺も、ッう、ぐ……俺も、ッ好きだ……! 奏、っ、奏……!」
何もかもが初めての奏は、訳も分からずに明滅する光の中へと押し上げられる。
恍惚とした表情を浮かべる奏を見下ろし、仁は堪らず腰を打ち付けた。
奏には、何も視えなかった。
仁にも、何も視えなかった。
音を紡ぐこと以外で自分の想いを、愛を、伝える方法があるのだと知った。
苦しさと悦楽の中で奏は唇に弧を描く。
そうして一際強く抱き締める仁の腕に包まれ、奏は至福の中──果てた。
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