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第4話

「藤守、おい、起きろっ」  ぬくぬく眠っていたところに肩をゆすぶられ、目を覚ますと美濃と男の看護師たちがいた。入り口をふさぐのに使ったベッドをどかすのに、男三人がかりだったそうだ。しかもその時に床に傷がついてしまったらしく、美濃は看護師たちにしつこいくらいに頭を下げていた。  廊下での騒ぎは看護師さんたちにも知られていたらしい。「まぁ、あんまり怒らないでやってください」と彼らは美濃の肩を叩いて病室を出ていった。 そう云われた美濃はというと、連日院内を疾走する面会者の身内としてお見舞いの受付け窓口でしこたま説教されたらしい。ぶすくれた美濃に、「ほら帰るぞ、八時だ。面会時間はもう終わり」と掛け布団をはがされた。  泣きすぎで重たくなっていた瞼をぱしぱしと瞬き、ごしごし擦る。 「先生、でもここ出るの怖い」  上目遣いで云うと、 「じゃあ、なんで来たんだ?」 と、美濃に首を傾げられ、俺はつと視線をそらした。 「だって、勉強。教えてやるってコイツのお母さんに云ったし……。俺、受験終わって暇だし……」  学校に話し相手がいないかわりに、こいつに話を聞いてもらっているってのは内緒だ。 「仕方ないなぁ。じゃあ先生が抱っこしてやる」  俺の鞄を肩にかけた美濃がベッドの上の俺に向かってほいっと両手を広げてきたので、遠慮なくしがみついてぎゅっと目を瞑った。 「先生、俺のお尻、しっかりガードしてね!」 「お、おぉ……」  なんてたってこの部屋の外で待ち受けるのは、ホモの幽霊たちなのだから。  かくして俺は、美濃のお陰で無事に病院から出ることができた。目に見える幽霊はついてこなかった。それでも念のために家に入るまえにはあら塩をたっぷり身体中に振りかけて、夜は仏壇から拝借した数珠を片手に布団に潜りこんだのだ。  そ・れ・な・の・に、だ。 「う、うぅぅぅ~ん。 お、重いぃぃぃぃっ」  どうやら今日も憑いてきていたらしい。仰向けに眠っていた俺は伸し掛かる重みで目が覚めた。目が覚めたといっても瞼は閉ざされたままだ。金縛り中は自由に身体が動かせない。 (これって毎日おなじ霊なのかな? それともちがうヤツ?)  初日はひたすら身体を擽られ。昨日はただただ重く伸し掛かり。じゃあ今日はどんなのさ? って思った矢先のことだった。 (やっ、ちょっと擽ったいってっ)  幽霊が髪に触れてきたかと思えば、つぎに耳の後ろをゆるく擦られる。でもなんか、これ。なんか、なんか……。 (なんか、触りかたがいやらしい気がする……)  もしかしてもしかしてもしかして。……今日のは色情霊? でもそんなの見えていなかった。欲の塊の色情霊が見えないことなんてないはずだ。  そうこうしているうちに、幽霊の手? が俺の両頬に添えられた。それから脚の間を割られる。それもあからさまに股間あたりをぐいっとだ。 「やぁっ」 (嘘だ、これ、ほんとに色情霊だっ、やだ、どうしようっ) 「―っ⁉」  ふにゅっと唇に押しつけられるような感触がした。 (キ、キスぅぅっ⁉)  幽霊にキスされた。ショックだ。 「うぅっ、ひっくっ、うえっ……、ううっ」  手指のひとつも動かせないし、目も開けることだってできない。それでも涙はでた。ポタリポタリと涙の粒が頬を伝って落ちていく。伸し掛かる重み、唇を舐められるような感触、そして頬を伝う熱く濡れた感覚。  しばらくすると感じていたそのみっつのうちの、唇のものだけがふっと消えていった。かわりのようにしてぎゅっと全身を取りまく重みが増す。 「ひっく、ううぅ。……ひっく……、こわ、いっ、こわいっ、よっ、ひっく……」 (怖いよ、誰か助けてよ。俺コイツにヤられちゃうよぉ)  どうヤられるかだなんて知らないが、幽霊だからきっとなんかできるんだ。自由が利いたとしても、こんなにがたがた震えている身体ではきっと逃げだすことはできないだろう。  俺は病院で抱きついた氏家の身体の厚みを思いだすことにした。ぎゅっと彼にしがみついた感覚と温もりをできるだけはっきりと想像する。あの瞬間に今、自分がいると思えばいい。 (大丈夫。俺には氏家がいるもん) 「うじ、い、えっ。……うぅ、ひっく」  そして、一秒でもはやく眠るように心がけた。それはうまくいって、俺は一度は深い眠りにつくことができたらしい。なぜならば、朝方に目が覚めたからだ。  学校一の男前に抱きつく妄想をしながら眠りについた俺はとても気持ちのいい夢を見ていたらしく、甘く芯から痺れる身体を揺らしながら、「あんっ」とあげた自分の声で目を覚ましたのだ。 (? ? ?) 「んんっ、あんっ」 (お尻、気持ちいいっ……)  夢うつつで、お尻をもじもじさせる。 「あんっ、……あんっ……」  臍のずっと下あたり、臓器のどこかがぎゅんぎゅんと不随意に痙攣していた。それは今までに知らない感覚で、想像したこともない快感だった。  瞼はふるふると震えていたが、うっかり覚醒していまわないようにしっかり閉じておく。こんなに気持ちいいのに起きてしまうなんてもったいないじゃないか。俺はもうすこしこの夢を見ていたかった。  うつ伏せのままゆるゆると腰をシーツに擦りつけて、「んんっ、んんっ」と喉声をだす。すっかり俺の股間のモノは立ちあがり、下着の中はぬるぬるになっていた。  そしてまた意識は遠くなっていく。  夢のなかで俺は、誰かにやさしく抱かれていた。相手は男のようだった。重みも肌に触れ合う感触もなかったけども、お尻の穴をズンッズンッと穿たれていた。そのたびに自分のいいところが、ぎゅん、ぎゅん、と収縮し、身体のどこもかしこもが甘くビリビリと痺れまくった。  終わってしまうには惜しい快感だとぼんやり思いながら、俺はシーツの上でゆるゆると身体を揺らめかせ、いつまでもそのあま~い快楽を味わった。  ジリジリジリジリジリジリジリジリ。  その後軽快な目覚ましの音で目を覚まし、ガバッと身体を起こした俺はどっひゃーっとなった。  とりあえずベルを止めて掛け布団をはぐと、案の定股間のモノがびょんと跳ね上がっている。パジャマがわりのハーフパンツまでもが恥ずかしい体液のせいですっかり色が変わってしまっていて。 「うぇぇっ」  いやぁな気持ちで、それと下着をいっしょにひっぱった。(のぞ)くと中は想像以上にびしょびしょで、ネバっと透明の糸を引いている始末。  そしてなによりも情けなかったのが、ヘンな夢を見た余韻でお尻の穴がヒクヒク、キュンキュンしているのだ。 「うぅんっ」  脚や布団が濡れないようにそうっとボトムと下着を脱ぐと、まずはティッシュで股間ごしごしと拭う。 「なんでこんなとこにまで……」 (いや、漏れすぎちゃったんだろうけど―)  お尻の割れ目にそってぬるぬるを(ぬぐ)っていくと、もちろんヒクつく穴のところまでつづいていて。俺はトイレでお尻を拭くときにはない羞恥を味わいながら、ソコだけはちょっと手荒にごしっと()きとった。 「あんっ」  そして途端に背筋を這い上った快感に腰砕けになってベットに突っ伏してしまう。びくびく震えるムスコをぎゅと握りしめた俺は、そのままそれをにゅくにゅくと扱いた。 「ああっ、ああん、あっ、あっ、イクっ!」  お尻をつきだし、プルプル震えながら白濁を放出する。すっかりヘンな癖がついたらしく、その瞬間の俺のお尻はまるでなにかを嚥下するように動いた。 「き、気持ちよかったぁ……」  手探りでテッシュボックスを引き寄せる。汚れを受け止めていたティッシュを新しいものにかえてごしごし後始末をしながら、空いたほうの手でまだヒクヒクしている肛門をそっと撫でさすってみる。 「あんっ」 (うわ、めっちゃ気持ちいい!) 「って、俺、朝からなにやってんのっ!」  我に返ってガバッと跳ね起きた。時計をみるとベルが鳴ってからすでに十分も過ぎている。のんびりしていたら遅刻じゃないか。 「あっ、洗濯もしなきゃ」  このままボトムとパンツを洗濯機に放り込もうものなら、今夜母経由で伝わった父から説教をうけるハメになる。俺は洗濯ものを掴むと、 「遅刻する、遅刻するっ」  お尻丸出しのまま、風呂場に急ぐことにした。

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