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第20話 俺だって男ですから!

「奥まで、いい、ですか?」 俺が尋ねると少し間があったけど、瑆さんは今度はしっかりと頷いた。 それを合図に奥まで一気に入れ込んだ。 「ああっ!」 瑆さんの身体が跳ねるように仰け反る。 掠る程度に奥の壁に触れて、腰を引いて。 また掠るように…。 「ああん、あん、あ、りょうくん、りょうくん、あん、あ」 瑆さんは顔を隠すように腕を上げてる。 さっきまでしてなかったのに。 これじゃ、顔が見えない。 「あん、あ、あ、ああぁ」 よがり声は絶えず聞こえるのに。 さっきから顔が見えない。 俺は瑆さんの顔を隠している腕を掴んで、頭の上、シーツに縫い付けた。 ほんのりと赤くなった顔は蕩けるように緩んでいた。 目尻も、口元も、眉も。 瞳には涙が滲んでいて。 唇は唾液でか、艶やかに光っていた。 「気持ちいいですか」 俺が聞くと、こくこくと頷く。 「いい、いいよぉ、良くんっ」 腰を止めることなんて、もう出来ない。 「あ、や、はげし、ああ、りょ、くんっ」 瑆さんの静止も聞けない。 俺の腰と瑆さんの腰がぶつかる音と、瑆さんの中からローションを掻き出すような濡れた音と、ベッドが軋む音が部屋に響いてる。 他の事なんて何も考えられない。 「ああ、あ、ん、あぅ、んああ」 俺の下で瞳を潤ませながら、瑆さんが喘ぎ声を上げている。 じっと俺を見つめて。 俺も目が離せずに。 こんな、こんな瑆さんが見たかったんだ。 ずっと。 今だけは俺が瑆さんを支配してる。 瑆さんの中に、俺だけが存在してる。 ぞくぞくとした快感が這い上がってきた。 瑆さんの開いたままの唇から唾液が溢れて、端から滴り落ちてきた。 吸い寄せられるように瑆さんの唇に自分の唇を乗せた。 すぐに離れると、瑆さんは喘ぎ声を忘れて目を見開いていた。 ああ、そうだ。 瑆さんと初めてキスした。 もっかい、いいかな。 俺は様子を伺うようにまた唇を寄せてみた。 嫌なら首を振るんじゃないかと思って。 でも瑆さんは避けなかった。 逆に、微かに唇が触れた。 それからいつも通り微笑むのかと思ったら。 泣きそうに顔を歪めていて。 かっ、と頭に血が上った。 俺は瑆さんの頭を押さえつけて、かぶりつく様にキスをした。 瑆さんは逃げないで、俺に答えてくれる。 舌を絡めて、吐息も唾液も混ぜて。 舌が届く全ての場所に触れると、瑆さんの中が蠢いた。 蠕動する様な動きに堪らず腰が揺れる。 瑆さんの腰も身体も揺れている。 「ぅん、ん、んっ」 下肢の粘着質な音に混じって、お互いの唇や舌を舐めたり吸ったりする水音も混じって。 「ひか、るさん、俺」 「りょ、くん、ぼ、くも、い、く、いくぅ」 ぎゅっと中が締まって、瑆さんの身体が弓なりに沿った。 瑆さんの全身がほんのりと桜色に染まる。 「ああっぁぁー」 一際高い声と共に、二人の間の瑆さんのペニスが弾けた。 何度もバウンドする様に瑆さんの身体が反る度に、中が引き絞られて。 「く、うっ、あっ」 経験値の浅い俺にはとても耐えられる締まりではなく、瑆さんの中で呆気なく射精した。 瑆さんの中は俺の射精を促すように、一滴まで絞るように蠢き、その度瑆さんもびくん、と震える。 俺も本能的にまるで奥の方へと流し込むかのように、二度三度腰を押し込んだ。 「あ、あっ」 それに合わせて瑆さんがびくびく震えた。 ペニスの根元から先端まで駆け抜けていく快感に震えながら、ふとゴムなしだったことに気付いた。 あ、いつもしてないんだっけ? 荒い息をしながらもじっと瑆さんを見つめ続けた。 瑆さんも荒い息をしている。 しっとりと肌を濡らす汗が、鎖骨の窪みで小さな液溜まりを作っていた。 視線を落としていくと、ヘソの窪み周辺もべっとりと濡れている。 あ、これ、瑆さんの精液だ。 思わず指を伸ばそうとすると、察した瑆さんにきゅっと掴まれた。 「ダメ!汚い」 「汚くないですよ」 瑆さんは無言で俺の指を握りしめ、ふい、と他所を向いた。 「…瑆さんは、俺のも汚いと思うんですか?」 全部中に出しちゃいましたけど。 「え⁉︎良くんのは汚くないよっ」 ぶんぶんと首を振る。 「じゃあ、瑆さんのも汚くないですよね」 「………」 瑆さんは俺の屁理屈にちょっと拗ねたように目を伏せた。 まつげがまだ濡れている。 小さな雫がついてるのが見える。 一度、射精したし、本来なら一気に冷めていくはずの頭がなぜかまだ沸騰してる。 実際のところ、まだ入ったままなんだよな。 俺のペニス。 瑆さんの中に。 暖かくて。 初めてじゃないんだけど、なんだか離れがたい。 荒い呼吸を繰り返して、徐々に下がっていくはずの体温も、なんだか…。 会話も途切れて。 でも俺はずっと瑆さんを見てた。 別に意味なんかない、ただ見ていたかっただけだ。 そしたら瑆さんも俺を見つめ返してきて。 見つめたまま、しばらく無言。 先に口を開いたのは瑆さんだった。 「…ねえ、良くん…」 「…はい…」 抜け、とか、退いて、って言われれば、その通りにした。 でも、聞こえてきたのは別の言葉だった。 「もっかい、キス、してくれる?」 それが合図だった。 唇を重ねるだけだったはずなのに。 キスするだけ、のつもりだったのに。 瑆さんの薄い舌を味わって、唾液が混ざる音を聞いたとき、再び体温が上昇したことに気付いた。 それでも瑆さんの唇に吸い付いたまま離れられずにいると、瑆さんの熱い腕が首に巻きついてきた。 どくん、と体の中心が脈打って。 それを見計らったように、瑆さんの太腿が俺の腰に擦り付けられ。 それで理性が吹き飛んだ。

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