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文化再始動

学校へ着くと、職員室ではいつもと変わらない朝の慌ただしさが流れている。 「あれ? 一之瀬先生と水瀬先生、一緒に来られたんですか? 珍しいペアすぎません?」 出勤してきた教師の一人が、意外そうに目を丸くする。 「駅でたまたま会ったので」 凪が手短に答えると、隣同士にいた一之瀬も笑いながら頷いた。 「電車が一緒だったので、俺が勝手についてきちゃいました」 「なるほど。そういう事でしたか」 教師は納得したように笑い、そのまま自分の席へ戻っていく。 職員室にはコピー機の動く音や、授業の打ち合わせをする教師たちの声が絶え間なく響いていた。 凪も鞄を机の横へ置き、今日の授業で使う教材を取り出す。朝のホームルームまで十分ほど。出欠簿に目を通しながら、一日の流れを頭の中で確認していると、教頭が職員室へ姿を現した。 「皆さん、少しよろしいですか」 その一声で、職員室の空気がわずかに引き締まる。 「文化祭まで一ヶ月を切りました。今年も本日から本格的に準備へ入ります。各クラスの担当教員は、生徒と進捗を確認しながら進めてください」 あちこちから「はい」という返事が上がる。 ――文化祭。 毎年学校全体が最も慌ただしくなる行事であり、生徒たちが一番楽しみにしているイベントでもある。今年はどんな文化祭になるのか。 凪は手元の予定表へ目を落とし、小さく息をついた。 (この前、一之瀬先生と残業したばっかなのに) あの日は文化祭の資料整理に追われていたことを思い出す。ようやく一段落したと思えば、今度は本格的な準備が始まる。今年もしばらくは、忙しい日が続きそうだった。 事前の書類確認や申請内容の整理は一之瀬のおかげもあってすでに終わっていた。今日からは、各クラスが実際に準備を進め、その進捗を実行委員と担当教師が管理していくことになる。文化祭当日まで残された時間は、それほど多くない。 凪は予定表を閉じると、静かに席を立った。始業のチャイムが鳴り、職員室にいた教師たちもそれぞれの教室へ向かい始める。いよいよ、文化祭が本格的に動き出そうとしていた。 教室へ入ると、生徒たちはいつものように談笑していた。 「おはようございます」 ホームルームが始まり、出欠確認や連絡事項を済ませたところで、凪は一枚のプリントを手に取った。 「今日から文化祭の準備が本格的に始まります」 その一言に、教室が一気にざわめいた。 「やっとか!」 「今年、何やるんだろ」 「お化け屋敷やろうぜ!」 あちこちから期待に満ちた声が飛び交う。凪は生徒たちを見渡し、小さく口を開いた。 「まずは落ち着いて」 ざわめきが少しずつ収まる。 「まずはみんなで出し物を決めてほしい。決まったら実行委員が取りまとめて、放課後の委員会で提出。細かい日程や準備については、そのあと共有する」 凪がそう告げると、教室はすぐに活気づいた。お化け屋敷や喫茶店、展示企画など、次々と案が飛び交い、あちこちで意見を交わす声が上がる。なかなか意見がまとまらない班もあれば、すんなりと候補を絞っていく班もあり、教室は文化祭らしい賑やかな空気に包まれていった。 そんな生徒たちの様子を見守りながら、凪は静かに教室を見渡す。 文化祭の幕開けを感じさせる、いつもより少しだけ騒がしい朝だった。

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