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似ている二人

翌日の放課後。終礼を終えた校内は、昨日までとはどこか違う空気に包まれていた。廊下には段ボールや画用紙を抱えた生徒たちが行き交い、教室のあちこちからは笑い声や工具の音が聞こえてくる。昨日の実行委員で、各クラスの出し物は正式に決定した。 実行委員担当の凪は、手元の進捗表に目を落とすと、小さく息をついた。 まずは各クラスの様子を確認しなければならない。凪は資料を手に職員室を出ると、賑やかな廊下をゆっくりと歩き始めた。 「あ、水瀬先生!」 廊下を歩いていると、前から一之瀬が駆け寄ってくる。 「ちょうど良かったです。今から見回りですか?」 「そのつもりです」 「じゃあ、ご一緒にしてもいいですか?」 凪は一之瀬を見上げ、小さく頷く。 「構いませんよ」 「ありがとうございます」 二人は廊下を歩きながら、各教室の様子を見て回った。どのクラスも準備が始まったばかりとは思えないほど活気に溢れている。 「どのクラスも気合い入ってますね」 「そうですね。今年は動き出しも早いですし」 「文化祭が終わるまでは俺たちも忙しくなりそうですね。とくに水瀬先生……」 「……まあ」 凪は苦笑いを浮かべると、不意にあることを思い出した。 「そういえば、一之瀬先生」 「はい?」 「以前、お礼させてほしいとお話しておきながら、中々予定を決められていませんでしたね。申し訳ありません」 一之瀬は一瞬きょとんとしたあと、すぐに柔らかく笑った。 「じゃあ、今日行きましょうか」 あまりにも自然な返答に、凪は思わず足を止める。 「今日、ですか」 「準備も始まったばかりですし」 気負った様子はなく、思いついたことをそのまま口にしたような軽さだった。 その無邪気さを目にした瞬間、不意に怜央の顔が頭をよぎる。考えるより先に口を動かし、周りを巻き込みながら笑う姿は、どこか怜央と重なった。 (あいつよりは全然マシか) 凪は小さく息をつき、一之瀬へ視線を戻した。 「……分かりました」 「ありがとうございます」 一之瀬は嬉しそうに笑った。 一通り見回りを終えた二人は、そのまま職員室へ向かって歩き出した。先ほどまで賑やかだった廊下も、教室へ戻る生徒が増えたことで、少しずつ落ち着きを取り戻し始めている。 「じゃあ、俺、今日すごく楽しみなので速攻仕事終わらせてきますね。あとでメッセージ送ります」 そう言うと、一之瀬は軽く手を振って自分の机へ戻っていった。 凪はその背中を見送り、自席へ腰を下ろす。机の上には、提出された書類がいくつか積まれていた。 今日中に片付けてしまえば、定時で上がれるだろう。約束をした以上、あまり待たせるわけにもいかなかった。 凪はパソコンの電源を入れると、目の前の仕事へ静かに取り掛かった。

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