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第26話 見えた道筋
「エルマ、さすがだ。アインホルン司祭はやはり、怪しい」
夜、拠点に戻って。
作戦会議でギルバートが真っ先に切り出した。
「やっぱな」
「ああ。エルマはどこまで知ってる?」
「実はあんまり。ほぼハッタリだった」
書庫で調べてみたものの、ロゼッタが亡くなったことについて詳細に記載している書類はなかった。
あったのは小さな新聞記事だけだった。
それも『観光客のロゼッタ・ヴァン・エクスナーさん(十八歳)が、七月三日、トラオム中央広場にてうつ伏せで倒れているのを発見された。病院に運ばれるも、死亡が確認された。死因は心臓発作とみられる』とあっただけだ。
心臓発作なら死因が怪しいと言っても通りそうだし。「魔素が安定してない~」ってのは俺の実体験。
それらを組み合わせて、それっぽい感じで言ってみたのだが。うまく功を奏したようだ。
記事の内容とアインホルン司祭の魔力量などを組み合わせて、”白の間”を開けたトリックを話す。ギルバートは険しい表情で頷いた。
「その可能性は充分にあると思う」
「そうか」
「まず、俺はアインホルン司祭の部屋でロゼッタの資料を探した」
護衛しながらよくやるな。
感心していると、ギルバートは声を落として続けた。
「ロゼッタはアリュール教育学会の特別メンバーだった。アインホルン司祭が協力している団体だ」
「……そんな繋がりが」
「しかも、ロゼッタが特別メンバーである理由だが」
ギルバートの瞳がぎらりと輝く。
「ロゼッタの魔力量は3000を超える。期待の天才少女だったらしい」
持っていたカップを落としそうになった。
慌ててぎゅっと取っ手を掴む。
ネクロマンサーは”死者”を操れる。
魔力量3000ルナの死体が、そのまま、手に入れば。
「”白の間”を開けることも可能だ」
初めて見えてきた道筋に、ぞっと鳥肌が立った。
深く息を吐いて、じっと考える。
アインホルン司祭がロゼッタの死体を利用して、”白の間”を開けた。
現状、これが一番可能性が高い手段だが。
「どう思う、ギルバート」
「どう、とは」
「改めて、あり得るか? これ。俺は……なくはない、と思う」
興奮なのかなんなのか、手が微妙に震えている。
今まで雲を掴むような捜査をしてきたから、具体的な道筋が見えて、全身がふわふわしている。
ギルバートに視線を向けると、同じように手を強く握っていた。
「俺もあり得ると思う。他の可能性が見つかるまでは、この路線で調査を進めるのがいいだろう」
ギルバートがきっぱりと言い切るので、俺はほっと息を吐いた。
「エルマのおかげだ。ありがとう」
輝くような笑顔でお礼を言われると、頬が熱くなった。
……この胸の高鳴りは、捜査の進展、だけじゃない。
「次は”アインホルン司祭がネクロマンサーかどうかか”が争点だが」
ギルバートがうーん、と唸りながら考えるので、俺ははっとする。
「あ、ああ。でも、このあたりは調べるのが難しいな。ネクロマンサーについては、あんまり世に知られていない。偏見もあって隠しているんだろうし」
「死体を操るんだからな。奇異な目で見られてもおかしくない」
ネクロマンサーは魔術師の中でも眉唾物の存在だ。公にしているひとはいない。
ここを特定するのは時間がかかるとして。
そもそもロゼッタの魔力量を当てにしていたなら、アインホルン司祭はロゼッタに詳しかったはず。
それに、本当に彼女が心臓発作で亡くなったのかも、怪しく思えてくる。
「ロゼッタとアインホルン司祭の関係について調べよう」
そう結論づけて、この日の会議は終わった。
次の日、俺はまた書庫に向かった。
ロゼッタが所属していた”アリュール教育学会”について調べた。
創立は百年以上前。歴史のある団体だ。
”すべてのひとに学びを”というスローガンを掲げ、身分・階級に関係なく国民に教育を施す必要性を説いている。
ぱらぱらと団体の歴史や記事を読む。海外との連携もしているようだ。
有力な政治家、司祭、文豪などもメンバーに名を連ねる。そして………
「あれ」
最近の記事で、パッと見慣れた名前が目に入った。
オーランド・クヴァール。
その記事には、クヴァールが海外の医療について講演を行ったとある。数年前からアリュール教育学会の外部講師をしているようだ。
「……クヴァールさんに聞いてみようかな」
俺はその書類を元に戻した。
思いもよらないツテができたと、内心ガッツポーズしていた。
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