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第54話 願いを叶える女神像
食事を終えて、クヴァール邸で手に入れた情報をもとに会議をした。
美味しいご飯を食べたからだろうか、俺もすっきりした頭になっていた。
色々あったけれど、得られた情報は大きい。
「魔素をロゼッタから奪うのは、見せてもらった技術じゃ厳しそうかな。物体を速い速度で回転させて魔素を分離するんだ。俺が見たのは土で生成したものだったんだけど。人間が入ったら身体がぐちゃぐちゃになると思う」
「そうか。ロゼッタの遺体に傷はなかったよな。分離の技術は使われていないか」
ロゼッタの遺体から魔素を奪った方法には依然として疑問が残る。
いつ、誰が、どうやって。
うーん、と唸ると、ギルバートがぽつりと呟いた。
「明後日、休みが取れたんだ」
「お、よかったな。ここのとこ取れてなかったもんな」
「ロゼッタが亡くなった場所を俺も調べようと思う。一緒に行かないか」
二日後、俺たちはトラオム中央広場に来ていた。
今日も平日で、人通りはそこそこ。
大きな女神像を見上げ、ギルバートが首を傾げる。
「”願いを叶える女神像”、か」
「すげえよな。トラオムで一番の人気スポットなんだって。観光客がこぞって触ってるのを見たぜ。俺も触ってみたけど、叶う気はあんましなかったな」
「……何を願ったんだ」
ギルバートがじろりと俺を見つめる。
俺は眉根を下げて「ひみつ」と笑った。
こればかりは言えない。ギルバートをぎゃふんを言わせたいとかだから。
ギルバートがそっと女神像に触れる。目を閉じて、じっと黙っていた。
横顔は真剣で、本気で祈っているようだ。
俺も隣で女神像に触れ、目を閉じる。
ーーーこの任務が成功して、トラオムが無事でありますように
女神像はひんやりしている。ざらざらした感触が手に残った。
それから二手に分かれ、広い範囲を捜査することにした。
俺は噴水のあたりや商店街の入り口。ギルバートは、やや遠い馬車乗り場まで向かった。
ひとりで広場をうろうろしていると、女神像の前で親子連れが楽しそうに笑っていた。観光客だろう。やっぱり、みんなあれが目当てらしい。
両親が女神像に手を添える。
五歳くらいの男の子も、両親の身振りをマネして女神像に触れた。
ばちん、
小さな火花が散った。男の子が女神像に触れた瞬間だ。
両親が「どうしたの?」と急いで男の子に声をかける。
男の子は、呆然と両手を眺めた。
途端に、胸を押さえて、苦しみだした。
「え」
うずくまる男の子に、両親はおろおろと、必死の様子で声をかけていた。
俺は急いで駆け寄った。
「どうしました」
「わ、わか、わかりません、女神像に触れたら、急に………」
男の子の呼吸が浅くなっている。唇が青くなって、顔が白くなる。
……もしかして。
「魔素不足かもしれない! 供給します」
俺は男の子に口移しで魔素を移した。
ぐったりしている男の子の指がぴくりと動く。
青白かった顔が徐々に色を取り戻していく。
けど
視界がぐらりと揺れた。
口を離して、今度は俺が、うずくまってしまった。
手が、痺れていく。貧血みたいに冷たくなって、呼吸が荒くなった。
たすけなきゃ、って、それだけを、考えてた。から、
(………おれ、いま、魔素、ほとんど、ない、のに)
すっかり忘れてた。
今は俺も魔素不足で、
わけあたえるよゆうなんか、ない、のに
かひゅ、と掠れた呼吸を繰り返した。
白んでいく視界のそとで、遠くから、ギルバートが呼ぶ声がした。
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