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第7話 紗奈サイド<ミツワ未来財団>
陽一兄さんが、里奈ちゃんや陽菜ちゃんに優しく説明していた。
「上の学校に行ってもいいし、行かないでショップやカフェの仕事をしてもいいし、ガーデンで花の手入れをしても、ちゃんと仕事として給料が出るからね」
まあ、言い方が優しいんだもん。
ちょっと私達を相手にする時とは違う気がするな。
「あ、そうなんですね」と、里奈ちゃんが控えめに頷く。
「もう碧人君はスカウトしたから、財団の仕事をしてもらうことは決まってるんだよ」と、陽一兄さんが続ける。
へえ、着々と財団の仕事が進んでいるんだ。
「わあ、良かったねえ」と、里奈ちゃんが嬉しそうに目を細めた。
碧人君がちょっとニヤッとして照れていた。
そこで、執事の小林さんがさらに詳しく説明してくれた。
「財団もいろんな事業を手がけますから、職種もたくさんあるんですよ。
例えば、調理師でもいいし、栄養士でもいい。
カフェもあるから、お菓子を焼いたりパンを作ったりするパティシエもいいですね。
あと、看護師になってもいいし、クリニックの事務でもいい。
美容サロンもありますから、エステや美容師の資格も活かせますよ。
もちろん、清掃の仕事だっていくらでもあります。
それに、イタリアの輸入小物をたくさん扱う予定ですから、販売の仕事もできますよ」
「わあ~、いろいろあるんですねえ」と、里奈ちゃんが感心している。
「あとね、ゆくゆくは保育園もやるつもりだから、香菜みたいな保母の資格もすごく助かるんだよ」と陽一兄さん。
「あ、なるほど! それで保母の資格が活きるんだ」と、香菜が納得したように声を上げた。
「結局、この財団は困った弱者を助けるための場所なんだよ。母子家庭も救いたいし、父子家庭の支援だって必要だろうからね。
行き場のない人には、未来ビルの中に部屋を用意して住んでもらうんだ。
オメガの人はヒートが来たら、それだけで会社をクビになったりして生活も大変でしょう?
でも財団の仕事だったら、そんな理由でクビにしたりしない。
それに変な人間も入れないから、安心して働き続けられるんだよ」と陽一兄さんは真剣な表情で語った。
「ああ、なるほど……。それで私の社会福祉士の資格が活きるのかなあ」
ここで初めて、陽一兄さんが私たちに進路を薦めてくれた本当の意図が分かった。
「ほら、里奈ちゃんには今も料理やお菓子の練習をしてもらっているけど、そのままカフェで働くこともできるしね。
本格的にパティシエになりたかったら、製菓の専門学校に行っていいんだよ」と陽一兄さん。
……本当に、どこまでも周りの人の先回りをして優しいんだから。
「うわ~、どうしよう。私、それやりたいかも!」と、里奈ちゃんは期待でいっぱいの笑顔になった。
「陽菜ちゃんは、何か希望はあるの?」と颯太兄さん。
「……分からないです。高校も行き始めたばかりだし、ちゃんと無事に卒業できるのか、まだ自信がないし……」
陽菜ちゃんの声は小さかった。
身体の調子もまだ万全ではないのかなあ。
「陽菜ちゃん、そんなに焦らなくていいよ。ゆっくり考えればいいんだ。何年かかっても構わないからね」
と颯太兄さんが優しくフォローする。
「あー、ダメダメ! 陽菜はビシビシ俺が鍛えるから、ちゃんと3年で卒業させるよ!」
碧人君が急に熱を帯びて声を張り上げた。
あれ? 一斉にみんなの視線が碧人君に集まる。
自分が言ったことに気づいて固まった彼を見て、私たちは思わず「ぷーっ」と吹き出してしまった。
碧人君、照れまくっているのが隠しきれていないよ。
――なんだか、すごく良い雰囲気だな。
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