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第11話 加護サイド<スカウトされたい>
ようやく院長から電話がかかって来た。もう~遅いんだから……。
「はい、加護です。凄~くお待ちしていましたけど」
電話の向こうで院長はクスクス笑っていた。
「ちょっと外で話す?お茶しようか?」
「はい、すぐ行きまーす!」
私はまるでデート待ちの女の子だな。
外でお茶するなんて初めてだ。
いそいそとバッグを持って病院を出ると、外で待っててくれた。
「ごめんね、待たせちゃって」と微笑んで言われるのに弱いの、私は。
「大事な話は終わったんですか?」
「うん、まあね。全部話したよ」
「‥‥‥なんか嫌な予感がするんですけど」聞きたくない……。
「さすがだねえ。当たってるよ」
それでも微笑みながら、近くの素敵なカフェに連れて行ってくれた。
広々としていて、広いテラスは白とブルーのタイルが美しい。
院長は長身でイケメンだから、一緒に歩くのは好き。
今日も仕立ての良い上質なスーツを着こなしていた。
結構振り返る人がいる。
私、ふふんと気分良く歩く。
でもなにかしら? すごく嫌な予感。
「あのね、先に伝えることがあるんだけど、ミツワ財団の仕事が忙しくて、院長の仕事は淳一に譲ろうと思う。もうこれは決定。
ただね、名前は残せって言われてさ、顧問になったんだよ。
実質は来ないんだけどさね。でも、まだ淳一は知らないから内緒ね」
「‥‥‥」
途端に楽しくなくなった。
私__どんな顔をしたんだろう?
心が急に暗くなった。
でもなぜかニヤリとした院長。
「それで閃いたんだけど、加護さんはうちの財団に来る?一緒に仕事しようよ」
「えっ? 良いんですか?」
「うん、多分、淳一相手だと加護さんの仕事が広がらないと思うんだよね。
淳一も院長になったばかりじゃプレッシャーでさ。
業務推進まで余裕がないと思うんだ。
ただね、財団では給料が今のようには出せないと思う。
その代わり、寮を今作っているから、そこは無料で入れるよ。
ちょっと1LDKで狭くなるかもしれないけどね。どうかな?」
「はい、分かりました。すぐ移ります」
早口で答えた!
ははと院長が笑った。
その笑顔がきれいなんだよな。
私もうれしくて一緒に笑った。
だって地獄から天国へ、いきなりのジェットコースターなんだもん。
こんなの反則だよ。
「仕事の内容は、クリニックがまずあるんだよ。
そこの看護師長として、保育所も一緒に見て欲しい。
他に入居者で具合の悪い人がいたら面倒を見て欲しいし、何よりも人材集めがこれからだからそれにも協力してほしい」
「はい、分かりました。お任せください」
自信を持って声を張った。
院長と一緒に仕事が出来るなら、私はなんでもいいんだもん。
「まだ具体的な部署や役職は出来ていないから未定だ。
給料は財団の山川弁護士が管理してるんだよ。
でも近いうちハッキリすると思うから、待っててね。
それと加護さんのことは、まだ理事に言ってないから内緒ね。
次のタイミングで言うからさ。
ただねえ、淳一のフォローが1か月くらい要るのかな?」
えー?伸ばすつもり? 冗談じゃない。
「いや、はっきり言って、私はいない方がやりやすいと思いますよ。だって淳一先生だって、自分のペースを壊されるのは嫌でしょう?プライドもあると思うし、私はいない方がやりやすいと思います」
すると、院長からじっと見つめられた。考えてるのかな?
「あ、そう。分かった。じゃあ、次の締め日でいいかな?」
「はい、OKです」よーし!
「あ、でも寮がまだできてないんだよね。どうしよう。今ホテル棟を6室作っていて、今は内装をしているから、そこを使ってもいいかな。ただ台所がないからなあ……。じゃあ、ちょっと考えるから待っててくれますか?」
「はい、分かりました!」
もうこうなったら大船に乗った気で待ってる。
ただこの嬉しさは最高。ふふふ。笑いがこぼれる。
私を分かってくれるのは院長だけなんだもん。
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