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第15話 陽一サイド<ペントハウスは要らない?>
父が楓達に土地を売ってマンションを建てる話を丁寧に説明してくれた。
「なるほどね。分かった。私もマンションが買えるんだ」と楓。
「山川弁護士が言ってたけど、10億で売れたら税金が2億5千万と思ってた方がいいってよ」と俺。
「ひっ」と楓が喉を鳴らした。
「一応、管理会社の人に希望は言っておいたよ。淳一は家督を継ぐからペントハウスでいいの?それなら嫁さんやそのお義母さんも文句ないでしょう?」
「あ、あ、……まあね。多分……」
淳一も一瞬目が泳いだ。
現実にピンときたらしい。
「その下の最上階を2軒にして、楓夫婦と俺達ね。1階と2階の一部をメゾネットにして庭付きで、両親の家。車寄せもなるべく大きくしてくれるように頼んだよ。
あと駐車場は6台。SPの待機部屋もお願いした。
それとね、メゾネットの2階は家の中の階段を封鎖して、あとで2階だけで独立させて、賃貸に出来るようにしておいた方がいいと思う。
管理費や積立金は地価が高いから結構高いと思うよ。特にペントハウスがね」
いきなり淳一が目が丸くして驚いていた。
「うわ~どうしようかな。だってさ、俺だって長生きする保証はないもんね。
40代や50代でぽっくり逝っちゃったらさ、紀子や子供の生活費や管理費が困るでしょう?
だったら、ペントハウスでなくていいよ。
高いものより安い方にして2軒買って、一軒は賃貸にすれば経費が全部払えるからね」と淳一。
皆シーンとしてしまった。
それぞれの胸に、未来の重みが静かに落ちていく。
「お前は意外と現実主義だなあ。それでいいのか?
向こうのお義母さんがペントハウスの方が良かったなんて言わないのか?」
父がそう言うと、みんなどっと笑った。
緊張していた空気が、あたたかな温度を取り戻す。
「淳一は堅実な考え方をするんだねえ。感心したよ。
そしたら俺もそうしようかな? 現金を持っても大して増えないしね。
良いマンションだったら、それも資産だから無駄使いじゃないよ。
うちも2軒買うよ。だから最上階の1軒を分けて2軒にする」と俺。
「ええ?そしたら私どうしようかな……?
あ、決めた!私も子供が出来たら収入がなくなるから、2軒買うわ」と楓。
「全く‥‥‥うちの家族は本当に堅実だねえ。まあ、ありがたいけどね」
呆れたように父が言う。
その表情には、確かな誇らしさと安心の色が滲んでいた。
「それはみんな父さんに似たんじゃないの?」と俺。
みんなも照れ臭そうに笑顔を見せていた。
窓の外では、夕闇が静かに街を包み込み始めている。
それで生家に帰宅した。
颯太と早速二人で風呂に入る。
湯気が立ち込める空間に、心地よい気だるさと静けさが満ちていた。
「先生、お父さんやお兄さん達は本当に先のことまで考えてるんだねえ。
凄い感心しちゃった」
「颯太だっていつも頑張ってるから偉いよ。才能があるしさ」
急に顔いっぱいを笑顔にして喜んだ。
「本当?」
「うん、本当さ。声はきれいだしさ、歌はうまいしさ。颯太は最高じゃない?」
「あれ、踊りは?」
「‥‥‥あ、最近踊りを見てないからさ、分からないかな。今度見せてね」
俺もお世辞が言えないんだよねえ~。それに正直すぎる。
「じゃあ、あとで踊るから見てね」
「はい、分かりました。お待ちしてます」
そしてお風呂から出ると、お気に入りの音楽をかけて踊ってくれた。
ふふ、かわいい。しょうがない、一緒に踊ろうかな?
香菜のお遊戯じゃないけど、颯太の踊りを真似したら、颯太がめちゃめちゃ喜んだ。
二人でノリノリで20分ほど踊って心地よい汗を流す。
あー疲れた。ベッドにドンと寝っ転がった。
「先生、疲れちゃったの?」
「うん、だって歳だもん」
「じゃあ、これ以上動けないの?」
「なんで?」ふふと颯太が一人で照れまくった。
その無邪気な横顔が、やけに愛おしい。
はあん、なるほどね。もう、可愛いんだから。
「颯太、そっちは別でしょう?ベッドの上なら任せて」
両手を差しだすと、もう颯太が胸に飛び込んできた。
心と体が、甘やかに重なり合っていく。
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