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第16話 陽一サイド<未来さんに交渉>
翌日、相良未来さんに生家に来てもらった。
「未来さん、実はお願いがあるんですよ」
俺が切り出すと、
「どきっ……」と未来さんは横を向いて苦笑いをした。
笑いつつも天才的予感?
「い、いいですよ。お話を伺いましょうか?」ちょっと……笑った。
「実は実家の土地が青山に400坪あるのですが、そこを立花家の財産管理会社に買い取って貰い、かつマンションを建ててもらうんです。もちろん、マンションの数件は家族で買いますが、未来さんに全体の建築プランをお願いしたいんです」
う~んと目を剝いたまま、スローモーションのように、天を仰いで後ろにのけぞった。
もう小林さんと二人でクスクス笑いだ。
あーやはりダメか。
その後、彼は頭を抱えて俯いた。
「やはり無理ですよね?」控えめに聞いた。
「それとも少し時間を空けましょうか?管理会社では、建築プランだけでもあると助かると言ってました。
建設自体は1年待ってほしいとは言われたんです。
それも取引先に打診するので、返事は待ってほしいと言われている状態です」
結局全部言ってしまった。成り行き任せだ。
すると、いきなり彼が立ち上がった。
「はい、分かりました!建築士を増やします!」
決意表明か?
「まあ、そんなに急がなくていいですけどね」
俺はやや折れた。
「とりあえず、土地を拝見しましょうか?」
あれ、未来さんのスイッチが入ったのかな?
それから実家を見に行って、土地の権利書や図面のコピーを見せた。
「なんかすごい場所にありますね。表通りから住宅地に1本中に入ってるけど、建物としてはすごく目立ちますよ」
「そうですか?」
それがなんか関係あるのかな?
「分かりました。お引き受けします。ただしプランは考えますが、建築そのものは1年は待ってほしいです」
「はい、分かりました。
管理会社も建築そのものは取引先があると言っていたので、プランだけでも助かるそうです」
その後は、こちらの希望を伝えた。
未来さんも携帯でずっと録画や写真を撮影して回った。
これ以上は無理強いをせずに、プランだけを考えてもらい、建築そのものは成り行きに任せようと思った。
*
その後は病院の理事長室を行った。
ノックして静かにドアを開けると、「どうだったんだ?」と父が一言。
「未来さんが建築プランを承諾してくれたんだけど、建築自体は1年待ってほしいって言われたよ」
「ほう~、まあ、良かったじゃないか?急がないから、いいものを作ってもらおう」
「はい、そうですね、この後は加護さんに会いますが、明日から有休にしてもらっていいですか?
財団に連れて行って見学や、打ち合わせをしたいんですよ」
「ああ、休みの間はどう使おうと自由だよ……おっと、待てよ」
「なに?」
「見学に俺も連れて行ってくれないか?
いつも話だけで、具体的に規模がピンと来ないんだよな」
父にしては珍しくて、つい俺も顔が緩んだ。
加護さんに連絡して玄関で待っていると、急いだ様子で加護さんがやって来た。
「あら?理事もご一緒でしたか?」
父の姿を見つけて、加護さんは目を丸くして驚いていた。
「とりあえず財団に行って説明するから、一緒に行こう。父も見学したいんだって」
それでSPの車で、後部座席に3人乗った。
車内で「加護さんを貰ってもいいんだよね?」と再度父に念押しした。
「ああ、加護君も向こうに行った方が仕事が面白いだろう」と父。
にんまりと加護さんが笑った。
「それと、あとでホテル棟を見れば分かるんだけど、今内装工事中だから、今のマンションでしばらく待っててほしいんだよね。有休を全部使ってください。
その間は荷物の整理をしたり、財団の皆さんに紹介して、いろいろ説明しますよ」
「一人でやってるんだから、明日から有休を取ればいいだろう?好きなだけ休んでくれ」と父。
加護さんが笑いながら首をすくめた。
「はーい、すみませんねえ」と喜んでいた。
小林さんに電話した。
「今、父と加護さんも一緒にそちらに向かっているのですが、先に現地をゆっくり見学してから生家に行きますね」
「はい、承知しました」
車はやがて目的地に到着し、生家の前にある広い駐車場に滑り込んだ。
降りると、
「わーすご~い!」と加護さんがきょろきょろしながら感嘆の声を上げた。
「ほほう、随分変わったなあ」と父も目を見張っていた。
「うん、生家はあとで案内するよ」
そこへ小林さんが出て来た。
「いらっしゃいませ。ようこそいらしてくださいました」早速挨拶をしてくれる。
「はい、お久しぶりです。見学に伺いましたよ」と笑顔の父。
それから加護さんを紹介して、お互いに挨拶をしてもらった。
「それにしてもなんて広いんだろう?」
父が改めて敷地のスケール感を目の当たりにし、小さく息を呑んで驚愕している。
「今までは壁がありましたからね。中々全体の規模までは分かりにくかったと思います」と小林さん。
「じゃあ、小林さん、ゆっくり見学してもらいますから、あとで生家に行きますね」
「はい、分かりました。では昼食のご用意をしておきます」
「ありがとうございます」
終わるのが12時過ぎそうだったので、先に皆さんの昼食を済ませて貰うようにお願いした。
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