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第17話 加護サイド<優雅すぎるガーデン>
急な呼び出しで財団に来てみたが、その規模の大きさに驚愕した。
立花家の執事の小林さんに初めてお会いした。
彼は在宅中だったのに、隙のない美しいスーツ姿だった。
__これが由緒ある名家の執事なんだ!って思った。
威厳のある佇まいでこちらも緊張する。
そして挨拶を交わした後は、先に生家の横の蔵を紹介された。
昔の白い漆喰造りの蔵とは違うけど、
屋根やその先のくるっと反った部分はなんて言うのかな。
これが現代風の蔵だと主張している気がした。
そして、生家の横のSPの待機小屋も見せてもらった。
青みかかった紺色の壁、白い窓枠、白いレースのカーテン。
窓の下には鉢植えがあって、赤いゼラニウムの隙間から、アイビーが垂れ下がっていた。
ふわ~と見惚れた。出来過ぎじゃない?
「なんて可愛いんですか?まるで遊園地の受付みたいじゃないですか」
そばにいたSP達がどっと笑った。
「でしょう?それが狙い。生家と同じ雰囲気にしたんだよ」
自信たっぷりに微笑む院長。
ガーデンに行くと、苗はまだ小さめだけど、バラがあちこちに咲いていた。
壁にもつるバラが仕込んであった。
大枠のくくりは出来ているようで、数人の人が植えこみや手入れをしていた。
敷地の真ん中あたりに、上から下へ流れるであろう小川があった。
底は浅いが水色のタイルの他に、ビー玉があちこちに埋め込まれていて、初夏のきらきらとした日差しを反射して光っていた。
「ここはね。オープンしたら、井戸の水を還流させて流すんだよ」と院長。
「へえ、そうなんですねえ。井戸水が流れるガーデンなんだ」
「陽一、これは凝ったなあ~、本当にすごいよ」と理事でさえ感嘆していた。
私だって感心した。誰がこんなことを考えるんだろう?
「この庭はね、ガーデンデザイナーの大谷梨々子さんにお願したんだよ」
「え?あの時々雑誌に出てる人ですか?」
「うん。高かったよ~」とふふふと笑っていた。
私でさえ知ってる人だ。
「確かに金のかかった庭だと俺にも分かる。
大がかりだもんなあ~。全部計算してデザインしたんだろうな」と理事。
奥の壁側には、生ごみを堆肥(たいひ)に変える機械の小屋や、庭仕事や工事をするスタッフの小屋があった。
どれも雰囲気が統一されていて、一般的な農作業小屋とは全然違う。
さっきのSP小屋も顔負けの可愛らしさだった。
そして奥にある深井戸の前に立った。
「これはまたすごいな。この高台に深井戸があるのか?」と理事。
「そうなんだよ。俺もびっくりしたんだけどさ。
未来さんが言うには、江戸時代にはすでにあったはずで、この辺りは武家屋敷や下屋敷が集まっていたらしいよ。
それで深井戸は住まいのど真ん中に作るもんなんだってさ」
「へえ~」と、理事と私の声が揃った。
「それで水質を調べたら、立派に飲料水に使えるんだって。
だから内部を清掃して補強した。
おまけに見学用に全体を囲ったんだ。説明のPOPも出来てる。
上に江戸櫓を立てて蓋もした。良い感じでしょう?
災害時用には、外からも使えるように蛇口を用意したし、内部用にも蛇口と洗い場を設けたんだよ」
「それはすごいじゃないか? 感心したよ。災害時まで考えるとはなあ……」と理事。
理事が深く感心している。
同意見だったので、私はただ頷いていた。
この井戸の辺りは日陰を好む植物なのだろうか。
いろんな種類の草木が丁寧に植えられていた。
敷地の突き当たりは、すべて綺麗に築山にしてあった。
その一番奥にあるのが、本物の土蔵造りの蔵だった。
でーんと、そこだけが木々のそばで静かに圧倒的な風格を持って佇んでいる。
「鍵を持ってきたよ。ここはオープンしたら開けっ放しにするんだけどね」
中に入ると、床が黒光りするくらいに美しく磨き上げられた、こげ茶色の木の床だった。
正面には舞台のように一段高くなっている場所があり、中央には直径八十センチもありそうな、白地に青の染付の大皿が飾ってあった。
「これ凄いなあ。今時はこんなの使わないよな?」と理事。
「昔は毎日たくさんのお客様が来られて、家政婦さん達はすごく忙しかったって聞いてるよ」
「へえ~、それはまたすごいですね」
入り口から入った両側にはガラスケースが並んでいて、中には美しい染付の食器や漆器が収められている。
奥には正月用の酒器やお重の数々、金色の蒔絵が施された凄そうなお椀などが並んでいた。
「おい、どれもこれもすごいからさ、なんか記念に写真でも撮っておいたらどうなんだ?」と理事。
院長がにやっと笑った。
「実はさ、もう撮影したんだよ。しかも、有名な婦人雑誌の特別号で特集してもらうんだ」と院長。
「えっ、そうなんですか?」と私は驚きの声を上げた。
「俺もそう思ったんだよね。これって立花家というブランドじゃないかってさ。
それで、ただ仕舞っておくのはもったいないから、梨々子さんから出版社を紹介してもらって、本にして残すことにしたんだよ。
ここにあるお皿に実際に料理を盛り付けて、一緒に掲載したんだ。この時は家政婦さん達も大忙しで大変だったけどね」と院長。
「そうなのか? 抜け目ないなあ~、陽一は……」と理事。
その言葉に、私たちはどっと笑った。
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