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第18話 加護サイド<本丸御殿>

  それから、もうすぐ出来上がるというホテルを見せてもらった。 一軒はすでに内装が完成していて、2階建てで六室しかない。 ゆったりとしたスペースにバルコニーがガーデン側にあって、そこに座れば美しい庭が優雅に眺められる。 これって天国じゃないか? って思った。 「ここはいいねえ。母さんと美代さんも連れて来てやろうか? 庭の花を見ながらお茶したりするのは、母さんも喜ぶだろう」と理事。 ああ~申し訳ない……。 「私、ここに寮としてしばらく住まわせていただきますね」と、心の中でひそかに告白した。 内装が仕上がっている部屋を見学させてもらう。 壁は白く、床は茶色のフローリング。 ところどころにこげ茶色のアクセントが効いていて、クローゼットも同系色の扉で統一されていた。 トイレとバスルームは別で、洗面所には愛らしい柄のタイルがあちこちに貼られている。 「タイルの絵がかわいいですね?」 「だろう? イタリアに行った時のホテルがまさにこれで、すごく気に入ったんだよね」 「ここは一室の広さはどうなってるんだ?」と理事。 「一室三十八平米くらいかな。バス、トイレが独立しているからね。 あとは広めのツインベッドを置いて、ソファやテーブル、チェストと鏡を置く予定だよ」 「ほう~、それは普通のホテルでいうとスイートくらいか?」 「う~ん、それは分からないけど、一般的なツインルームよりは広いね」 「ここはこれだけで暮らせますよね?」 私はにんまりと笑いながら院長に言った。 「でしょう?」 「ここは食事はどうするんだ?」と理事。 「財団ビルのキッチンで作ったものをスタッフが毎回運ぶんだ。ガーデンの花の匂いを邪魔したくないからさ」 「なるほどな。でも、これだけゆったりしていれば快適でいいなあ」と理事。 財団ビルの方は三階まで柱が建っていたが、完成まではまだ一年以上かかるそうだ。 地下に倉庫や駐車場を作ったため、時間がかかっているらしい。 今はまだ全体がシートで覆われていて、中の様子はよく分からない。 そして、いよいよ生家にお邪魔した。 「こんにちは、お邪魔します」 「ようこそいらっしゃいました」 家政婦さんたちが温かく迎えてくれたが、よく見ると四人の他に男性が一人いた。 小林さんが全員を紹介してくれた。 その男性は、運転手兼庭仕事を担当する横森さんだった。 「家の中を案内するよ」と院長が、一階の隅々まで見せてくれる。 「一番奥がゲスト用で、造り付けのベッドが四つあるんだ。ここに来てもいいよ」と言ってくれたが、絶対に気を使いそうなので「遠慮します」と笑顔で辞退した。 その手前には個室が三つ並んでいる。 「ここは事情があってうちで預かっている三人の個室なんだ。高校生の女の子が二人と、大学生の青年が一人。今度紹介するね」 へえ~、そうなんだ。その事情が少し気になるけれど、そのうちに分かるか。 「おい、陽一、二階はどうなってるんだ?」と理事。 いいぞ、私も聞いてみたかった! 私たちは玄関横にあるエレベーターに乗り込んだ。 「ほう~、思い切り良くエレベーターをつけたなあ」と理事。 「俺も歳だからさ」と院長。 理事が吹き出した。 二階で降りると、そこにもまた玄関があった。 「独立した一戸建てのような造りにしたんだよ」と院長。 「へえ~、それはまた贅沢だな」と理事。 そして玄関を入ると窓も大きくて、テラスのようになっている。 日差しがとても明るい。 でも、テラスの透明の天井には、レースの覆いのようなカーテンがあった。 ああ、日差しに合わせて開け閉めできるようになっているんだ。 リビングに入ると、私は思わず足が止まった。 なにこれ……? 呆然と見渡す。美しすぎる。 「おいおい、ここは何だ? イタリアの高級ホテルか?」と理事。 よく言ってくれたわ。 「ちょっとね。イタリアで泊まったホテルのインテリアデザインが気に入ってさ。そのままとまではいかないけど、やってもらったんだよね」 「おい、まさか本当に向こうからデザイナーを日本に呼んで頼んだのか?」 「うん。まあね。それくらい良かったんだよ」 淡いグリーンの壁紙に、マホガニーの家具がしっくりとなじんでいる。 窓のカーテンも素敵。これはもう夢だわ。 「家具はどうしたんだよ? イタリアっぽいけど、サイズ感がなんかちょっと違うな」 いくつかの椅子の座り心地を試しながら、理事は首をかしげる。 さすが、見るところが鋭いよ~。 「えへへへ、さすがだねえ、分かっちゃった? 日本人の体型に合わせて作ってもらったんだよ」 「……財閥はやっぱり違うなあ~」と、さすがに理事も呆れていた。 あとは奥の寝室や書斎なども見せてくれた。 寝室がまた落ち着いていて美しかったし、浴室のイタリア製タイルを使った洗面台のきれいなことといったら! もう、ここ以外の場所なんて目に入れたくないと思った。 あーあ、こんな空間を見てしまったら、自分の現実に戻るのが嫌だよ~。

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