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第19話 加護サイド<魅惑のケーキ>
そこへインターフォンから穏やかなアナウンスがかかった。
「♪~お茶の支度が整いました~♪」と、由紀さん。
たしか筆頭家政婦さんだったかな?
案内されて一階のリビングへ向かうと、ダイニングテーブルの上には素敵な白地にブルーの花柄のティーセットと、美味しそうなケーキやフルーツの盛り合わせが用意されていた。
やったー! デザートもここは特別級だ。
お皿の上には、コロンとした可愛いクッキーがアイスクリームに添えられている。
「このクッキーは、うちにいる高校生の里奈ちゃんが作ったココナッツクッキーです。こちらも里奈ちゃんが作ったブルーベリータルトなんですよ」
「えっ、高校生なのに、こんな本格的なものが作れるんですか?」
私は思わず声を上げて驚いた。
「なかなか上手でしょう? 将来は財団のカフェでお菓子を作ってほしいからね。今は由紀さんたちの下で、お菓子作りだけでなく料理全般の修業中なんだよ。
奨学金を出して製菓の専門学校に行かせてやれたらいいなと思っているんだ」と院長。
あらまあ……。
すっかり感心しながら、さっそく一口味見をしてみる。
「ほう~、これはうまいなあ~」と理事。
「なんて美味しいんですか……!」私だって褒めちゃう。
「これはカスタードクリームに、キルシュというサクランボのお酒が少し入っているんですよ」と由紀さん。
口いっぱいに広がるカスタードクリームと、甘酸っぱいブルーベリーの風味が最高だ。
あれ、もしかしてほんのり香るのがキルシュなのかな?
そんな上品な香りがした。
「すごいでしょう? 里奈ちゃんはすごく器用だし、何より本人がものすごく一生懸命だからね」と院長は嬉しそうに目を細める。
そして美味しいお茶の時間を満喫したあと、理事がお帰りになると言うので、私も一緒に失礼した。
帰り際、院長は最近になって財団が新しく手に入れたという周辺の土地を何軒か見せてくれた。
「ここは一体どうしたんだ?」と理事。
「うん、敷地に余裕がなくてさ。来客用の駐車場もたくさん必要だし、資材用の倉庫も欲しいからね。それで近所の方々に『土地をお譲りいただけませんか』って手紙を配ってみたんだよ。そしたら、向こう三年くらいは近くで工事の音がうるさくなるし、高齢化もあって、駅近のタワマンに引っ越したいっていう方たちが、四軒ほど譲ってくれたんだ」
「ほう~、それはうまくいったな。まあ、金があったってことだな」と理事。
その言葉に、院長と私は思わず「ぷっ」と吹き出してしまった。
院長はただ笑っていた。
「そのうちの一つの土地には、未来さんが借地として自分の設計事務所を建てたんだよ。で、残りの土地は倉庫にするか、ファンクラブのグッズ置き場にするか、あるいはクラブの事務所にするか……まだ具体的には決まってないんだけどね」
「ちょっと待て、ファンクラブのグッズってなんだ?」と、理事は怪訝な顔をした。
「グッズっていうのは、タレントの顔写真やロゴが付いた小物のことだよ。
ほら、颯太が浅田タワーにある音楽事務所『アニメプラス』と契約しただろ?
それに、ミツワにヘルプに来てくれていた吉沢達也っていう新人歌手も、一緒にアニメプラスに託したんだ。
うちには本格的に歌手を育てるノウハウがないからさ。
その二人だけでも、増え続けるファンへの対応やグッズの販売・管理をしてもらえないかと、アニメプラスから依頼があってね。
財団の仕事として引き受けたんだよ。
それと、ミツワの社長が『優秀な広報の五人をやる』って言って、そのまま財団に寄越してくれたんだ。この五人がまた本当に凄くて、めちゃくちゃ根性があって優秀なんだよ。加護さん、今度ぜひ紹介するね」
「はい、ありがとうございます。とても楽しみです」
「結局のところ、俺にはさっぱり分からん。ファングッズって一体なんだよ?」と、理事は首を傾げ続ける。
「やっぱり分からないですよね?」と、院長はクスクスと楽しそうに笑っていた。
「ネットでも販売しているけれど、颯太や達也君にはそれぞれファンクラブがあって、ものすごい人気なんだよ。
その顔写真が付いたクリアファイル、タオル、ハンカチ、うちわ、マスコット、MV、キーホルダー、ぬいぐるみ、ペンライト、Tシャツ、トレーナー……もう何でもありだよ。
あまりにも需要が凄すぎて、保管用の倉庫も、専任のスタッフも絶対に必要なんだ。アニメプラスの少数精鋭じゃ、とても忙しすぎてやりきれないんだよ」と院長が熱弁する。
「はあ~ん……。よく分からんけど、それで儲かるならまあいいんじゃないか」と、理事はどこか遠い目をしながら納得した。
私はそのやり取りを聞きながら、こっそりと口に手を当てて笑いをこらえた。
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