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第23話 陽一サイド<湿布>
風呂でゆっくりとこわばった筋肉を温めて長湯した。
その後はロボットのような動きで、そっとベッドに横になった。
ああ~会社務めじゃなくて良かった……。
そしてあっという間に眠ってしまった。
目が覚めたら、颯太がベッドに入って俺を見つめていた。
「あれ、もう帰ってたの?何時なんだろう」
枕元の時計を見た。
「先生、どうして無理するの?」
「無理じゃないよ。まだ死んでないし」
我ながらおかしくなった。
「湿布を貼ってあげるよ、いっぱい買ってきたから」
ふと見ると、なんと箱買いしたらしい。これはやめられないな。
「じゃあ、ふくらはぎに貼ってくれる?」
「うん」
うつ伏せになって足を出した。というか、俺はパンツはなんとか履いたものの、シャツも着れずにベッドでダウンしていた。
「他にも貼ってあげるよ」
背中は裸だから貼りやすいな。
ついでに両方の肩と腰にも貼ってくれた。
ああ~なんだか怠い。
起きて下に行く気になれない。
でも、ちょっとお腹が空いた。
「ご飯を貰ってこようか?」
「うん」
素直に頼むと、颯太がニヤッとした。ああ~笑われた。
そのうちにワゴンに乗せて食事を運んでくれた。テーブルに広げてくれる。
寝室も広いので、ちょっとお茶が飲めるようなテーブルと椅子がある。
「テーブルまで来れるの?」
「う~んと、多分ね」
颯太がそばに来て起こしてくれようとした。何とかぎこちなく起きられた。
そして、立とうとするとバタンと倒れた。
え?なんで?自分でも驚いた。足がまっすぐ立たなかった。
足を見ると、ふくらはぎがパンパンに張っていた。
ヤバい……。座り込んだまま、ふくらはぎをさすった。
ふと見ると、颯太が呆然と俺を見ていた。
「重症だね。トレーナーに言っとくから、治るまで休んでね」
冷たくそう言うと、さっさと一人でテーブルについて食べ始めた。
立てないなら、ベッドによじ登るように横になるしかなかった。
ああ~腹減った。あとはふて寝だ。
ベッドで目を閉じた。
眠ろうとしたが、お腹もすいたし、トイレに行きたくなった。
それに喉も乾いた。
そうだ、奥の手があった!
「颯太、悪いけど車いすを持ってきてくれない?」
パタッと颯太の手が止まった。
そして車いすを運んできてくれた。
「一人で乗れるの?」
「わかんないけど、やってみる」
これはいいチャンスだろう。
足が不自由な人の動きが勉強できるんだ。自分で……。
ベッドから身体を起こして足を床に降ろす。
そして車いすの取っ手に手をかけてくるっと向きを変えて座れた。
おお、俺もできるじゃないか。
そしてトイレに行った。
寝室のトイレは車いすが入れないので、玄関横の大きなトイレに行った。
ここはバリアフリーにしてある。
よし、ここでなんとかトイレは済ませた。
手すりを付けておいた俺は偉いよ。感心した。
あとは食事だな。寝室に戻ってテーブルに着いた。
颯太はスマホをいじりながらコーヒーを飲んでいた。
ああ、ポットで用意してくれたんだ。気が利くねえ。
そしてようやくご飯が食べられた。
しかし、その間中、チラッと颯太が冷たい目でこちらを見ていた。
「颯太、なんか冷たい目で俺を見てる?」
颯太がぷっと笑った。
「だって見物じゃん」
「あのね、颯太もダンスを再開した時は湿布だらけで同じだったでしょう?
誰が毎日面倒を見たんだっけ?」
シーンとした。わざと颯太の顔を見なかった。
「わかったよ。じゃあ、コーヒー飲む?」と颯太。
思い出したらしい。ちょっとおかしくなった。
「飲む」
でも、少しだけ頬が緩んだ。
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