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第25話 陽一サイド<男の務め>
その夜、早速颯太に菜の花のダンススタジオに通うと話した。
「え、土曜日に行くの?どこにも出かけられないじゃない」
唇を尖らせて抗議をされた。
「行けるよ。終わってから行けばいいでしょう?」
「だって踊ったら1週間は動けないでしょう?」 が~ん。
待てよ。俺がこの三日間、颯太の相手が出来なかったことを根に持ってるな。
「もしかして、俺が颯太の相手を出来なかったことを恨んでる?」
ギクッと俺を見て視線が泳いだ。
「はは~ん、やっぱりね。それはお互い様でしょう?
それにそのうち俺だってダンスに慣れるし」
「そうなの?__絶対だよ!」
なんの約束なんだよ、全く……。
「そうだ、颯太も一緒に来ればいいじゃない?北原先生や莉子さんも来るってよ」
「え、いいよ……なんだか恥ずかしいもん」
1年前のヒートの時の診察が尾を引いているのか。きりがないな。
「颯太。俺って趣味がないでしょう?
颯太がダンスに夢中になるくらいだから、きっと面白いんだと思う。
それを俺も知りたいんだよね」
「ふ~ん……」
なんだか面白くなさそうな表情で俯いていた。
悪いな、颯太。ここは無視だ。
まだ一回しかダンスをしていないのに、未だに車椅子だよ。
明日こそはまともになりたいんだ。
昨日と今日は朝にゆっくりとお湯に浸かった。
少しは筋肉がほぐれるかな?
今度の土曜日には行かないといけない。
北原先生はうまいのかあ?
あ、確か前に代々木公園のステージでちょっと踊ってたよね?
きっと踊れるんだ。うわ~すごいよねえ。
あの美貌で踊るんだ。皆釘付けだよ。
とにかく、車いすに座ったまま、両手や肩をほぐすようにくるくる回したりした。
よし、明日の朝もお湯に浸かろう。
そうだ、閃いた!
「颯太、ねえ、出来ればダンススタジオに差し入れを持ってきてくれない?
皆すごく喜んでくれると思うんだけど、どうかな?」
「……いやだ」
チーン。
もう触るのはやめた。
「颯太、一緒にお風呂に入ろう」
「……入れるの?」
「何とかね、大丈夫だよ。洗ってあげるから入ろう」
「うん」
ようやく素直になった。ああ~うちのお姫様~。
それでも何とか颯太の髪や身体を洗ってあげた。
こうなったら、俺は後回しだ。
ササッと――は出来ないので、もっさりと不器用に自分を洗う。情けない。
二人で湯船に浸かった。
入ると身体が楽に動くようになる。
颯太を抱きしめてキスをした。
颯太も寂しかったんだよね。
俺の手にしっかりと手を絡めた。
「颯太、上がろうか?一緒に寝よう」
「うん」
ようやく目をぱちぱちとして、可愛い眼差しをくれた。
今夜はいっぱい可愛いがらないと駄目だね。
そのままお風呂を出ると、身体をバスタオルで拭いてあげた。
残念ながら抱いてベッドに運んであげられないけど、バスローブを着せた。
俺もお揃いのローブを着る。
「先生、本当に大丈夫?無理してない?」
(無理ばっかりしてるよーと心の中で叫んだ)
「うん、大丈夫だよ。出来ない時は言うから、その時は颯太が助けてね」
男は顔で笑って心で泣くんだ。
まだ泣き言をいうのは早い。10年後を考えろ。
いや待てよ。
確か吉沢達也君の旦那さんも、相当歳が離れていたな。
10歳以上違うはずだから、うちと同じくらいか?
しかも日本有数の事業家だ。
俺の何倍も忙しいだろうし、世界を回る人だ。
くそー、悔しいけどタフだな。
俺も今は弱ってるけど、なんとか頑張るぞ。
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