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第32話 陽一サイド<面接日告知>

 昨日の佐久間総合病院からの応募ショックを引きずったまま、翌日を迎えた。 今日の応募状況を確認してから父に報告しようと思い、16時半から時間を貰った。 朝のうちに、俺は未来(みらい)さんの設計事務所へと足を運んだ。 「また変更ですか?」 微笑みながらも、彼は明らかに警戒の色をにじませていた。 「未来さんなら、すぐに何とかできると思う」 俺が切り出したのは、未来ビルの2階に皮膚科を新しく組み込むことだ。 レーザーなどの簡単な処置が行える手術室も追加したい。 そして、1階には防音仕様の診察室を――。 「ひゅー」と、未来さんが息を呑む音が響いた。 「全然、小さな注文じゃないじゃないですか」 驚いて目を丸くして抗議される。 「できる範囲でいいんだ、どうかお願いします」 ぽかんと口を開けた彼を見つめながら、俺は深々と頭を下げた。 「……はい、何とか検討しますよ。ただ、それをやるとスタッフの休憩室がなくなりますが、いいんですか?」 「はい、構いません。それより、医局に準じるようなスペースはありますか? そこをナースステーションと兼用にしたいです。 それと、医療事務の保険請求をするバックオフィスとしても使いたいのです」 「分かりました。何とかスペースを寄せ集めてみますよ」 未来さんは苦笑いしながらも引き受けてくれた。 「助かるよ、いつも無理言って悪いね」 事務所をあとにして、俺はミツワタワーへと向かった。 事務室のドアを開けるなり、 「院長、近隣の大学病院から、ようやく精神科医の応募がありましたよ!」 加護さんが弾んだ声を弾ませて報告してくれた。 「わあ、良かった……! 最高の気分だ」 ようやく、肩の重い荷が下りた気がした。 医師の募集要項には、オンライン診療あり、無料でホテルの客室付き、さらに昼食付き。 あるいは無料の寮完備(大浴場・食事付き)。木曜・日曜・祝日休み、土曜は12時まで。 駅からのシャトルバスを出し、マイカー通勤も可――。 これでもかと好条件を並べ立てた甲斐があったというものだ。 しかし、肝心の眼科医、皮膚科医、そして小児科医はまだ未定のままだ。 まだ募集を始めて二日目だというのに、欲を出しすぎだろうか。 できれば医療スタッフの面接も一週間以内に行い、一気に体制を固めておきたいところだ。 現在のところ、1階の診察室は3室。 ●内科(代謝内科):宇津木涼介医師 ●小児科:未定 ●耳鼻科:妹の三上楓で決定 ●予備・フレキシブル枠として:精神科 そして2階は、眼科と皮膚科、さらに爪外来(美容サロンとも連携する)を配置する。 当初の予定に比べ、すっかり欲張りなクリニックビルになってしまった。 財団の事務所には、スタッフたちが黙々とパソコンのキーボードを叩く音だけが静かに響いていた。 「加護さん、その後の応募状況はどうですか?」 「すごいですよ、院長! 皮膚科医からさっそく打診がありました。詳しい条件を知りたいそうです」 「それはもっともだな。それじゃあ、精神科医と皮膚科医の面談を組みたいから、都合のいい日を聞いてもらえますか? 平日でもいいし、午後6時や7時の仕事終わりでもいいですよ」 「はい、承知しました!」 そして15時を迎える頃には、応募書類の数はさらに増えていた。 「院長、これ、どうしましょう……?」 隠しきれない笑みをこみ上げさせながら、加護さんが書類の山を指し示した。 ガシャ、ガシャと、自動プリンターから応募者カードがタッタッタと音を立てて吐き出されていく。 出てきたそばから目を通していくが、嬉しい悲鳴を通り越して明らかに数が多すぎる。 今回の募集はあくまで「どれも若干名」だ。 「こんなにたくさんの人、全員は採用できないぞ。どうしたものか……」 困惑する俺をよそに、加護さんは余裕の笑みを浮かべた。 「こうなったら、すぐに募集広告を書き直しましょう! いっそ面接日をあらかじめ告知して、希望者に直接足を運んでもらうんです。その中から選んで、あとで採用通知を出す方法にしませんか? 医師と技師は、これまで通り院長が直接面談して決めてください」 「よし、その手で行こう」 俺はすぐ広報に伝え、募集広告の急遽、書き直しを頼んだ。 面接日は、今度の土曜日の14時から18時に設定する。 混乱を避けるため、予約なしのウォークイン形式にし、 14時〜:技師 15時〜:ナース 16時〜:医療事務および看護助手 17時~:その他の職種 というタイムスケジュールを組んだ。 そうして時計の針が16時を指した頃。 俺と加護さんは、夕暮れの青山へと向かった。

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