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第35話 陽一サイド<眼科の行方>
それから3日後に山本先生から電話が来た。
「先日はありがとうございました。
お陰様で今年の固定資産税は無事に支払い済みでした。
それで、財産管理会社の方にもいらしていただき、土地を購入して建物を建てていただけるそうです。
ただ、実際の建築に取り掛かるまでは1年ほどかかるそうなので、その間は賃貸として今の家に住むことができるとのこと。本当に助かりました。
私自身の結論としては、財団のクリニックができる1か月くらい前までは大学病院で仕事を続け、その後にお世話になりたいと思います。
そしてスタッフの希望なのですが、それぞれの希望が分かれました。
事務の2名はミツワで仕事をお願いしたいそうです。
あと、パートの助手2名は近所に住んでいて庭仕事が好きだとのことで、ガーデンの仕事を希望しています。
ナース1名と視能訓練士1名は佐久間総合病院でお世話になりたいそうです。
よろしいでしょうか?」
「ええ、いいですよ、良かったですね。
それでは、スタッフの皆さんの履歴書を一括して、財団の私宛てに送っていただけますか?
後日、私からスタッフの方に直接連絡します」
この顛末をミツワの広報スタッフと執事の小林さん、山川弁護士、上川秘書に伝えた。
「ガーデンスタッフの2名はすぐに財団のスタッフとして手続きをして、働き始めてもらいましょう。
小林さん、この二人のお世話をお願いできますか?」
「かしこまりました。お任せください」
小林さんが穏やかに微笑んでくれた。
「あと、ミツワで事務を希望する2名はどうしましょうか。
ここで仕事をしてもらった方がいいのでしょうか。皆さんのご意見はいかがですか?」と山川弁護士が尋ねる。
みんなが顔を見合わせたが、さっと山下さんが手を挙げた。
「もう渡りに船ですよ。それこそ業務委託を受けているファンクラブの応対や問い合わせをお願いしたいです。
職種は変わりますが、すぐに財団のスタッフとして登録できるでしょうか?」
一同は思わずニヤリと笑った。
「もちろんできますよ。そうしましょう。本人たちも喜ぶはずです」と山川弁護士。
「それでは、佐久間病院に行く2名はどうしましょうか。
もちろん佐久間のスタッフとして直接就職することもできますが、そうすると雇用保険や社会保険などが、その都度切り替わってしまいます。
出来れば財団に就職してもらい、佐久間病院へ派遣する形にできないでしょうか?」と俺は切り出した。
短期間で転職の履歴が増えてしまうのは、本人たちの責任ではない。あまりに気の毒だ。
「いいですよ、何とでも対応できます。その辺りはお任せください」と山川弁護士は心強く言ってくれた。
とりあえず、決定事項を山本先生にメールで伝えておいた。
そうこうしているうちに、本日は19時から精神科医の面接が控えている。
16時頃、颯太が事務所にやって来たが、動作がどこか鈍く、いつもの彼とは違っていた。
「ふう……」と、小さく深いため息をつく。
「どうしたの?」
「なんか疲れちゃったの」
そう言って、肩をだらんと落としていた。
「じゃあ、先に帰って休んだら?
今日は19時から面接があるから、俺の帰りは少し遅くなるよ」
「そうなんだ……。分かった。じゃあ、帰るね」
そう言ってゆっくりと立ち上がろうとしたが、その動作のぎこちなさが妙に気になった。
「あ、待って。ちょっと診察しようか?」
身体をそっと抱き寄せて、そのまま会長室へと連れて行った。
体温を測り、血圧を測り、聴診器をあてる。
熱はなかった。だが、体調不良の予兆ということもある。油断はできない。
「颯太、熱はないけれど、帰ったらすぐに何か食べてから休んでね。
由紀さんにも電話しておくから」
「う~ん、あまり食べたくないなあ」
「じゃあ、おかゆを作ってもらうのはどう? それなら少しは食べられる?」
「わかんないけど、その時に決めるよ」
そうして颯太は、SPと一緒に帰路についた。
由紀さんにはすぐに電話を入れておいた。
面接を急いで終わらせて早く家に帰ろう。
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