37 / 59
第37話 颯太サイド<独り占め>
昨日は疲れていて、帰宅すると何も食べずにすぐ寝てしまった。
何時だか分からないけど、いつの間にか先生がベッドに来て腕枕をしてくれていた。
温かい腕の感触に包まれて、安心して先生の胸に顔をうずめた。
「起きてるの?」と小声で聞かれた気がしたけど、眠かったから「寝てる」――って言っちゃった。
先生の「そうか」って声が耳の端っこで聞こえた。
じっと寝顔を見てたのかな?
先生の「ふっ」と笑った声で、俺も笑いそうになった。
ダメダメ__俺は寝てるんだから内緒なの。
ああ~でも頭が痛い……。どうしたんだろう?
起きてられないの。
眉が寄っちゃった気がする。
「じゃあ、ちょっと診察しておこうか?」
先生はベッドから出て、診察が始まった。
熱や血圧を測られ、聴診器が胸に当てられる。
その冷たくて心地よい金属の感触で、診察されている……。
ふ、なんだかそれだけでうれしい。
先生が独り言のように「熱が少しあるよ」って言ってた。
___そうなんだ。だから頭が痛いのかな?
「じゃあ、このままぐっすりと眠ってね」
やさしく布団を肩口まで寄せてくれた。
「うん」と、心の中で返事をした。
しばらくして、先生がベッドに入って来た。
すぐに腕枕をしてくれたから、先生の胸の匂いをいっぱい吸い込みながら顔をうずめた。
これが一番好き。
長かった一日が終わった。
そして知らない間に俺は眠っていたらしい。
気が付いたら先生に肩をそっと叩かれて、声を掛けられていた。
「颯太、朝だよ。おしっこ出る?取ってあげるよ」と声を掛けられた。
「え?」目を少し開けた。
「無理に起きなくていいよ。すぐに点滴をするから、先におしっこ出して」
足の間に__なんか冷たい感触が当たった。
恥ずかしさと申し訳なさを覚えつつも、言われた通りに取ってもらった。
先生はトイレから戻って来ると、今度は点滴台を持ってきた。
「颯太、少し点滴をするよ。まだ熱があるから今日と明日は休んでね」
そして冷たい液体が血管へと滑り込む点滴が始まった。
不思議なんだけど、先生の注射ってほとんど痛くない。
前に「なんで?」と理由を聞いたことがあるんだけど、
少し微笑んで、
「あれはアルコール分が滲みてチクッとするんだよ。
一瞬蒸発するのを待ってから刺すと、あまり痛くないよ」って言ってた。
「ふ~ん……」先生の目がやさしい。
病気になるのは好き__先生がいるから。
「今日は土曜だけど、先生も休んでいいの?」確認した。
先生は「う~ん」と、少し唇を一文字にして困っていた。
「あのね。今日はずっと一緒にいてあげたいんだけど、午後からミツワで沢山の面接があって、ずっと続くんだよ。
多分終わるのは7時くらいになると思うんだ。だから今日はここで寝ててくれる?」
……すぐに返事が出来なかった。
「だって寂しいもん」ぽつんと言った。
「じゃあ一緒にミツワに行って、会長室のベッドで寝てる?
それだったら時々顔を見に行けるよ」
「うん」と頷いた。そっちの方がよっぽどまし。
「じゃあ、家でお昼を食べてから、一緒に行こうね」
俺の髪をやさしく撫でながらそう言ってくれた。
その手を引っ張ってほっぺにくっつけたら、温かくて心地いい。
そのまま、また知らない間に眠ってしまったらしい。
でも目が覚めたら、先生も一緒に寝ててくれた。
うれしくてぎゅっと抱きついた。
「起きたの?」
「うん、目が覚めちゃった」
「お昼ごはんを食べてから一緒に行くよ」
食事をして洗面を済ませたら、
スウェットに着替えて「車いすで移動するよ」って言われた。
あ、なんだかこのままミツワに行くの恥ずかしいな……。
でも俺が行くって言い出したから、しょうがない。
目をつぶってることにした。
先生がくすっと笑っていた。バレてるのかな?
ともだちにシェアしよう!

