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第37話 颯太サイド<独り占め>

 昨日は疲れていて、帰宅すると何も食べずにすぐ寝てしまった。 何時だか分からないけど、いつの間にか先生がベッドに来て腕枕をしてくれていた。 温かい腕の感触に包まれて、安心して先生の胸に顔をうずめた。 「起きてるの?」と小声で聞かれた気がしたけど、眠かったから「寝てる」――って言っちゃった。 先生の「そうか」って声が耳の端っこで聞こえた。 じっと寝顔を見てたのかな? 先生の「ふっ」と笑った声で、俺も笑いそうになった。 ダメダメ__俺は寝てるんだから内緒なの。 ああ~でも頭が痛い……。どうしたんだろう? 起きてられないの。 眉が寄っちゃった気がする。 「じゃあ、ちょっと診察しておこうか?」 先生はベッドから出て、診察が始まった。 熱や血圧を測られ、聴診器が胸に当てられる。 その冷たくて心地よい金属の感触で、診察されている……。 ふ、なんだかそれだけでうれしい。 先生が独り言のように「熱が少しあるよ」って言ってた。 ___そうなんだ。だから頭が痛いのかな? 「じゃあ、このままぐっすりと眠ってね」 やさしく布団を肩口まで寄せてくれた。 「うん」と、心の中で返事をした。 しばらくして、先生がベッドに入って来た。 すぐに腕枕をしてくれたから、先生の胸の匂いをいっぱい吸い込みながら顔をうずめた。 これが一番好き。 長かった一日が終わった。 そして知らない間に俺は眠っていたらしい。 気が付いたら先生に肩をそっと叩かれて、声を掛けられていた。 「颯太、朝だよ。おしっこ出る?取ってあげるよ」と声を掛けられた。 「え?」目を少し開けた。 「無理に起きなくていいよ。すぐに点滴をするから、先におしっこ出して」 足の間に__なんか冷たい感触が当たった。 恥ずかしさと申し訳なさを覚えつつも、言われた通りに取ってもらった。 先生はトイレから戻って来ると、今度は点滴台を持ってきた。 「颯太、少し点滴をするよ。まだ熱があるから今日と明日は休んでね」 そして冷たい液体が血管へと滑り込む点滴が始まった。 不思議なんだけど、先生の注射ってほとんど痛くない。 前に「なんで?」と理由を聞いたことがあるんだけど、 少し微笑んで、 「あれはアルコール分が滲みてチクッとするんだよ。 一瞬蒸発するのを待ってから刺すと、あまり痛くないよ」って言ってた。 「ふ~ん……」先生の目がやさしい。 病気になるのは好き__先生がいるから。 「今日は土曜だけど、先生も休んでいいの?」確認した。 先生は「う~ん」と、少し唇を一文字にして困っていた。 「あのね。今日はずっと一緒にいてあげたいんだけど、午後からミツワで沢山の面接があって、ずっと続くんだよ。 多分終わるのは7時くらいになると思うんだ。だから今日はここで寝ててくれる?」 ……すぐに返事が出来なかった。 「だって寂しいもん」ぽつんと言った。 「じゃあ一緒にミツワに行って、会長室のベッドで寝てる? それだったら時々顔を見に行けるよ」 「うん」と頷いた。そっちの方がよっぽどまし。 「じゃあ、家でお昼を食べてから、一緒に行こうね」 俺の髪をやさしく撫でながらそう言ってくれた。 その手を引っ張ってほっぺにくっつけたら、温かくて心地いい。 そのまま、また知らない間に眠ってしまったらしい。 でも目が覚めたら、先生も一緒に寝ててくれた。 うれしくてぎゅっと抱きついた。 「起きたの?」 「うん、目が覚めちゃった」 「お昼ごはんを食べてから一緒に行くよ」 食事をして洗面を済ませたら、 スウェットに着替えて「車いすで移動するよ」って言われた。 あ、なんだかこのままミツワに行くの恥ずかしいな……。 でも俺が行くって言い出したから、しょうがない。 目をつぶってることにした。 先生がくすっと笑っていた。バレてるのかな?

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