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第39話 加護サイド<佐久間病院の応募者>

水野先生の採用が決まり、院長が「佐久間病院はまとめて面接しようか?」と言った。 「大賛成です」 だって実家のスタッフのようなもんでしょう? 時短で十分だ。ゾロゾロと皆が部屋に入って来た。 因縁の宇津木涼介内科医。専門は代謝内科だ。 放射線技師の唐木田雄二 臨床検査技師の唐木田真理 この二人は夫婦だ。 ナースのベテラン、金沢美恵子 ナースの中堅、満山順子 ナースの新人、野々村春子 以上。 「良かった。増えてないよ」と小さな声で院長が言った。 「皆さん。お久しぶりです。ようこそ」 院長が声を掛けると、皆が一斉にお辞儀をした。 なんだかみんなニヤッとしていて、何か言いたそうな視線を私に向けた。 「では一人ずつ応募動機を話していただけますか?順番にどうぞ」と院長。 「理事が応援を派遣すると発表されたので、早い者勝ちかなと思って名乗り出ました。そろそろ環境を変えたかったということもありますが、財団の趣旨が素晴らしいので、及ばずながらお手伝いをさせてください」 宇津木医師が静かな微笑みを院長に向けていた。 全く、調子がいいんだから……。 ちっとも変わらない。本当は違うだろ? 放射線技師の唐木田雄二、 「夫婦で佐久間を出るのもどうかと思ったのですが、なんせ家が近いんですよ。坂道を降りた商店街の裏に住んでいます。近ければ、急な対応や呼び出しにも応じることができます。財団の趣旨もすごくいいですしね。 何とか夫婦とも一緒にお願い出来ないでしょうか?」 奥方の真理さんも一緒にうんうんとうなずいていた。 良いねえ~夫婦は。意見が合ってるよ。 そしてナースが3人。これがめちゃ大変。 ベテランナースの金沢美恵子が待ってましたとばかりに口を開いた。 「あのう、加護室長、じゃなかった部長なんですね?すご~い!夢がありますねえ。ぜひ財団でご一緒させていただけないでしょうか?私たちに出来ることはさせてください。どうか、お願いします」 いつもなにかしら牽制してくる金沢美恵子。 その”お願いします”というところで3人の声が綺麗に揃った。 練習していたのか? 院長の顔を見ると、ニヤニヤしちゃって……なんなのよ? 「はい、分かりました。皆さんのことは理事の許可が出ていますので、ぜひ財団でご一緒しましょう」 いきなり皆が「わ~」と拍手喝采だ。 甘すぎる!最初が肝心だ。 財団で遊ぼうと思っていないか? 「加護さんから何かありますか?」と院長。あるさ。 「財団はすべて借金から始まっています。120億の全額です。 これをすべて回収しなければなりません。医師は一人でも多くの診療をお願いします。 そしてやさしく笑顔を忘れずに、患者さんの心をつかんで下さい。 他の皆さんは、少人数で沢山のことを兼任していただくことになります。 一応ナース職でも、ある時は保母として赤ちゃんの世話をしたり、弱者の皆さんのお世話をすることも範囲になります。ナースだから他のことはしない、なんて甘えはここでは通りません。 クリニックだけではないです。接客業が入るかもしれません。 人手不足のところは応援に行く場合があります。 全員、インカムを付けます。ホテルの朝食を運ぶ人がいなかったら、『誰か手伝って!』と応援を呼ばれます。 手が空いていたら飛んで行ってください。全員が少ない人数で助け合わないといけません。 患者さんはお客様です。リピーターになってもらえるように、誠心誠意尽くしてください。 笑顔も声を精一杯やさしく親切に、感じ良く接して下さい。 仏頂面は減点します。 爪外来の練習にも参加してほしいし、美容施術についても一緒に勉強することになります。 爪外来の手が回らなければ、ナースも爪のケアをしてください。 そういう職域の垣根はないものと思っていただきたいです。よろしいでしょうか?」 はあ~、言いたいことは言った。 院長を見ると、吹き出しそうな笑いを堪えているようだった。 しかし、皆は、急に神妙な表情をしていた。 院長「今、加護部長の話の通りで間違いありません。いろんな役をこなして欲しいです。仕事の垣根はありません。それを肝に銘じてほしいのです。それでもよろしいでしょうか?」 「‥‥‥はい」一瞬遅れて皆の返事が返って来た。 佐久間を出ると言ったんだ。 ここに来て今更嫌とは言えないだろう。 宇津木医師が微妙な表情で私を見つめていた。知らん。

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