42 / 59
第42話 加護サイド<自滅の危機>
月曜日、昨日の面接の疲れも取れないままに出勤した。
今朝は全体会議がある。
昨日の面接の結果も大事だが、私の懸念は他にある。
「お早うございます、昨日の面接はお疲れさまでした。では面接の結果を山下さんから発表してください」
……報告が終わり、今後について話すことになった。
真っ先に手を挙げた。
院長が「あれ?」という表情で、どうぞと手を差し出した。
「今のペースだと、近いうちに我々は自滅します」
ハッキリと懸念を訴えた。
「え?」皆が驚いた表情で私を見た。
「財団の計画によると、カフェ、イタリアの小物のショップ、ソフトクリーム売り場、花の鉢植えを売るガーデンショップ、商品の発送受付場、他にもいろいろあります。
しかし、カフェだけを見ても、私の試算だと土日のスタッフはざっと15人は必要です。
我々には、もう細かいことをやる時間はありません。
解決策として、ショップごとに責任者を大至急見つけ、人材の確保を含めて店づくりを任せ、レイアウトも発注も、スタッフの教育もお客さんの動線までも考えてもらう。
予算や目標も含めて、すべてを計画的にできる優秀なリーダーが必要です。
そうやって振っていかないと、我々だけでやるのは無理です。
カフェに15人いても、スタッフの昼食が取れるかどうかは分かりません。
土日は全体に大勢のバイトを入れないと無理です。
ガーデンショップなら最低でも社員が4人〜5人。
小物のショップも同じくらい必要です。
それでも突発的な休みや昼食などを考えると回りません。混雑すればもっと人材が必要です。
大至急、ショップごとの責任者を採用して、すべてを振りませんか?
それと、ガーデンの休みですが、水曜と木曜日の連休にしてほしいです。今度から土日がメインになるし、交代で休みが取れるほどの人材もいません。
もちろんホテルなどは、火曜の宿泊者には水曜の朝食を出さないといけません。
なので交代での休日出勤は必要だと思います。
キッチンにも強力な責任者が必要です。
ショップの花の鉢植えも、ガーデン内の水やりも必要です。
この辺りは交代で休みを取りながらやる必要があります。
もっともっと人手が必要ですが、ちまちま頑張るのではなく、一気に責任者を決めて、人材の募集や確保まで含めて全部振りましょう。
そうしないと、我々が全体を客観視することができなくなってしまいます。以上です」
よし、言いたいことは全部言った。
「ふう~……」と皆のため息が聞こえた。
そこで院長が一呼吸置いてから、真正面から私を見つめて答えてくれた。
「はい、分かりました。加護部長の言う通りです。俺も今のままだと無理そうだなと思っていました。クリニックは昨日面接を頑張ったのに、まだまだ足りません。清掃スタッフは全く未定だし、ガーデンも完全に人手不足です」
皆、黙ってうつむいて聞いていた。身に染みるよね。現実だもん。
しかし、院長がきりっとした表情で、口調を変えて広報に向けて言った。
「広報スタッフにお願いします。すごいキャッチコピーをつけて、『店作りをすべて任せます!』とか、『本物のプロを求む!』などの募集広告を出してください。
あとはあらゆるところに募集広告を出してください。
専門職の学校や、市の職業訓練学校の生徒にも声を掛けてほしいです。
ガーデンの手入れならパートさんでもいいので、近辺のスーパーや目につくところに広告やチラシを出してください。
リーダーは、ホテルや百貨店のマネージャークラスでもいいけど、それぞれの得意な分野でショップ作りを実際にした人、運営した人など実績のある人を募集しましょう。それで良いでしょうか?」
「はい、承知しました!」
広報の声が揃った。
そこで、そろそろと控えめに手を挙げた人がいた。
広報の田代さんだ。一斉に皆が注目した。
「すみません、ちょっといいでしょうか?
リーダーが決まったとします。人材を募集するにあたって、全部外部から入れるとすると、今まで電話で受けてきた弱者たちの雇用はどうなるんでしょうか?
住まいがまだできていないのは分かるのですが、通いであってもいいし、または取得した空き家で共同生活でもいいので、すぐ全員呼んであげて仕事を教えたらどうでしょうか? 以上です」
しばらく皆が沈黙していて、やがて広報たちがゆっくりと拍手をした。
そして小松さんも言葉を添えた。
「今の田代さんの意見でホッとしました。もう弱者のリストはすごいですよ。この人たちを先に雇用してほしいです。
そのリーダーがこの1か月で決まったとします。
弱者といっても優秀な人材の可能性は十分にあるんです。オメガの人もそうです。この人材を最優先でリーダーたちに仲間に入れてくれるように言ってほしいです。未来財団なんですから」
__なんだか涙がにじんでしまった。
未来財団なんだから……その通りだった。
それは院長も同じだったらしい。
「あまりにもいいことを言ってくれるので、つい泣きそうになりました。ぜひそうしましょう。並行してやりましょう。とりあえず弱者たちを呼びましょうよ。財団を見てもらって、通いで来れる人、空き家で共同生活でも来てくれる人がいるかどうか聞いてみましょう」
それで早速、今度の日曜日に来れる人を募ってみることにした。
今週末の日曜日に来れない人は、他の数日の指定日に。またはそれでも無理なら、個別で応じることにした。
「それでは早速、空き家を点検します。住めるような家を用意します。それで足りないなら他を探して確保します。なので、来れる人は全員雇用してあげてください」と小林さん。
小林さんまでが優しいことを言ってくれた。
なんだか胸の奥がじんわりと温かくなった。
ともだちにシェアしよう!

